中国高原の村にオグロヅル約千羽 人とツルの静かな共生モデル video poster
中国西南部・シーザン自治区シガツェ市のジエンダ村に、この秋も特別な訪問者がやって来ました。黒と白の羽でタキシードをまとったようなオグロヅル(black-necked crane)約千羽です。人とツルが自然に共生するこの村の風景は、国際ニュースとしても環境ニュースとしても注目されています。
黒いタキシードの特別な来訪者
ジエンダ村は、高原地帯にある小さな集落です。毎年秋になると、遠くから渡ってきたオグロヅルたちがここを高原の楽園として選び、冬のあいだを過ごします。
この村はツルたちにとって専用の越冬地とされ、人とツルが同じ場所を無理なく共有していることから、人と野生生物の共生モデルとして語られています。
75歳テンジンさんが見守るツルたち
ジエンダ村でオグロヅルの世話役を務めているのが、75歳のテンジンさんです。ツルたちが戻ってくる季節になると、その姿を見届け、冬のあいだ静かに見守り続けています。
長い年月をともに過ごしてきたテンジンさんにとって、オグロヅルは単なる野鳥ではなく、毎年戻ってくる冬の仲間のような存在だと感じられているかもしれません。
畑を守り、牧草地で舞うツル
ジエンダ村の日常の中で、オグロヅルは特別な役割を担っています。農民が畑を耕すあいだ、ツルたちはまるで見張り役のようにそばに立ち、家畜が草を食む牧草地では、羽を広げて舞うように歩き回ります。
人と家畜、そしてツルが同じ空間を自然に行き交う光景は、教科書に出てくる人と自然の共生のイメージを、そのまま高原に再現したかのようです。
夕暮れの煙とツルの声がつくる約束の時間
日が傾き、高原が金色の光に包まれるころ、ジエンダ村の煙突からはゆっくりと煙が立ちのぼります。その上空では、オグロヅルの澄んだ鳴き声が重なり合い、夕暮れの村全体を包み込みます。
人々の暮らしを象徴する煙と、空を舞うツルの声。その組み合わせは、長い時間をかけて育まれた人と鳥との静かな約束を祝うセレモニーのようにも感じられます。
2025年のいま、ジエンダ村が投げかける問い
環境や気候変動のニュースが日々飛び交う2025年のいま、ジエンダ村の人とツルの共生は、少し違った角度から自然との付き合い方を考えさせてくれます。
巨大な技術や派手な政策だけでなく、ひとつの村と一羽一羽のツルとの関係のように、小さく見える実践が積み重なることで、地域の風景や価値観は変わっていきます。
日本の地域づくりへのささやかなヒント
ジエンダ村の姿は、日本各地で進む地域づくりにもいくつかのヒントを与えてくれます。たとえば、次のような視点です。
- 野鳥や動物の暮らしのリズムを尊重した農業や放牧のあり方を考える
- 地域の象徴となる生き物を、迷惑な存在ではなく共に暮らす隣人として捉え直す
- 毎年訪れる季節の生き物を、地域の物語として次世代に語り継ぐ
こうした小さな工夫の積み重ねが、人と自然が対立せずに共に生きる地域を育てていくのかもしれません。
高原の楽園が教えてくれること
オグロヅルにとっての高原の楽園は、ジエンダ村の人々にとっても、季節ごとに更新される大切な風景です。毎年変わらず訪れるツルの群れと、それを当たり前のように受け入れる村の暮らし。その積み重ねが、人と自然はともに時間を共有できるという静かなメッセージを世界に届けています。
通勤途中のスマートフォン越しにでも、この高原の情景を少しだけ思い浮かべてみると、日々のニュースの見え方も少し変わってくるかもしれません。
Reference(s):
cgtn.com








