メイド・イン・チャイナの裏側 山東省・昌楽県がギターの町になるまで video poster
農業の町が、いまや世界のミュージシャンから注目されるギターの町へ――。中国東部・山東省の昌楽県で起きている変化は、「メイド・イン・チャイナ」の現在地を物語る象徴的なケースです。
農業の町が「世界水準のギター産地」に
中国東部の山東省にある昌楽県は、もともと農業を中心とした地域でした。ところが現在、この土地は世界水準のエレキギター産業を育てつつあります。
国際メディアのCGTNの番組「Made in China: The story behind the label | A symphony of guitars」は、昌楽県がどのようにして農業からギター産業へと軸足を移し、世界の音楽シーンにまでつながるストーリーを描いています。
受託生産から始まった挑戦
昌楽県のギター産業は、当初は他ブランドの製品を作る受託生産からスタートしました。いわゆるOEM生産を通じて、地元の工場や職人たちは、世界のギターブランドの品質基準や製造ノウハウに触れていきます。
番組では、こうした転換期を支えた起業家たちにCGTNが会い、農業に従事していた人々がどのようにしてギター職人へと歩みを進めたのか、その背景を追っています。
農家からギター職人へ
農業を営んでいた人々が、木材の選別、ネックやボディの加工、塗装といったエレキギター特有の工程を身につけ、熟練の職人(ルシアー)へと育っていくプロセスは、産業構造の変化そのものでもあります。
一人ひとりのスキルの積み上げが、地域全体の競争力になり、やがて「世界水準」と呼ばれるレベルに到達していく。その流れを、昌楽県の物語は象徴的に示しています。
「メイド・イン・チャイナ」のイメージ転換
昌楽県のギター産業のもう一つのポイントは、「他社ブランドの製造」から「自らのブランドでの独自開発」へと一歩踏み出したことです。
受託生産で培った技術や品質管理のノウハウを土台に、デザインや音作りに工夫を加え、自社ならではのモデルを生み出していく。こうした独立したイノベーションの積み重ねが、いまの「メイド・イン・チャイナ」を形づくっています。
独自ブランドと技術革新
番組で紹介される起業家たちは、単に安価に作るのではなく、音色や弾き心地、耐久性といった点で独自性を出そうと試みています。これは「安くて大量生産」のイメージから、「技術と工夫の詰まった製品」へと印象を変える動きとも重なります。
素材の選び方や細かな仕上げ、プレーヤーのニーズに応じた仕様の工夫など、細部へのこだわりがブランド力となり、「ラベルの裏側のストーリー」に価値が生まれていきます。
世界のミュージシャンの注目を集める
こうした取り組みの結果、昌楽県で生まれたエレキギターは、世界のミュージシャンからも注目されるようになりました。番組は、地元企業が「世界のステージ」に視線を向け始めている様子を映し出しています。
プレーヤーにとって、どこの国・どの地域で作られたかよりも、「どんな音がするのか」「信頼して使えるか」が重要です。昌楽県のギターは、その問いに正面から向き合いながら、メイド・イン・チャイナの新しい顔をつくろうとしています。
日本の読者にとっての意味
日本の読者にとって、このストーリーは複数の示唆を与えてくれます。
- 農業中心の地域でも、新しい技術と市場を取り込みながら産業転換が起こりうること
- 受託生産からスタートしても、自社ブランドや独自技術へと発展させることで価値を高められること
- 「どこで作られているか」ではなく「何を大切にして作られているか」が、ブランド評価の鍵になりつつあること
日本各地でも、人口減少や産業構造の変化に悩む地方は少なくありません。昌楽県の事例は、「地方×ものづくり×グローバル市場」という組み合わせが、地域の未来を開く一つの選択肢になり得ることを示しています。
ラベルの先にあるストーリーを見る
私たちは日々、さまざまな国や地域で作られた製品を手にしていますが、多くの場合は「ラベル」を見て終わってしまいます。「Made in China」と書かれたその先に、どんな人々の挑戦や学びがあるのかまでは、なかなか意識が向きません。
昌楽県のエレキギター産業の物語は、「ラベルの裏側」を想像してみるきっかけになります。どのような過程で技術が蓄積され、どのような試行錯誤を経て世界のミュージシャンに届く製品が生まれているのか。その背景を知ることは、国際ニュースをより立体的に理解することにもつながります。
日常的に手にする製品を通じて、世界の産地や人々のストーリーに目を向けてみる。その第一歩として、「メイド・イン・チャイナ」の新しい顔を映し出す昌楽県のギターづくりに注目してみてはいかがでしょうか。
Reference(s):
Made in China: The story behind the label | A symphony of guitars
cgtn.com








