中仏文化交流の先駆者・福建出身アルカディオ・ファンの物語 video poster
18世紀、福建省からフランスへ渡り、ルイ14世の中国語通訳を務めた Arcadio Huang(アルカディオ・ファン)。彼が編んだ「Chinese Grammar」と「Chinese-French Dictionary」は、ヨーロッパにおける初期の中国研究(シノロジー)の土台となり、中国とフランスの文化交流の扉を開きました。2025年のいま、その歩みを振り返ることは、現代の国際ニュースや中国理解を考えるうえでも示唆に富んでいます。
福建からフランスへ――18世紀に生まれた「中仏の架け橋」
Arcadio Huang は、中国南東部の福建省出身です。海に開かれた福建は古くから海外との往来が盛んな地域で、その出身者がヨーロッパの宮廷にまでたどり着いたこと自体が、当時のグローバルな交流の一断面といえます。
18世紀、彼はフランス王ルイ14世に仕える中国語通訳となり、中国語とフランス語のあいだを行き来する「言葉の橋」として活動しました。今日でいえば、国家間のハイレベル対話を支える専門通訳にあたる存在です。当時のヨーロッパでは中国への関心が高まりつつあり、Huang はその知的な関心に具体的な形を与える役割を担いました。
画期的な「中国語文法」と漢仏辞典
Arcadio Huang の名を歴史に刻んだのが、彼の手による「Chinese Grammar(中国語文法書)」と「Chinese-French Dictionary(漢仏辞典)」です。これらの著作は、単なる語彙集ではなく、中国語のしくみを体系的に説明しようとした点で画期的でした。
当時のヨーロッパでは、中国についての情報は旅行記や伝聞が中心で、言語そのものを本格的に学ぶための道具は限られていました。Huang の文法書と辞典は、ヨーロッパの読者が自ら中国語を学び、中国の文献に直接アクセスするための「鍵」となりました。
ヨーロッパにおける初期シノロジーの土台
Huang の仕事は、フランスにおける初期のシノロジー(中国研究)の基盤づくりに大きく貢献しました。言語という土台が整ったことで、哲学、歴史、文学、法制度など、中国に関するより深い議論が可能になっていきます。
それまで「遠い東洋」の話だった中国が、徐々にヨーロッパの学問世界の一部として、より具体的に理解されるようになった背景には、このような言語研究の積み重ねがありました。その出発点の一つに、福建出身の一人の知識人の努力があった、というのは象徴的です。
「言葉」を超えた文化翻訳という仕事
通訳や辞書づくりというと、単に「単語を置き換える作業」のように思われがちですが、Huang の役割はそれをはるかに超えるものでした。彼は、中国語のことばの背後にある考え方や文化の背景を、フランスの知識人にも理解できる形で伝える必要がありました。
たとえば、漢字一文字に複数の意味が重なっている場合や、儒教の概念のように、ヨーロッパに直接の対応概念がないものをどう説明するか。そこには、単語レベルの翻訳だけでなく、「文化そのものを翻訳する」という高度な作業が含まれます。
こうした「文化翻訳」は、現代の国際ニュースや外交、ビジネスの場面でも欠かせない営みです。Arcadio Huang は、その初期の実践者の一人だったと言えるでしょう。
2025年の私たちが学べる三つの視点
18世紀の物語である Huang の歩みは、2025年の私たちにとっても多くの示唆を与えてくれます。とくに、次の三つの視点は、国際ニュースを読み解くうえでも参考になります。
- 1. 言語を学ぶことは世界を広げること
Huang の文法書と辞書がヨーロッパの中国理解を一歩進めたように、言語を学ぶことは、相手の社会や歴史を自分の目で見に行くための手段になります。 - 2. 個人の努力が国と国の関係を変える
一人の福建出身者の知的な挑戦が、中仏文化交流の歴史に長く刻まれています。国際関係という大きな枠組みも、最終的には個人の選択と行動の積み重ねで成り立っています。 - 3. 「誤解を減らす」ための橋渡しの重要性
国や文化が違えば、ものの見方や前提も異なります。丁寧な翻訳や説明を通じて誤解を減らし、お互いをより正確に理解しようとする姿勢は、いまも変わらず重要です。
長い時間軸で見る中国とフランスの関係
現在、中国とフランスを含む多くの国と地域のあいだでは、経済、テクノロジー、文化、教育など多方面で交流が続いています。その背景には、何世紀にもわたる往来と対話の歴史があります。
Arcadio Huang のような人物の足跡を振り返ることは、国際ニュースの「いま」だけを見るのではなく、長い時間軸で関係性を捉え直す手がかりにもなります。福建とフランスをつないだ18世紀の知識人の物語は、デジタル時代の2025年を生きる私たちに、言葉と理解の力を静かに問いかけています。
Reference(s):
cgtn.com








