中国人眼科医がモルディブの仕立て職人に光を取り戻した物語 video poster
2024年11月下旬、重い白内障で視力を失いかけていたモルディブの仕立て職人アミナス・ワヒーダさんに、中国の眼科医が「見える世界」を取り戻しました。手術から約1年がたった2025年末の今も、この小さな物語は、国境をこえる医療の力を静かに伝え続けています。
「針の穴が見えない」仕立て職人を襲った白内障
アミナス・ワヒーダさんは、モルディブで仕立て職人として働いてきました。布を裁ち、色を選び、細かな縫い目を整える仕事は、視力に大きく頼る職人技です。しかし、彼女は深刻な白内障により、ほとんど視力を失いかける状態に追い込まれました。
白内障は、目の中の水晶体が白く濁る病気で、進行すると視界がかすみ、やがて光と影の区別しかできなくなることもあります。針の穴どころか、布の色さえ不確かになる状況は、仕立て職人にとって生活の土台そのものが崩れる危機といえます。
視力を失う恐怖と、仕事を続けられなくなる不安。アミナスさんは、希望を見いだせない深い絶望の中にいたと考えられます。
中国・中山大学眼科センターのリン医師が執刀
転機が訪れたのは、2024年11月下旬のことでした。中国の中山大学の眼科センター(Sun Yat-sen University's Ophthalmic Center)に所属するリン・ハオティエン医師が、アミナスさんの白内障に対する手術を行ったのです。
リン医師は、白内障によって濁った水晶体を取り除き、視力を回復させるための手術を実施しました。この「視力を取り戻す手術」によって、アミナスさんは再び光を感じ、形を認識し、色を見分ける力を取り戻しました。
視界が開けた瞬間は、単に「ものが見えるようになった」というレベルを超え、これからの人生の可能性が一気に広がる瞬間でもあります。視力の回復は、そのまま日常生活と仕事への復帰、そして自己肯定感の回復につながります。
戻ってきた仕事、戻ってきた色
この医療介入によって、アミナスさんは再び仕立ての仕事に自信を持って戻ることができるようになりました。彼女は布の色合いを確かめながら、細かなステッチをひとつひとつ縫い進め、作品に「色」と「希望」を縫い込んでいきます。
視力を取り戻したことで、ただ仕事に復帰できたというだけではありません。自分の技術で人の役に立てるという実感や、家族や周囲を支えられるという誇りもまた、彼女の中に戻ってきたといえるでしょう。
仕立てという仕事は、布と糸、針と時間を重ねて形をつくる営みです。そこに再び色と光が戻ったという事実は、ひとりの職人の人生だけでなく、地域の暮らしにも静かな明るさをもたらします。
国境をこえる医療がもたらすもの
今回の出来事は、中国の大学の眼科医とモルディブの仕立て職人という、ふだんなら交わることの少ない二つの人生が、医療を通じて結びついた国際ニュースです。
そこから見えてくるポイントは、次のようなものです。
- 適切な医療が届けば、重い視力障害からでも生活を立て直すことができること
- ひとつの手術が、本人だけでなく家族や地域社会にも連鎖的な影響を与えること
- 国境をこえた医療協力や専門家の交流が、個人の人生を大きく変えうること
2025年の今も、世界には白内障をはじめとする「治せる失明」のリスクにさらされている人が数多くいます。その中で、アミナスさんのように視力を取り戻し、仕事と誇りを再び手にする人がいる一方で、まだ支援の手が届いていない人も少なくありません。
「見える」ことの意味を考える
スマートフォンでこの日本語ニュースを読んでいる私たちは、ふだん、視力のありがたさを意識することは多くありません。しかし、針の穴を通すことも、文字を読むことも、誰かの表情を読み取ることも、すべては「見えること」に支えられています。
モルディブの仕立て職人アミナス・ワヒーダさんの物語は、私たちに問いを投げかけます。もし今日、突然視力を失ったとしたら、自分の生活のどの瞬間がいちばん大きく変わるのか。どの仕事や役割を手放さざるをえないのか。そして、そのとき誰の支えが必要になるのか。
中国のリン・ハオティエン医師による一度の白内障手術は、ひとりの女性の人生を大きく照らし直しました。この国際ニュースは、「医療が届く」ということの重みと、国境をこえる専門性の共有が持つ力について、静かに考えさせてくれます。
Reference(s):
cgtn.com








