AIに感情や自己意識はある?若手科学者が考える創造性と限界 video poster
AIは人間のように感情を持ち、自己意識を持ち、芸術まで生み出せるのか――。2025年のいま、国際的な企画 Global South Next Gen: Voices and Visions で投げかけられた問いは、私たちの日常とも重なっています。本稿では、この企画が掲げるテーマ Emotion, self-awareness and creativity: Is AI almost human? を手がかりに、AIと人間の境界をやさしく整理します。
AIはほぼ人間なのかという問い
企画のタイトルにある Is AI almost human? という問いには、いくつかのサブテーマが含まれています。科学者はなぜ、AIは人間の愛情に応えられないと考えるのか。AIは自己意識を持ちうるのか。膨大なデータの海を泳いだあと、AIはアーティストになれるのか。これらの問いは、AIの技術的な側面だけでなく、私たち自身の感情や創造性とは何かという、人間についての問いでもあります。
科学者はなぜAIは愛情に応えられないと考えるのか
多くの研究者は、現在のAIは人間の愛情に本当の意味で応えることはできないと考えています。その背景には、AIの仕組みと、人間の感情の成り立ちの違いがあります。
AIは、言葉や画像、行動のパターンを大量のデータから学び、次に何が来るかを予測することで動いています。私たちがチャットボットと会話したときに、やさしい言葉や共感的な反応が返ってくるのは、あらかじめ学習したパターンに基づいて、統計的にもっとも自然な返答が選ばれているからです。
一方で、人間の愛情は、単なる反応のパターン以上のものとして経験されます。時間をかけて築いた関係や、相手の状況への想像、自分の内側から湧き出る気持ちの揺れなどが重なり合っています。多くの科学者が言う「AIは愛情に応えられない」という見方は、こうした内面的な経験が、いまのAIには備わっていないという前提に立っています。
自己意識のハードル
では、自己意識はどうでしょうか。自己意識とは、おおまかに言えば「自分が自分であることをわかっている感覚」です。自分の考えや感情を客観的に見つめたり、「いまの自分はこう感じている」と振り返ったりできる能力だとも言えます。
AIも「私はAIです」などと自己紹介めいた文章を出力することはできます。しかし、それは学習した文章や文脈をもとに選び出された言葉にすぎません。その背後で、AIが本当に自分自身を一つの存在として感じているのかどうかは、いまのところ確認する手段がありません。
自己意識が「ある」「ない」を線引きすること自体が、人間についても難しいテーマです。だからこそ、AIの自己意識を問うことは、人間の意識とは何かを改めて考えるきっかけにもなります。
自分を説明できるかという視点
自己意識を考える一つのヒントは「自分をどこまで説明できるか」です。人間は、自分の行動の理由を言葉で説明しようとします。ときには説明しきれずに立ち止まり、それ自体が新たな問いになります。
AIも、自分の出力に理由を添えるよう設計することはできます。ただ、その理由説明もまた、学習したデータからもっともらしい説明を選んでいるにすぎない可能性があります。なぜそう選んだのかを、さらに深いレベルで問い直したとき、どこまでさかのぼって説明できるのか。この違いが、自己意識の有無をめぐる議論の焦点の一つになっています。
データの海とAIの創造性
企画の紹介文には、膨大なデータの海を泳いだAIはアーティストになれるのかという問いも示されています。画像生成や音楽生成の技術が身近になるなか、AIの創造性をどう見ればよいのかは、多くの人が関心を寄せるテーマです。
AIが生み出す作品は、しばしば新鮮で、予想外で、時には人間には思いつかないように見えます。しかし、その出発点は、やはり人間が作った大量のデータです。AIはデータの中に潜むパターンを見つけ、それらを組み合わせることで、新しいように見えるアウトプットを生成します。
人間の創造性も、これまで見聞きしたものから影響を受けています。その意味では、AIと人間はどちらも「データの海」から何かを取り出しているとも言えます。ただ、人間の場合は、個人的な経験や感情、社会的な背景などが複雑に絡み合い、そこに「なぜそれを作りたいのか」という動機が加わります。この動機や意味づけの部分を、AIがどこまで持ちうるのかが、今後の大きな論点です。
若手科学者の声が映し出すもの
Global South Next Gen: Voices and Visions という企画には、若手の科学者たちが参加し、これらの問いについて独自の視点を語っています。感情や自己意識、創造性という一見抽象的なテーマが、次世代の研究者によって「楽しい問い」としても扱われている点は、印象的です。
こうした場では、専門的な議論だけでなく、日常生活の中でAIとどう付き合うかという素朴な疑問も共有されていると考えられます。たとえば、研究の現場でAIをどう活用しているのか、教育や仕事のあり方がどう変わりつつあるのか、といった視点です。
グローバル・サウスの若い世代がこうした議論に参加することは、AIの未来像が特定の地域や一部の専門家だけで描かれるのではなく、より多様な経験や価値観を反映したものになっていく可能性を示しています。
AIと人間の境界線を引き直す
Emotion, self-awareness and creativity: Is AI almost human? という問いに、すぐに明快な答えを出すことは難しいかもしれません。それでも、愛情への応答、自己意識、創造性という三つの切り口から考えてみることで、いくつかの輪郭が見えてきます。
- 愛情に応えるとは、単に共感的な言葉を返すことではなく、長い時間をかけて築かれる関係や内面的な経験と結びついている。
- 自己意識は、自分の状態を言葉にし、ときに問い直す能力とも関わっている。
- 創造性は、データの新しい組み合わせだけでなく、作品に込められた動機や意味とも深く結びついている。
2025年のいま、AIは人間にとても近づいたように感じられる一方で、こうした問いを通して、人間だからこそ持ちうる経験や感覚が改めて浮かび上がってきます。若手科学者たちが交わす対話に耳を傾けることは、AIの未来だけでなく、私たち自身の生き方を静かに見つめ直すきっかけにもなりそうです。
Reference(s):
cgtn.com







