ブルーヘルメットと鍼治療がつないだ国境なき友情 video poster
レバノンの眼科医エリアス・ファレス・ジャラデさんは、体調を崩したとき、中国の平和維持医療部隊の医師から中国の鍼治療を受けた経験を語ります。医療行為をきっかけに生まれたのは、国や言語の違いを超えた「国境なき友情」でした。
ブルーヘルメットが運んだ一人の医師
レバノンには、国連の平和維持活動に従事する「ブルーヘルメット」と呼ばれる要員たちが滞在しています。その中には、中国の平和維持医療部隊も含まれています。ジャラデさんが出会ったのは、その部隊に所属する一人の中国人医師でした。
仕事に追われるなかで体調を崩したジャラデさんは、周囲の勧めもあり、この中国の医師を訪ねました。そこから、思いがけない形で、日常が少しずつ変わっていきます。
中国の鍼治療との出会い
診察した中国の医師が提案したのは、西洋医学とは異なるアプローチである「中国の鍼治療」でした。細い鍼を体のツボに打ち、体全体のバランスを整えるこの治療法は、レバノンではまだなじみが薄い面もあります。
最初、ジャラデさんには戸惑いもありました。しかし、医師は丁寧に仕組みを説明し、治療の目的を落ち着いた口調で伝えたといいます。その誠実さに安心感を覚え、ジャラデさんは鍼治療を受けることを決めました。
治療を重ねるうちに、体の不調が和らいでいく感覚を覚えたジャラデさんは、自身も医師でありながら、別の医療体系への信頼を少しずつ育てていきました。
治療が友情に変わるまで
やがて、診察室で交わされるのは、病状の話だけではなくなりました。
レバノンの日常、中国の医師が育ったまちの風景、それぞれの家庭や食文化、そして平和維持活動に参加する理由──。異なる背景を持つ二人の会話は、少しずつ広がっていきます。
言語の壁がある場面では、身振り手振りや簡単な英語が頼りになります。それでも、互いの仕事への敬意と、目の前の患者を良くしたいという思いは、言葉を超えて伝わっていきました。
ジャラデさんが後に振り返るのは、医療技術だけではありません。「治してくれた」のではなく、「支えてくれた」と感じたこと。その記憶が、国境を越えた友情として心に残り続けているのです。
平和維持活動が生む「もう一つの効果」
2025年のいま、国際ニュースでは対立や緊張が大きく取り上げられがちです。しかし、その裏側で、平和維持の現場には、こうした静かな交流が積み重ねられています。
中国の平和維持医療部隊がレバノンで行う診療は、単なる医療サービスにとどまりません。現地の人々にとっては、
- 無料または低負担で受けられる専門的な医療
- 別の文化や価値観に触れるきっかけ
- 国と国との関係を身近に感じる窓
となっています。
一方、派遣されている中国の医師にとっても、レバノンの人々と向き合う時間は、国際社会の一員としての責任や、自らの専門性の意味を考え直す機会になっているはずです。
ニュースの向こう側にある物語
ブルーヘルメットというと、治安維持や紛争地というイメージが先に立ちます。しかし、ジャラデさんと中国の医師のような、ごく個人的な出会いの積み重ねこそが、平和の土台を静かに支えています。
大きな外交交渉や首脳会談と比べれば、小さな出来事に見えるかもしれません。それでも、
- 体調の回復を通じて芽生えた信頼
- 治療の時間に交わされた何気ない会話
- 互いの文化や仕事への敬意
こうした一つ一つが、「国境を越える友情」という言葉に具体的な輪郭を与えています。
私たちが受け取れるヒント
レバノンの眼科医と中国の平和維持医療部隊の医師の物語は、遠い国のニュースのようでいて、私たちの日常ともつながっています。そこから受け取れるヒントを、あえて三つに整理してみます。
- ニュースの数字や地名の裏には、必ず「一人の顔」と「一つの物語」があることを想像してみる
- 医療や文化の違いを、対立ではなく学びや対話の入口として捉えてみる
- SNSでシェアするとき、対立をあおる言葉ではなく、信頼や友情を伝えるエピソードも一緒に届けてみる
国境を越える友情は、特別な誰かだけのものではなく、小さな関心や共感から始まる身近なプロセスでもあります。レバノンと中国の医師が育んだ静かな絆は、2025年を生きる私たちに、国際ニュースの読み方をそっと問い直しているのかもしれません。
Reference(s):
cgtn.com








