故郷に戻った若き村医:四川・Sawajiaoで始まる静かな選択 video poster
四川省のSawajiao郷で村の医師として働くツェリン・チュさんは、職業学院を卒業したあと、都市部ではなく故郷に戻る道を選びました。その決断の中心には、彼女にとって何より大切な3つのシンプルな理由があるといいます。
都市ではなく「帰郷」を選んだ新卒医療者
近年、中国の多くの若者は、専門学校や大学を卒業すると、大都市での就職を目指します。より高い収入やキャリアの機会があるとみなされるからです。そうした流れの中で、ツェリンさんはあえて故郷に戻り、村の医師として働く道を選びました。小さな診療所での仕事は華やかさとは無縁かもしれませんが、日々の暮らしと切り離せない医療を支える役割があります。
理由1: 家族と地域を守る「いちばん近い医療」
第一の理由は、「いちばん近くで家族や地域の人を支えたい」という思いでした。生まれ育った町のことをよく知っているからこそ、どんな季節にどんな病気が流行しやすいのか、高齢の住民がどんな不安を抱えているのか、肌で感じ取ることができます。外から赴任してくる医療者には見えにくい細かな変化にも気づきやすく、患者にとっても「顔なじみの先生」がいる安心感は大きいものです。
理由2: 村の診療所が担う「最後の砦」
第二の理由は、村の診療所が地域医療の「最後の砦」であるという実感です。山あいの地域では、大きな病院まで時間がかかることがあります。そんな場所で、ちょっとした体調不良から慢性的な病気の相談まで、最初に頼られるのが村の医師です。風邪やけがの手当てにとどまらず、血圧測定や服薬の確認など、日常的な健康管理の窓口にもなっています。
ツェリンさんのような若い医療従事者が村にいることで、住民が早めに相談しやすくなり、重症化を防ぐことにつながると期待されています。
理由3: 「学び続ける」ための現場
第三の理由は、現場で学び続けられる環境でした。大病院では部署が細かく分かれ、担当する業務も限定されがちです。一方、村の診療所では、内科から簡単な外科処置、予防接種、健康教育まで、幅広い仕事に向き合うことになります。
一人ひとりの患者と向き合いながら、自分の知識や技術の足りないところが自然とはっきりしていく。そのプロセスそのものが、ツェリンさんにとっては「成長のチャンス」になっているといえます。
2025年のいま、静かに広がる「帰郷」という選択
2025年のいま、中国各地では医療や教育の分野で、都市ではなく地元に腰を据える若い人たちの姿が少しずつ注目されつつあります。ツェリンさんの決断も、そうした流れの一例として見ることができます。
こうした選択は、華やかな成功物語として取り上げられることは少ないかもしれません。しかし、職業学院を出て故郷に戻り、村の医師として働くという生き方は、地域にとっては確かな変化をもたらします。
医師不足や高齢化といった課題を抱える地域で、地元出身の若い医療従事者が根を下ろして働くことは、住民の安心感を高めるだけでなく、次の世代に医療の仕事を身近に感じさせる効果もあります。身近な先輩が白衣を着て診療所で働いている姿は、子どもたちにとっての「将来の選択肢」のひとつになるからです。
都市への一極集中が続く中で、「どこで働き、誰のために働くのか」という問いは、多くの若い世代に共通するテーマになっています。四川省の小さな町で村の医師として歩み始めたツェリン・チュさんの選択は、その問いに対する静かなひとつの答えといえそうです。
Reference(s):
Coming home to heal: Why one graduate chose to be a village doctor
cgtn.com








