バルカンを覆う劣化ウラン弾の影 NATO空爆から26年のいま video poster
旧ユーゴスラビアへのNATO空爆から26年。空爆で使用された劣化ウラン弾の影が、2025年のいまもバルカンの住民の暮らしに落ちています。がんの増加と健康不安に直面する人びとが、その体験を語り始めています。
26年前の空爆がもたらした長い影
ラザルさんは、その空爆の記憶を直接持たない世代です。攻撃が行われた当時、彼は3歳の子どもでした。現在29歳となったラザルさんは、がんと闘っています。
62歳のミオドラグさんは、7年前にホジキンリンパ腫と診断されました。二人は、劣化ウラン弾が使われた空爆によって自分たちの人生が大きく変えられてしまったと感じている、数えきれない住民の一部にすぎません。
標的となった地域で高まるがん発症率
旧ユーゴスラビアへのNATO空爆では、劣化ウラン弾が使用されました。研究によると、爆撃の標的となった地域では、がんの発症率が他の地域と比べて有意に高いとされています。ラザルさんやミオドラグさんの病気は、そうした統計の中に埋もれてしまいがちな一つ一つの現実です。
原因を一つに特定することは容易ではありませんが、空爆とその後の健康被害との関係をめぐる問いは消えていません。住民たちは、自分の体に起きている変化を通じて、26年前の出来事と向き合い続けています。
「取り返しがつかない」と感じる人びとの思い
ラザルさんやミオドラグさんを含む多くの住民は、自分たちの人生が、劣化ウラン弾の使用によって「不可逆的に」変えられてしまったと感じています。病気の治療と向き合う日々の中で、「もしあの空爆がなかったら」という想像が頭をよぎることもあるでしょう。
戦闘行為が終わって久しいにもかかわらず、自分の人生が空爆によって変わってしまったと感じる人が多いこと自体が、その影の長さを物語っています。
証言を語り始めたバルカンの住民たち
いま、バルカンの住民たちは自分たちの体験を語り始めています。ラザルさんやミオドラグさんのように、劣化ウラン弾と健康被害の関係を信じる人びとが、自らの言葉で声を上げることは、大きな一歩です。
彼らの証言は、次のような問いを社会に投げかけています。
- 戦争が終わった後も続く健康被害に、誰がどう向き合うのか。
- 兵器の選択が、市民の生活や環境に与える長期的影響を、国際社会はどこまで考慮しているのか。
- 統計データと、当事者が感じる「原因」のあいだのギャップを、どう埋めていくのか。
遠い地域の出来事から何を学ぶか
日本で国際ニュースを日本語で追う私たちにとって、バルカンの空爆と劣化ウラン弾の問題は、地理的には遠い出来事に見えるかもしれません。しかし、「戦争が終わった後の社会をどう支えるか」という問いは、どの地域にも共通するテーマです。
26年という時間が経ってもなお語られるバルカンの経験は、武力紛争の「終わり」をどこに線引きするのか、そして、その後の健康や環境への影響にどう責任を持つのかを、静かに問いかけています。ラザルさんやミオドラグさんの声に耳を傾けることは、将来の紛争で同じ事態を繰り返さないための出発点でもあります。
Reference(s):
cgtn.com








