ドローンが解き明かす万里の長城の「隠し扉」 天津大学チームが200カ所超を発見 video poster
リード:ドローン技術を使った最新の調査で、中国本土(中国)の天津大学の専門家チームが明代の万里の長城に200カ所以上の「隠し扉」を発見し、その中には春秋時代の思想家・墨子が考案したとされる特別な構造「トゥーメン」も含まれていることが明らかになりました。
ドローンが照らした「見えない万里の長城」
今回の発見は、天津大学の研究チームが最先端のドローン技術を用いて、明代に築かれた万里の長城を詳細に調査したことから生まれました。人が近づきにくい崖沿いや荒野の区間を空から撮影・計測することで、これまで把握されていなかった構造が次々と浮かび上がったとされています。
チームは長城の外壁や内部構造に、高さや幅が周囲とほとんど見分けがつかない開口部を多数確認しました。それらは通常の城門とは違い、外からは存在に気づきにくい「隠された扉」や「小さな出入り口」とみられています。
200カ所を超える扉・門・出入り口
今回確認されたのは、扉や門、出入り口に分類される構造で、その数は200カ所を超えます。規模も用途もさまざまで、兵士の移動や物資輸送、緊急時の退避路などに活用されていた可能性があります。
注目されるのは、これらが一様ではないことです。壁の基部に開いた小さな通路もあれば、地形に溶け込むように設計された大きめのゲートもあります。地上からの目視調査だけでは見落とされてきたディテールが、ドローンによる俯瞰映像と高精度データによって一気に可視化された形です。
ドローンだからこそ見える「死角」
万里の長城は全長数千キロに及び、現在も調査が難しい区間が少なくありません。崩落の危険がある場所や、険しい山地に築かれた部分は、専門家であっても接近に慎重にならざるをえません。
軽量のドローンは、こうしたリスクの高い場所にも安全に接近でき、一定の高度を保ちながら繰り返し撮影できます。今回の調査では、立体的な画像データを重ね合わせることで、壁のわずかな段差や裂け目が「人が通れる構造かどうか」を解析する手がかりになったとみられます。
「トゥーメン」:墨子の戦略思想が残した隠し扉
数ある発見の中でも、特に象徴的なのが「トゥーメン」と呼ばれる構造です。調査チームによると、見つかった扉の一つは、春秋時代の思想家・墨子が考案したとされる特殊な「隠し扉」の設計に合致しているとされています。
墨子は、戦争や防御技術についても詳細に論じたことで知られ、敵に悟られない出入り口や、包囲された際の脱出路などを工夫することの重要性を説いたと伝えられています。「トゥーメン」は、外見上は城壁の一部と見分けがつきにくい一方で、内側からは素早く開閉できるよう考え抜かれた構造とされています。
数千年前のアイデアが明代の長城に
今回、明代の万里の長城の一部に「トゥーメン」とみられる構造が確認されたことは、防御技術の知識が長い時間をかけて受け継がれてきた可能性を示唆します。春秋時代から明代までの間に、軍事思想や建築技術がどのように伝播し、再解釈されてきたのかを考えるうえで、貴重な手がかりになりそうです。
また、歴史書や古典に記された抽象的な記述が、実際の構造物として特定されることで、テキストと遺構の双方から歴史を読み解く「立体的な歴史研究」が進むことも期待されています。
デジタル時代の文化財保護としての意義
今回のドローン調査は、文化財保護のあり方がデジタル技術によって変わりつつあることを象徴しています。空撮画像や三次元データを蓄積しておけば、風雨や地震、観光による負荷などで構造が変化した際に、どこがどのように変わったのかを後から比較・検証できます。
万里の長城のように広大で多様な遺産では、すべてを同じペースで保全・修復することは現実的ではありません。デジタルデータを基に「危険度」や「歴史的価値」の高い区間を見極めて優先順位をつけることが、今後いっそう重要になっていきます。
- 構造上の弱点や崩落リスクの早期発見
- 観光開発と保全のバランスを取るための基礎データ
- 学校教育やオンライン展示、バーチャルツアーへの活用
歴史は「完成した物語」ではない
今回の万里の長城の「隠し扉」発見は、私たちが知っているつもりの歴史が、実はまだ調査途上であることを静かに教えてくれます。長城のような象徴的な遺産でさえ、2025年の今になって新しい構造や設計思想が次々と明らかになっているのです。
ドローンやデジタル計測は、単に便利な「ガジェット」ではなく、歴史をもう一度見直し、新しい物語を掘り起こすための道具になりつつあります。これからも、テクノロジーの進歩とともに、私たちが知る万里の長城の姿は少しずつ更新されていくのかもしれません。
通勤時間やスキマ時間にニュースを追う私たちにとっても、「見えていないものはまだたくさんある」という視点は、歴史だけでなく日常の出来事を考えるヒントになりそうです。
Reference(s):
Drones uncover the mystery of the Great Wall's 'hidden doors'
cgtn.com








