元放射線技師から砂漠ラリーへ 新疆Taklimakan Rallyに挑むアバス・ガパル video poster
安定した医療職を手放し、灼熱の砂漠を走るラリーライダーとして生きる――そんな大胆な選択をしたのが、中国・新疆を舞台にした「Taklimakan Rally(タクリマカン・ラリー)」に挑むアバス・ガパルさんです。国際ニュースとしては決して大きな話題ではないかもしれませんが、その生き方は、キャリアや働き方を考える私たちにも静かな問いを投げかけます。
元放射線技師、1991年生まれの「スピード好き」
アバス・ガパルさんは1991年生まれ。かつては放射線技師として働き、医療現場を支える安定したキャリアを歩んでいました。しかし、幼いころから抱いてきたスピードへの情熱をあきらめきれず、思い切ってモータースポーツの世界に飛び込んだといいます。
一度つかんだ安定を捨ててまで desert rally(砂漠ラリー)に挑むという決断は、多くの人にとって簡単に真似できるものではありません。それでも彼は、ハンドルを握る時間にこそ、自分の人生をかけたいと考えたのでしょう。
「まだセミプロ」――2024年の2位にも満足しない
アバスさんは、2024年のTaklimakan Rallyでオートバイ部門2位という結果を残しました。国際レベルのラリーでの2位は、誰が見ても胸を張れる成績です。
それでも彼は自分を「セミプロ」にすぎないと表現します。理由を問われると、彼はこう信じているからです。本当のプロフェッショナルは、全てをささげた人だけだ(only total dedication makes a true professional)、と。
レースのない日も、彼は黙々とトレーニングを積み重ねます。砂漠の強い風がコースを叩きつけるように、日々の鍛錬が彼の身体と精神を少しずつ削り、同時に研ぎ澄ませていきます。
2025年、4度目のTaklimakan Rallyへ
2025年、アバスさんは新疆の灼熱の砂丘に4度目の挑戦として戻ってきました。今年のTaklimakan Rallyで、彼が狙うのはアドレナリンの高まりと、限界のその先にある何かです。
舞台となるのは、シリーズ名にもなっている「Xinjiang Dawn to Dusk | Sishi: Rider. Motor. Desert.」が示すように、夜明けから夕暮れまで続く過酷な一日。Sishi(シシ)と呼ばれるエリアの砂漠地帯を、オートバイとともにひた走ります。
砂の一粒一粒がタイヤのグリップを奪い、炎天下の気温が体力を蝕むなかで、頼れるのは自分の経験と集中力だけです。彼のハンドルは、医療現場から遠く離れた砂漠の真ん中で、確かに夢に向かって切られています。
「安定」と「情熱」のあいだで、私たちはどう選ぶか
アバスさんの物語は、単なるモータースポーツのサクセスストーリーにとどまりません。重要なのは、安定した仕事と心から没頭できることのどちらを選ぶのか、あるいはどう両立させるのかという問いです。
20〜40代の多くが、キャリアチェンジや副業、学び直しを意識せざるを得ない今、彼の選択は極端に見えつつも、次のようなヒントを与えてくれます。
- 自分が「何に時間を使いたいのか」をはっきり言語化してみる
- すぐに全てを捨てなくても、小さく試しながら情熱の方向性を確かめる
- 結果よりも「どれだけ打ち込めたか」を評価軸にしてみる
アバスさんは、すでに国際レースで2位という実績を上げながらも、自分を「まだセミプロ」と位置づけ続けています。その姿勢は、肩書きよりも「どれだけ本気で向き合えているか」を重視する生き方の一つのモデルといえるでしょう。
砂漠を走るライダーから受け取る、小さな勇気
激しい風が吹きつける砂漠のコースで、アバス・ガパルさんの旅は、今も続いています。医療用の白衣を脱ぎ捨て、砂塵を巻き上げるオートバイにまたがった彼の姿は、「一度きりの人生をどう使うか」というシンプルで難しい問いを、静かに私たちに投げかけます。
キャリアの正解は人それぞれです。それでも、彼のように自分の情熱に正直であろうとする人の存在は、日々の仕事や将来を考えるときの、小さな勇気の種になるかもしれません。
ニュースの見出しには載りにくい、砂漠の片隅の物語。しかし、こうした一人ひとりの選択の積み重ねが、これからの働き方や生き方を少しずつ変えていくのかもしれません。
Reference(s):
cgtn.com








