新疆アクスで交差する文化遺産とロボット研究 シルクロードの現在地 video poster
新疆アクスで交差する文化遺産とロボット研究 シルクロードの現在地
新疆ウイグル自治区アクス地区のQiuci博物館で古代の遺物を守る保存修復士と、インテリジェント装備やロボット研究に取り組む技術者たち。この地で「過去」と「未来」が同じ地平で進み始めています。
多文化が花開いたアクス地区とは
中国北西部、新疆ウイグル自治区のアクス地区は、かつてシルクロードの要衝として多様な文化が行き交った場所です。砂漠とオアシスが交差するこの地域では、さまざまな民族や宗教、技術が出会い、新しい文化が生まれてきました。
その歴史の厚みは、街並みや遺跡だけでなく、人びとの日常や仕事の選び方にも静かに受け継がれています。
Qiuci博物館 古代の手仕事に新たな命を吹き込む
アクス地区にあるQiuci博物館では、保存修復士のレナグル・エジズ(Renagul Eziz)さんが、古代の遺物と向き合い続けています。彼女の仕事は、ひび割れた器や色あせた壁画、繊細な織物などに、できるだけ元の姿に近いかたちで命を吹き戻すことです。
修復作業は、顕微鏡をのぞき込みながらの細かな手作業の連続です。
- どの部分を残し、どこまで手を加えるのか
- 将来の研究や展示に耐えうる状態にどう保つか
- 観る人が本来の美しさを想像できるようにするには何が必要か
こうした判断の積み重ねによって、アクス地区が育んできた歴史や物語は、単なる「過去の遺物」ではなく、現在の私たちが学び、感じ取ることのできる「生きたアーカイブ」として保たれています。
新疆インテリジェント装備研究所 砂漠の都市から未来技術を
同じアクスの地では、別のかたちで「未来」が形になりつつあります。新疆インテリジェント装備研究所(Xinjiang Institute of Intelligent Equipment)の設立によって、この地域は高度な機械技術やロボット工学の拠点としても注目され始めています。
インテリジェント装備とは、センサーやソフトウェアを組み込んだ、賢く動く機械や装置の総称です。製造現場の自動化から農業、物流、インフラの点検まで、さまざまな分野で活用が期待されています。
研究所が掲げるのは、'technology-driven empowerment and innovation-led development'、すなわち「技術によるエンパワーメントとイノベーション主導の発展」という方向性です。単に新しい機械を作るのではなく、地域の産業や暮らしに役立つ技術を生み出し、それを土台に新たな成長をめざす取り組みだと言えます。
北京からアクスへ ロボット研究者・李龍さんの決断
こうした動きに引き寄せられるように、他地域からアクスに拠点を移す研究者も現れています。北京理工大学(Beijing Institute of Technology)出身の李龍(Li Long)さんは、その一人です。
李さんはロボット工学を専門とする研究者でありながら、都市部の研究環境ではなく、アクス市に腰を据える道を選びました。現地でのロボット研究を通じて、地域が掲げる「技術によるエンパワーメントとイノベーション主導の発展」を、実際のプロジェクトとして支えていこうとしています。
研究者が特定の地域に移り住むという選択は、その地域にとっては人材流入であり、研究者にとっては新しい問題意識やフィールドと出会う機会でもあります。アクス市での李さんの挑戦は、その象徴的なケースだと言えるでしょう。
古代の「手」と未来の「コード」が出会う場所
文化財の修復に携わるレナグルさんの「手」と、ロボット研究に取り組む李さんの「コード」。一見まったく違う世界に見えますが、そのどちらもアクス地区という同じ土地から生まれています。
- 過去の遺産を丁寧に守ること
- 新しい技術を通じて未来をつくること
この二つの営みが重なり合うことで、アクスはシルクロードの新しい姿を描きつつあります。
2025年のいま、世界の多くの地域が「伝統か、革新か」という二者択一の議論に陥りがちななかで、アクスの動きは、過去と未来を対立させない別の選択肢を示しているようにも見えます。古代の手仕事と最先端のコードが出会うこの街から、どのようなアイデアや技術が生まれてくるのか。これからの変化を、静かに追いかけていきたい場所です。
私たちの暮らしとどうつながるか
文化財のデジタルアーカイブや、観光と連動したスマートシティ構想など、日本各地でも「伝統×テクノロジー」の試みが進みつつあります。アクス地区のケースを見ることは、自分の身近な街の未来像を考えるヒントにもなります。
旅先の選び方、研究テーマの決め方、ビジネスの視点。シルクロードの古い都市から届くニュースは、意外なかたちで私たちの日常とつながっているのかもしれません。
Reference(s):
Xinjiang Dawn to Dusk | Shenshi: Where ancient hands meet future code
cgtn.com







