ベトナム戦争から50年 今も語りかける「傷」と癒やしの物語 video poster
ベトナム戦争から50年。国際ニュースとしてだけでなく、記憶と和解の問題としても重いテーマを見つめるドキュメンタリーシリーズ「Vietnam, 50 Years On… The War That Still Speaks」の後編は、いまも残る心の傷と、それを癒やそうとする人びとの歩みを丁寧に追いかけます。
戦争は終わっても、傷は終わらない
戦争は、戦場となった土地に物理的な傷跡を残すだけでなく、そこに生きた人びとの心に深い「見えない傷」を刻みます。ベトナム戦争も例外ではなく、半世紀が過ぎた今も、その余波は二つの国の社会や家族の中で静かに続いています。
後編となる本作は、「戦場の記憶」がどのように現在の人びとの選択や生き方に影響し続けているのかを、親密な個人の物語を通じて描き出します。
亡き兵士の「日記」が家族のもとへ戻るまで
作品の一つめの軸は、戦場に倒れたある兵士が残した日記が、長い年月を経て家族のもとに戻るまでの物語です。
- 戦場で拾われた一冊の日記
- 持ち主を探し続ける人びとの粘り強い試み
- 家族が初めて知る、戦地での息子・父・兄の姿
日記の言葉は、書き手にとっては当時の「現在」そのものでしたが、50年後には家族と社会が戦争を理解し直すための「証言」となります。個人的な記録が、国境や立場を超えて人と人とをつなぐ媒体になっていく過程は、戦争の記憶が決して一部の専門家だけのものではないことを示しています。
養子として育った子どもがたどる、出自をめぐる旅
二つめの物語は、幼いころに養子に出され、新しい土地で育った一人の人が、自身の出自と生みの親を探し出そうとする過程を追います。それはしばしば、過酷な現実と向き合うことを意味します。
- なぜ自分はこの家族のもとにいるのかという問い
- 出生の背景にある、戦争と貧困、社会の分断といった要因
- 「本当の自分」を知りたいという切実な思い
この旅は、単なる家族探しではありません。戦争という巨大な出来事が、個人のアイデンティティや人生の選択をどれほど長く縛り続けるのかを、視聴者に突きつけます。同時に、出自の真実を知ろうとする行為そのものが、過去と現在をつなぎ直す一歩にもなっていきます。
名もなき遺骨に名前を与える科学者たち
三つめの軸となるのは、いまだ身元の分からないまま埋葬された人びとに名前を取り戻そうとする科学者たちの取り組みです。
- 戦場跡や埋葬地から掘り起こされる遺骨
- 身元を特定するための地道な科学調査と記録作業
- 家族のもとに「帰る」ことで、ようやく終わる長い戦争
ここで描かれるのは、きわめて静かで地味に見える作業です。しかし、ひとつひとつの遺骨に名前が戻ることは、残された家族の時間を前に進めるための、決定的に重要な一歩です。科学者たちの努力は、「数」として語られがちな戦死者を、再び「一人ひとりの人生」として社会の中に位置づけ直す試みでもあります。
なぜ今、ベトナム戦争を振り返るのか
ベトナム戦争の終結から50年を迎える今、この戦争を取り上げる作品は少なくありません。その中で、本シリーズ後編の特徴は、「歴史的評価」や「勝者と敗者」といった大きな枠組みではなく、個人の記憶と感情にカメラを向けている点にあります。
日記、出自を探す養子、名もなき遺骨。いずれも、国際政治の大きな物語からはこぼれ落ちがちな存在です。しかし、そこにこそ戦争の現実が凝縮されているのだと、作品は静かに訴えます。
日本の視聴者にとっての問いかけ
国際ニュースや海外の歴史に関心の高い日本の視聴者にとって、この作品は次のような問いを投げかけます。
- 半世紀前の戦争の記憶を、私たちはどう受け取り直すべきか
- 「遠い国の戦争」を、自分ごととして想像するには何が必要か
- デジタル時代に、日記や証言、遺骨といった「アナログな記憶」をどう残し、伝えていくか
ドキュメンタリーは明確な答えを提示するというより、視聴者一人ひとりが自分の経験や社会の状況と重ね合わせて考える余白を残しています。「50年前のベトナム戦争」という特定の出来事を通じて、現在進行形の紛争や、これからの記憶の継承のあり方を考えさせる構成です。
「まだ語り続ける戦争」と向き合う
作品タイトルが示すように、この戦争は今も「語り続けて」います。それは、過去が終わっていないという不気味さを意味すると同時に、今からでも新しい語り方を選び取れるという可能性も示します。
日記を手渡す人、家族を探す人、名もなき遺骨に名前を与えようとする人。それぞれの小さな行動が、断ち切られていた時間や関係を少しずつつなぎ直し、戦争の物語を書き換えていきます。
ベトナム戦争から50年。国際ニュースとしての出来事を超えて、このドキュメンタリー後編は、「戦争の終わり」とは何か、「和解」とはどのようにして始まるのかを、静かに問いかけています。
Reference(s):
cgtn.com








