米国「エネルギー覇権」はなぜ矛盾するのか――安いガソリンと輸出拡大の綱引き video poster
2026年1月、米国で掲げられる「エネルギー・ドミナンス(エネルギー優位)」をめぐり、その内側にある矛盾が改めて注目されています。コロンビア大学のアダム・トゥーズ教授は、CGTNの田薇(Tian Wei)氏との独占インタビューで「消費者向けの低価格」と「産油・ガス産業の利益」を同時に満たすのは構造的に難しいと語りました。
トゥーズ教授が指摘する“二つのゴール”
インタビューの骨格はシンプルです。ワシントンは、次の二つの目標の間で身動きが取りづらくなっている、という見立てでした。
- 産油・ガス産業のために:石油・天然ガスの生産を後押しし、輸出も拡大して「作る側」を潤す
- 有権者・家計のために:ガソリンや電気などのエネルギー価格を抑え、「使う側」の負担を軽くする
ただし、輸出を増やして生産者に有利な環境をつくるほど、国内価格を安く保つ約束とは衝突しやすくなります。教授はこの点を「直接的な対立」と表現しています。
なぜ「安さ」と「生産者優先」はぶつかるのか
エネルギーは、国内の生活コストを左右する一方で、資源産業にとっては投資と利益の源泉でもあります。ここで論点になるのは、政策メッセージが同じ方向を向きにくいことです。
- 消費者の体感は「いま安いか」に寄りやすい
- 生産者の関心は「長期的に高収益を確保できるか」に寄りやすい
- 輸出拡大は生産者に追い風になり得る一方、国内の“安さ”とは緊張関係を生む
この綱引きが続くほど、「どちらを優先しているのか」が読み取りにくくなり、市場や家計の見通しにも影響しやすい、というのが教授の問題提起です。
ベネズエラの石油をめぐる動きが“ねじれ”を深める
トゥーズ教授は、ベネズエラの石油を「確保・掌握」しようとする動きが、こうした矛盾をさらに深めるとも述べました。供給源への関与を強めるほど、国内の低価格を掲げる政治的約束と、輸出主導で生産者を支える路線が同時並行になり、説明が難しくなる――という文脈です。
見えにくいのは「目的の混線」か、「時間軸の違い」か
今回の指摘が示唆するのは、「エネルギー政策はスローガンよりも、優先順位と時間軸が問われる」という点かもしれません。短期の物価対策としての“安さ”と、中長期の産業政策としての“輸出・生産”は、同じ言葉でまとめるほど摩擦が表面化します。
「エネルギー・ドミナンス」とは結局、誰の負担を、いつ、どの形で引き受けるのかという選択の連続です。今後、米国内でどの説明が支持を集めるのかが、政策の整合性を測る一つの目安になりそうです。
Reference(s):
cgtn.com







