中国のクリエイティブ経済:博物館IPと老舗劇場が生む新しい消費 video poster
中国で今、伝統文化を前面に押し出したカルチャー消費が勢いを増しています。博物館の収蔵品から老舗劇場まで、歴史あるコンテンツが若い世代の「推し」となり、新しいクリエイティブ経済の波をつくり出しています。
ニュース番組 CGTN のホストである Xu Qinduo 氏と、Capital Normal University の David Moser 教授は、北京の中国国家博物館と吉祥戯院を訪れ、首都の豊かな文化遺産がどのように創意工夫によって「伝わり・買われ・体験される」成長エンジンへと変わりつつあるのかを取材しました。
若い世代をとらえるカルチャー消費の広がり
近年の中国の市場では、単にモノを買うのではなく、文化や物語ごと楽しむ消費スタイルが広がっています。特に都市部の若い世代のあいだで、伝統文化に根ざしたデザインや体験が人気を集めています。
- 歴史的なモチーフを取り入れたグッズやファッション
- 古典芸能や歴史建築を舞台にした没入型の公演やツアー
- SNS で映える「フォトスポット」としての文化施設
こうしたカルチャー消費は、オンライン動画やショート動画アプリと相性が良く、気に入った体験をそのままシェアできる点も、拡大の追い風になっています。
ガラスケースの中から市場へ:博物館収蔵品の IP 化
象徴的なのが、北京の中心部にある中国国家博物館の試みです。これまで静かに展示されてきた文物が、今や人気キャラクターやデザインとして商品化され、トップクラスの知的財産(IP)へと成長しています。
番組によると、一部の博物館 IP は関連商品の売り上げが 1 億を超える規模に達しています。フィギュア、文具、インテリア雑貨など、日常生活の中で使える形に落とし込むことで、若い世代が「歴史を持ち帰る」ことができるようになりました。
「学ぶ場所」から「暮らしに入り込む文化」へ
博物館が目指しているのは、知識を教えるだけの場から、生活の中で楽しめる文化のプラットフォームへと変わることです。そのために、デザインやパッケージ、ストーリーテリングに力を入れ、難解になりがちな歴史を、親しみやすいビジュアルと言葉で伝えています。
展示室で得た印象が、帰宅後もグッズやデジタルコンテンツを通じて続いていく。この循環が生まれることで、文化施設は単発の観光スポットではなく、リピーターを生むブランドへと変わりつつあります。
百年劇場が若者のランドマークに:吉祥戯院の変身
もう一つの舞台は、長い歴史を持つ劇場・吉祥戯院です。かつては伝統演劇を中心に上演してきた老舗ですが、近年は内装のリニューアルやプログラムの工夫を通じて、若い観客が集まる「おしゃれな劇場」へとイメージを刷新しています。
古い建物の趣はそのままに、照明や座席、ロビー空間を現代的にアップデートすることで、「時間旅行」と「都会的な夜の遊び」を同時に味わえる場になっています。
観るだけでなく「参加する」エンターテインメントへ
観客との距離を縮める演出も、創造経済を後押ししています。アフタートークやワークショップ、小規模な音楽イベントなどを組み合わせることで、劇場は一度きりの公演の場から、コミュニティが集う文化拠点へと変わりつつあります。
周辺にはカフェや小さな店舗が並び、観劇前後の時間も含めた体験が一つの「パッケージ」として消費されるようになっています。こうした体験型の消費が、都市空間に新たなにぎわいを生んでいます。
北京が示すクリエイティブ経済のモデル
Xu Qinduo 氏と David Moser 教授の現地取材が描き出すのは、文化を単なる観光資源としてではなく、デザインと体験の工夫を通じて長期的な経済価値へと高めようとする試みです。
ポイントになるのは、次のような視点です。
- 文化コンテンツを、多様な商品やサービスに展開できる IP として捉えること
- 若い世代のライフスタイルやデジタル習慣に合わせて、伝統文化の見せ方を更新すること
- 単体の施設ではなく、周辺エリアも含めた「体験の連続性」を設計すること
こうした動きは、一つの都市計画や文化政策にとどまらず、クリエイティブ産業や観光業、教育、テクノロジーなど、複数の分野をまたいだ連携によって支えられています。
「文化で稼ぐ」ことの意味を静かに考える
伝統文化を経済成長の源泉として活用する流れには、機会と同時に問いも含まれています。どこまで商品化してよいのか、地域の記憶やコミュニティとの関係をどう守るのか、といった点は、各地で議論が続いています。
一方で、博物館の収蔵品や老舗劇場が、若い世代にとって身近な存在になり、新しい表現や仕事を生み出しているという事実もあります。北京で進む試みは、文化を守ることと、文化を動かすことをどのように両立させるかという、これからの都市に共通するテーマを静かに映し出しています。
ガラスケースの向こう側にあった歴史が、日々の生活の中に入り込み、経済をも動かし始めている。中国のクリエイティブ経済の現場は、その変化を体感できるショーケースになりつつあります。
Reference(s):
cgtn.com








