中国の「人工太陽」国際科学プログラム始動 核融合装置BESTとは何か video poster
中国が核融合エネルギーの実用化に向けて大きな一歩を踏み出しました。2025年11月24日、東部の安徽省で「燃焼プラズマ(バーニング・プラズマ)」研究の国際科学プログラムが立ち上がり、新たな「人工太陽」と位置づけられる核融合実験装置「BEST」の研究計画が公表されました。
安徽省で始動した「人工太陽」国際プロジェクト
今回発表されたのは、燃焼プラズマをテーマにした国際的な科学プログラムと、コンパクト核融合実験装置「Burning Plasma Experimental Superconducting Tokamak(BEST)」の研究計画です。場所は中国東部・安徽省で、世界に向けて共同研究の枠組みを打ち出した形です。
この発表は、中国が「人工太陽」技術と呼ばれる核融合エネルギー開発で存在感を強めつつあることを示す出来事となりました。今後、各国の研究者や機関がこのプログラムを通じて燃焼プラズマの理解を深めることが期待されています。
「人工太陽」と核融合エネルギーの基本
今回の国際ニュースの核にあるのが、核融合エネルギーです。核融合は、太陽の内部で起きている反応をまねてエネルギーを取り出そうとする技術で、軽い原子同士を高温・高密度の状態でぶつけて「融合」させ、大きなエネルギーを得ます。
核分裂(原子力発電で利用されている技術)と比べて、核融合は長寿命の放射性廃棄物が少ないとされ、二酸化炭素(CO2)も直接は排出しない「究極のクリーンエネルギー」として注目されています。そのため、中国だけでなく、世界各地で「人工太陽」実現に向けた研究が進んでいます。
BEST装置のねらい:燃焼プラズマと「正味のエネルギー増」
中国が新たな「人工太陽」と位置づけるBESTは、「コンパクト核融合実験装置」と説明されています。名称のとおり、超伝導トカマク方式(ドーナツ状の容器でプラズマを磁場で閉じ込める方式)の装置で、燃焼プラズマの実現をめざします。
研究計画によると、主な目標は次の2点です。
- 燃焼プラズマの達成
- 「正味のエネルギー増」(取り出せるエネルギーが投入エネルギーを上回る状態)の実証
さらに、BESTは20〜200メガワットの核融合出力を目標とし、「核融合による発電」を実証することを掲げています。装置の完成時期については、2027年末までの建設完了を目指す計画です。実際にどこまで性能を引き出せるかが、今後数年の大きな焦点となります。
なぜ「燃焼プラズマ」が重要なのか
今回の国際科学プログラムのキーワードである燃焼プラズマは、核融合研究の中でもハードルの高い領域です。燃焼プラズマとは、核融合反応で生まれた粒子のエネルギーによって、プラズマ自身が加熱され続ける状態を指します。
イメージとしては、「外から加熱しなくても、核融合反応そのものがプラズマを温め続ける自立状態」に近いと言えます。この段階に到達できれば、発電として成り立つ可能性が一気に高まり、「正味のエネルギー増」に近づきます。BESTはまさにその領域を狙う実験装置です。
国際科学プログラムとしての意味
中国が燃焼プラズマ研究で国際科学プログラムを立ち上げたことは、核融合開発を一国だけのプロジェクトではなく、国際的な協力テーマとして位置づける動きとも言えます。高度に専門的な分野であるからこそ、データ共有や人材交流が重要になっていきます。
核融合エネルギーが実用段階に近づくほど、安全性評価や運転ノウハウ、材料開発など、国境をまたぐ課題も増えていきます。国際的な枠組みの中で研究を進めることは、こうした課題に早い段階から向き合ううえでも意味があります。
2027年の完成が示すタイムラインと、私たちへの影響
BESTは2027年末の完成をめざしており、現在は建設と準備のフェーズにあります。2025年の時点であと約2年というタイムラインは、核融合の歴史から見れば「すぐそこ」とも言えるスピード感です。
もちろん、装置が完成したからといって、すぐに家庭の電気料金が安くなるわけではありません。長期的には次のような変化が視野に入ります。
- 二酸化炭素排出削減に向けた「ポスト再生可能エネルギー」の候補として浮上
- エネルギー安全保障の選択肢が増え、資源価格の変動リスクを抑える可能性
- 材料・超伝導・制御工学など関連分野の技術革新
今回の中国の動きは、「核融合はいつかの夢」という抽象的な話から、「2020年代後半に具体的な実証フェーズに入る」という現実的な時間軸が見え始めたことを象徴しているとも言えます。
これから何を注視すべきか
今後注目したいポイントは、
- BEST建設の進捗と、2027年末という目標時期の達成度
- 燃焼プラズマと正味のエネルギー増がどこまで実証されるか
- 国際科学プログラムとして、どのような共同研究や成果共有が行われるか
核融合は長期プロジェクトでありながら、2020年代後半から具体的な実験結果がニュースとして増えていく可能性があります。今回の中国の「人工太陽」計画は、その大きな流れの中で、これからもしばしば国際ニュースとして取り上げられていきそうです。
Reference(s):
China launches int'l program to advance 'artificial sun' research
cgtn.com








