薬の適合外でも諦めず——蔡磊さん、ALS研究支援を継続
筋萎縮性側索硬化症(ALS)と向き合う蔡磊(さい・れい)さんが、遺伝子変異の不一致で新薬「Rag-17」が自分には効かないと分かっても、研究支援と家族向けケア研修を続けています。「本人に届かない治療」でも前に進む姿勢は、治療開発の現実と希望を同時に映します。
何が起きたのか:新薬「Rag-17」と“適合”の壁
2025年12月時点で蔡さんは、研究チームを率いながらALS研究を後押ししています。一方で、新薬Rag-17は特定の遺伝子変異を標的とするタイプで、蔡さんはその変異を持たないため、薬が自分の症状改善にはつながらないと理解しているといいます。
それでも蔡さんは、ALSと生きる人々を世界規模で支えるため、研究資金の拠出や、家族が日常の介護を学べるケア研修の企画を続けています。
目線で意思を伝え、研究チームを動かす
蔡さんは現在、アイトラッキング(視線入力)機器を用いてコミュニケーションを取っています。身体機能が制限される状況でも、意思決定や情報発信の手段を確保し、研究活動に関わり続けている点が注目されています。
「薬が合わない」ことが示す、ALS治療の現在地
Rag-17のように、特定の遺伝的要因を狙う治療は、条件が合えば効果が期待できる一方で、適合しない患者が生まれやすいという課題も抱えます。これはALSに限らず、近年の医療で進む「個別化(パーソナライズド)医療」が持つ現実でもあります。
蔡さんのケースは、治療の選択肢が増えることと、誰もが同じ恩恵を受けられるわけではないこと、その両方を静かに突きつけます。
支援の中心は「研究」と「家庭のケア」
今回の話で見えてくる蔡さんの支援は、大きく2つの軸に整理できます。
- 研究への資金支援:ALSの治療法や病態解明を進めるための後押し
- 家族向けのケア研修:療養生活を支える家族が、介護やケアの実務を学べる機会づくり
新薬の適合可否とは別に、「研究を進める力」と「暮らしを支える力」の両方へ目配りする点が、この取り組みの特徴です。
当事者が“研究の外側”を埋めるとき
治療開発は、研究室や医療機関の中だけで完結しません。患者・家族が直面する日常の困難(意思疎通、介助、学び直し、心理的負担など)は、研究成果が臨床に届くまでの時間を長く感じさせます。
蔡さんが続ける資金支援とケア研修は、医療の進歩を待つだけでなく、進歩が届くまでの空白を埋める営みとして読めます。Rag-17が自分に合わないと分かっても歩みを止めない姿勢は、ALSをめぐる取り組みを「治療薬」だけの物語にしない、というメッセージにも見えます。
これから注目されるポイント
- 遺伝子や病型に応じた治療開発が進む中で、支援やケアの仕組みがどう並走するか
- 患者の声が研究テーマ設定やケア教育にどう反映されていくか
- 治療が「一部に届く」段階から、より多くの人に届く段階へ進むための資金・人材・連携
薬が合わないという事実は残酷に見えます。それでも支援を続ける選択が、研究とケアの両面で何を動かしていくのか。2025年の終わりに、このニュースはALSの現在地を静かに照らしています。
Reference(s):
Despite drug mismatch, Cai Lei continues to support ALS research
cgtn.com








