ロシア版画ルボークと中国の年画 版画がつなぐ感情の共鳴 video poster
ロシアの民衆版画「ルボーク」と、中国の旧正月を彩る年画。この二つの版画文化はいったい何が似ていて、どこが違うのでしょうか。国際ニュースとしての文化交流の視点から、その「共鳴」を見ていきます。
サンクトペテルブルクで出会う二つの版画
ロシア北西部の都市サンクトペテルブルクで、天津大学の研究者、徐辰磊(Xu Chenlei)さんが行う比較研究が注目されています。テーマは、ロシアのルボーク版画と中国の年画を並べて読み解き、共通する感情やモチーフを探ることです。
徐さんは、別々の歴史と文化を持つ二つの版画が、なぜ似た雰囲気や物語性を持つのかに着目します。その背景には、「家族への思い」「幸運への願い」といった、国や地域を超える人間の感情があるとみています。
ルボークと年画とはどんな版画か
ルボークは、ロシアで広まった民衆向けの版画で、物語や宗教、風刺などを親しみやすい絵と短い言葉で表現したものです。一方、中国の年画は、春節(旧正月)の時期に家の壁や扉に貼られる縁起物の版画で、福や長寿、豊作などを願う図柄が多く描かれます。
どちらも、宮殿や美術館のためではなく、ふだんの暮らしの中で人々が眺め、楽しみ、願いを託してきた「生活のアート」といえる存在です。
共通するテーマ:「願い」と「物語」
徐さんの比較研究が浮かび上がらせるのは、次のような共通点です。
- 幸運と繁栄への願い: 家族の無事や商売繁盛、豊作などを祈る図柄が多く登場します。
- 家族と共同体: 団らんの場面や、みんなで祝う祭りの様子が繰り返し描かれます。
- 信仰と保護: 守護の存在やありがたい物語を通じて、「見えないもの」に守られたいという思いが表れます。
- ユーモアと風刺: 少し誇張されたキャラクターやコミカルな構図で、社会をそっとからかう視線も共通しています。
こうしたテーマは、国際ニュースで取り上げられる政治や経済とは別のレベルで、私たち人間が共有してきた感情そのものだといえます。
違いは「ビジュアル言語」の選び方
共通点が多い一方で、ルボークと年画には、色づかい、線の強さ、人物の描き方などに違いがあります。それは、気候や宗教、歴史的な経験の違いが反映された「ビジュアル言語(視覚のことば)」の差ともいえます。
たとえば、どの色を「おめでたい色」と感じるか、どんな構図を「力強い」と受け止めるかは、地域ごとに異なります。同じ「幸せな家族」を描いていても、その表現はロシアと中国で少しずつ違い、その違いこそが文化の個性になります。
文化比較が映し出す「似ている」と「違う」のバランス
2025年のいま、世界では違いばかりが強調されがちですが、徐さんのような比較研究は、「実は似ている部分も多い」という視点を思い出させてくれます。ロシアと中国という二つの地域の版画を並べて見ることで、対立ではなく共感の糸口を探ることができるからです。
同時に、「似ているからどちらか一方でよい」という話ではありません。むしろ、共通する感情をそれぞれがどのような物語や色、線で表現してきたのかを丁寧に見ることで、文化ごとの独自性への理解が深まります。
私たちにとっての「版画からの学び」
日本の読者にとっても、ルボークと年画の比較は他人事ではありません。日本にも、浮世絵や祭礼のポスター、商店街の縁起物など、生活に根ざした絵が数多くあります。
サンクトペテルブルクで進むこの比較研究は、「国や時代は違っても、人は似たようなものを願い、似たようなことで笑ってきた」という、ささやかな確信を与えてくれます。次に年末年始の飾りつけや縁起物のイラストを目にしたとき、遠くのロシアや中国で描かれてきた版画を思い浮かべてみると、新しい見え方が生まれるかもしれません。
Reference(s):
cgtn.com








