マレーシア熱帯雨林で太陽光発電 先住民族と中国技術者が描く共生の未来 video poster
マレーシアの熱帯雨林の奥深くで、先住民族オラン・アスリの集落に太陽光発電が導入されつつあります。中国の技術者と地元ボランティアが協力し、「自然の鼓動を乱さない進歩」を探る取り組みが、2025年の今、静かに注目を集めています。
進歩か保存か――オラン・アスリの揺れる選択
長年、オラン・アスリの人びとは豊かな熱帯雨林と共に暮らし、狩猟や採集、小規模な農業に支えられた生活を続けてきました。一方で、教育や医療、通信などの「近代的な便利さ」へのアクセスは限定的でした。
集落に電力インフラを引き込もうとすると、道路整備や伐採など、森に大きな負荷をかける開発がセットで進むことが少なくありません。生活を便利にしたいという思いと、森を守りたいという願い。その間で、コミュニティは何度も選択を迫られてきました。
太陽光発電が開いた第三の道
こうしたジレンマの中で提案されたのが、小規模な太陽光発電による電力供給です。屋根の上や空き地にパネルを設置し、バッテリーに電気をためることで、外部の大規模インフラに頼らず、必要な分だけ電力を得る仕組みです。
この仕組みによって、夜間の照明や携帯電話の充電、小型の冷蔵庫など、生活の質を高めるための最低限の電力を、森林破壊を最小限に抑えながら確保することができます。オラン・アスリにとって、これは「森を手放さないまま、子どもたちの未来も開きたい」という思いに応える選択肢となりました。
中国の技術者と地元ボランティアの協働
このプロジェクトの特徴は、中国の技術者が一方的に技術を持ち込むのではなく、地元ボランティアとオラン・アスリの人びとと共に設計を進めている点です。日射の条件や雨季の変化、集落ごとの生活パターンを丁寧に聞き取りながら、パネルの配置やバッテリー容量が決められていきます。
設置作業にもコミュニティのメンバーが参加し、基礎的なメンテナンス方法も現地の言葉で共有されます。「外から来た技術」ではなく、「自分たちで動かし、守っていく仕組み」として受け止められている点が、持続可能性につながっています。
「自然の鼓動を乱さない進歩」という価値観
プロジェクトに関わる人びとに共通しているのは、「本当の意味での進歩とは、自然のリズムを壊さないことだ」という考え方です。熱帯雨林の中で暮らすオラン・アスリにとって、森の変化は生活そのものの変化を意味します。だからこそ、電力の便益があっても、森を大きく切り開くような開発には慎重にならざるをえません。
太陽光発電は、そうした感覚と相性のよい技術です。日が昇れば電気が生まれ、日が沈めば夜の静けさが戻る。自然のリズムを大きく変えない形で生活を少しずつ便利にしていく発想は、「成長は常に拡大と破壊を伴うものだ」という従来の開発観への静かな問いかけにもなっています。
日本の私たちへの示唆
マレーシアの熱帯雨林で進むこの取り組みは、日本で暮らす私たちにとっても無関係ではありません。再生可能エネルギーの導入や地方の活性化を考えるとき、「どれだけ多くつくるか」だけでなく、「どのような価値観に基づいてつくるか」が問われているからです。
便利さか、環境かという二択ではなく、コミュニティの声を起点に、小さく柔らかなテクノロジーを組み合わせる道がありうる。オラン・アスリ、中国の技術者、地元ボランティアが共に描く「自然の鼓動を乱さない進歩」のビジョンは、ポスト化石燃料時代の国際ニュースとして、今後も注目していく価値がありそうです。
Reference(s):
cgtn.com







