中国若者の感情経済 トレンドトイが映す新しい消費ルール video poster
ACG文化、猫カフェ、トレンドトイなどの新しいカルチャーが、中国の若者の消費を動かしています。機能ではなく「気分」や「共感」にお金を払う感情経済が、中国の消費市場をどう変えつつあるのかを見ていきます。
機能から感情へ:中国の若者が書き換える消費ルール
中国の若い消費者のあいだでは、同じ価格なら性能が高いものよりも、自分の感情を満たしてくれるものを選ぶ傾向が強まっています。買い物は、単なるモノの購入から、自分らしさの表現やストレス解消、癒やしを得る手段へと変化しています。
こうした流れは、しばしば感情経済と呼ばれます。感情経済では、商品そのものよりも、そこから得られる体験やストーリー、コミュニティへの参加感が重視されます。2025年現在、この動きは中国で広がり、若者の消費行動の前提を静かに書き換えています。
ACG文化・猫カフェ・トレンドトイが象徴するもの
感情経済を象徴する存在としてよく挙げられるのが、ACG文化(アニメ・コミック・ゲーム)、猫カフェ、そしてトレンドトイです。それぞれジャンルは違いますが、共通しているのは「ときめき」や「癒やし」、「推しへの愛着」といった感情を中心に据えている点です。
- ACG文化:好きなキャラクターや世界観を通じて、自分の趣味やアイデンティティを共有できる場を提供します。
- 猫カフェ:動物とのふれあいによる癒やしを求める人びとが集まり、静かなコミュニティを形成しています。
- トレンドトイ:デザイン性の高いフィギュアやブラインドボックス(中身が開けるまで分からない玩具)などが、コレクション欲とサプライズ体験を刺激します。
これらの場や商品では、購入そのものよりも、空間の雰囲気やそこで過ごす時間、SNSにシェアしたくなる瞬間が重視されています。
CGTNが追った「感情消費」の現場
中国の国際メディアであるCGTNの番組では、司会者の徐慶鐸(Xu Qinduo)氏と、在中国英国商会の元会長クレア・ピアソン(Clare Pearson)氏が、トレンドトイを中心に若者の感情消費を取材しました。
2人は、トレンドトイを扱うTOP TOYグローバル旗艦店や、上海第一百貨店を訪れ、店づくりや商品配置、来店者の様子などを通じて、感情経済の論理を探りました。
番組が焦点を当てたのは、次のような問いです。
- 若者はなぜ、実用性より「かわいい」「ワクワクする」といった感情を優先してお金を使うのか。
- 店舗は、どのようにして思い出に残る体験や、SNSで拡散される瞬間を設計しているのか。
- こうした感情消費の広がりが、中国の消費市場にどのような新しい力をもたらしているのか。
感情に寄り添った消費の現場を歩くことで、中国の若者の価値観と、消費市場の変化を立体的に映し出そうとしています。
中国の感情経済が示す3つのポイント
若い世代の感情消費の広がりは、中国の消費市場だけでなく、世界の企業や周辺国のビジネスにも示唆を与えています。ポイントを3つに整理します。
1.「所有」から「体験」へ
高性能な家電や実用的な日用品よりも、心が動く体験や空間にお金を使う動きは、今後も続くと見られます。ブランドにとっては、商品を売るだけでなく、店舗デザインやイベント、オンラインコミュニティなどを通じて、どのような感情体験を提供できるかが問われます。
2.リアル店舗は「共感の場」になる
オンライン通販が日常となったいま、リアル店舗は単なる販売チャネルではなく、人びとが同じ趣味やキャラクターを通じてつながる共感の場として再定義されつつあります。TOP TOYや上海第一百貨店のような実店舗は、こうした共感を生み出す場として、空間づくりに工夫を凝らしています。
3.ストーリーを語れるブランドが選ばれる
感情経済のもとでは、商品の背景にあるストーリーや世界観が重視されます。キャラクターの設定やブランドの歴史、コラボレーションのコンセプトなど、「語れる」要素を持つブランドほど、若者の支持を集めやすくなります。
これからの中国市場をどう見るか
中国の若者がつくる感情経済は、単なる一時的なブームではなく、消費行動の価値観そのものの変化として捉える必要があります。機能から感情へというシフトは、日本を含むアジア各地でも共通するテーマであり、中国の事例はその先行モデルとして注目されています。
今後、中国の消費市場を考えるうえでは、統計データや購買力といった数値だけでなく、若者がどのような感情を求めてお金を使っているのかに目を向けることが重要になりそうです。感情経済をどう理解し、どう向き合うかが、2025年以降のビジネスと社会を読み解く鍵のひとつになっていくでしょう。
Reference(s):
cgtn.com








