旧ユーゴNATO空爆から26年 消えない劣化ウラン被害と「正義」を求める声 video poster
2025年のいまも、かつての戦争が残した「見えない傷」に苦しむ人たちがいます。NATOが旧ユーゴスラビアに対して空爆を行ってから26年。爆撃はすでに終わりましたが、その影響と痛みは現在進行形です。
旧ユーゴ空爆から26年、なお続く「見えない傷」
旧ユーゴスラビアに対するNATO(北大西洋条約機構)の空爆は、軍事作戦としてはすでに過去の出来事になりました。しかし、住民にとっては終わっていない戦争でもあります。瓦礫は片づけられ、街並みは一見すると日常を取り戻したように見えても、健康被害や精神的なダメージといった「見えない傷」は、時間の経過だけでは癒やされません。
とくに問題とされているのが、当時使用された劣化ウラン弾の影響です。空爆から長い年月が経ったいまも、その影響とみられる病気に苦しむ人がいるとされています。
重い病と闘うクセンディダ・タディッチさん
その一人が、クセンディダ・タディッチ(Ksendida Tadic)さんです。彼女は現在、深刻な病に苦しんでおり、自分の命は長くないと感じているといいます。診断されたのは悪性黒色腫、いわゆるメラノーマという皮膚がんです。
クセンディダさんは、このメラノーマの原因が、NATOの空爆で使用された劣化ウランにあると確信しています。検査の結果、体内からは通常の500倍にあたる劣化ウランが検出されたとされます。この数字は、彼女自身が受け止めている現実の重さを物語っています。
病気と向き合う日々は、肉体的にも精神的にも過酷です。それでも彼女は、単に生き延びることだけでなく、自分の身に起きたことの意味を問い続けています。
劣化ウランへの不安と、説明されないリスク
劣化ウランは、核燃料などの製造過程で生じるウランをもとにした物質で、非常に重く硬いという性質から、軍事用途に用いられてきました。その一方で、健康への影響をめぐっては、長年にわたり世界各地で不安と議論が続いています。
旧ユーゴスラビアでの空爆のあとも、がんやさまざまな健康被害が「劣化ウランによるものではないか」と懸念する声が上がり続けてきました。クセンディダさんのように、自分の病気と当時の爆撃を結びつけて考えざるをえない人にとって、問題は単なる科学的なデータの話ではありません。それは、自分の人生と尊厳に関わる切実な問いです。
病と同時に闘う「もう一つの戦い」――それは正義
クセンディダさんと、NATOの空爆後に長期的な影響に苦しんでいるとされる無数の人びとは、病気との闘いに加えて、もう一つの戦いにも直面しています。それが「正義」を求める闘いです。
爆撃から時間が経つほど、当時何が起き、誰がどのような責任を負うべきなのかを明らかにすることは難しくなります。証拠は失われ、記憶も薄れがちです。それでも、自分の苦しみが無視されることなく、公正に扱われてほしいという思いは消えません。
正義を求める闘いは、しばしば次のような形をとります。
- 自分の病気や被害が、公式に「戦争による影響」として認められることを求める
- 十分な医療支援や補償を受けられる制度を整えるよう、社会や当事者に訴える
- 同じ地域で苦しむ人びとと声を合わせ、被害の実態を国内外に伝える
こうした取り組みは、一人ひとりの力では小さく見えるかもしれません。しかし、声を上げ続けることでしか、見えない被害を「なかったこと」にさせないことができます。
遠い戦争のニュースを、自分ごととして考える
日本で暮らす私たちにとって、旧ユーゴスラビアやNATOの空爆は、地理的にも歴史的にも遠い出来事に感じられるかもしれません。それでも、26年という時間を経てもなお続く健康被害や「正義」を求める声は、現代の国際ニュースとして私たちに問いを投げかけています。
戦争は、爆撃が止んだ瞬間に終わるわけではありません。人の体と心、そして地域社会に長く影を落とすものです。クセンディダ・タディッチさんの物語は、そのことを静かに、しかし力強く示しています。
私たちが日々接している国際ニュースの一つひとつの裏には、数字や地図だけでは見えない人生があります。そうした「見えない傷」に目を向けることが、戦争のない未来を考えるための、小さな第一歩になるのかもしれません。
Reference(s):
cgtn.com








