「豚の解体を手伝って」重慶の村が春節前の大宴会に—風習「炮猪汤」が拡散 video poster
2026年1月、春節(旧正月)を前にした中国本土・重慶市で、ある“助けて”の投稿が思いがけず大きな人の流れを生みました。高齢の父を手伝うために豚の解体の協力を呼びかけた女性の動画が拡散し、村の伝統行事が全国規模の“食”の集まりへと膨らんだのです。
何が起きたのか:48時間で拡散、村に人が集まった
きっかけは、重慶市合川区の青福村で暮らす女性「大大(ダイダイ)」さんが投稿した短い動画でした。高齢の父が豚をさばく(解体する)作業をするため、手伝いを求める内容が注目を集め、投稿は48時間で約50万件の「いいね」を獲得したといいます。
その結果、面識のない人々が村に集まり、現地では約10キロに及ぶ交通渋滞も起きたと伝えられています。SNS上の共感が、オフラインの訪問へと一気に転換した形です。
「炮猪汤(パオジュータン)」とは:春節前の“共同作業”と“ごちそう”
人々が集まった背景には、農村部で春節前に行われてきた伝統的な豚の解体と食事の習慣があります。現地では「炮猪汤(パオジュータン)」と呼ばれ、親族や近所が集まり、作業を分担し、料理を囲んで新年を迎える準備をする——そんな共同体のリズムを象徴する行事だとされています。
この行事には、単なる“ごちそう”以上の意味が重なります。
- 久しぶりに顔を合わせること(再会)
- 助け合いへの感謝
- 新年を待つ高揚感
動画が呼び起こしたのは、こうした「故郷の温度」の記憶だったのかもしれません。
なぜ今、ここまで人を動かしたのか
今回の広がりは、伝統行事が“見せ物”として消費されたという単純な話ではなく、「誰かの困りごと」から始まった点が特徴的です。個人的なお願いが、地域の風習と接続され、さらにSNSによって多くの人の感情に触れたことで、集団的な行動に変わりました。
都市での生活が当たり前になり、オンラインでつながる機会が増えた今だからこそ、逆に「手を動かして一緒に食べる」体験が新鮮に映った面もありそうです。
“温かさ”と同時に浮かぶ、受け入れ側の現実
一方で、短期間に来訪者が急増すれば、村の側には現実的な対応も求められます。交通整理、衛生面、近隣への配慮、そして安全確保など、行事の空気を守りながら運営する難しさも出てきます。
それでも今回の出来事は、春節前の風習が「懐かしいもの」として棚に置かれるのではなく、今のコミュニケーション環境の中で“生きた出来事”として再び立ち上がり得ることを示しました。
小さな声が、共同体の記憶を呼び戻す
「手伝ってほしい」という一言が、見知らぬ人を動かし、村の台所の風景を多くの人の“年末年始の記憶”に重ね合わせました。春節を前にしたこの時期、伝統は過去の遺産ではなく、誰かの生活の中で更新され続けるものだと感じさせます。
Reference(s):
How a plea for help with slaughtering pigs united China around a feast
cgtn.com








