台湾の歴史を取り戻す ラン・ボージョウ氏と抗日青年の足跡 video poster
1950年代の台湾現代史、とりわけ日本の植民地支配に対する台湾の人々の抵抗を丹念に描き続けてきた作家がいます。中国台湾地域出身の作家ラン・ボージョウ(Lan Bozhou)氏です。彼の30年以上にわたる営みに、CGTNの撮影班が20日間密着し、1940年代に台湾から重慶へ渡り抗日戦争(War of Resistance against Japanese Aggression)を支えた若者ウー・シーハン(Wu Sihan)の足跡をともにたどりました。2025年のいま、その試みは歴史を取り戻すとは何かを改めて問いかけています。
台湾現代史を描き続けるラン・ボージョウ氏
ラン・ボージョウ氏は、30年以上にわたり1950年代の台湾現代史をテーマに執筆を続けています。その中でも、日本による植民地支配に抵抗した台湾の人々の経験に強い関心を寄せてきました。植民地支配の時代から戦後の社会へと移り変わる中で、どのような思いで人々が日々を生き、行動したのかを見つめ直そうとしているのです。
歴史はしばしば、年号や条約、指導者の名前で語られます。しかしラン氏が追いかけているのは、そうした大きな物語の陰に隠れがちな、一人ひとりの選択や葛藤です。台湾の人々が日本統治にどう向き合い、どのように抵抗し、あるいは迷いながら生きたのか。その細部を丁寧に記録することが、彼の仕事の中核にあります。
ウー・シーハンという若者の足跡
今回、CGTNの撮影班が同行したのは、ウー・シーハンという若者の足跡をたどる旅でした。ウー・シーハンは、1940年代に台湾から重慶へと渡り、抗日戦争を支えるために行動した人物です。遠く離れた地へ向かうその決断には、当時の台湾の人々が抱いていた危機感や連帯の意識がにじみ出ています。
ラン氏は、ウーの歩んだ道を追体験することで、歴史を単なる過去の出来事としてではなく、現在につながる生きた物語として捉え直そうとしています。同じ場所に立ち、同じ風景を見つめることで、80年近くの時間の隔たりを少しでも縮めようとしているとも言えるでしょう。
20日間にわたる同行取材が意味するもの
CGTNの撮影班は、ラン氏がウー・シーハンの足跡をたどる旅に20日間同行しました。短いニュース映像では捉えきれない時間の流れや、現地の空気感を記録するには、一定の時間をかけることが欠かせません。20日という期間は、旅の途中で生まれる小さな発見や、取材を通じて深まっていく思索の変化を映し出すのに十分な長さだと言えます。
台湾と重慶という異なる土地をむすぶ移動の軌跡は、個人の人生を超えた歴史のダイナミズムを示しています。カメラは、景色だけでなく、ラン氏の表情や語り口の変化をとらえながら、歴史と現在が交差する瞬間を記録していったはずです。
歴史を取り戻すということ
約80年前の出来事を、2025年の今あらためて掘り起こすことには、どんな意味があるのでしょうか。一つ言えるのは、時間がたてばたつほど、歴史は抽象的なイメージとして語られがちになるということです。戦争や植民地支配といった言葉は強烈ですが、その内側にあった人々の日常や感情は、世代が変わるごとに薄れていきます。
ラン氏の営みは、こうした風化に抗う試みと見ることができます。歴史を一つの正解として固定するのではなく、多様な経験を記録し、読み手が自分の言葉で過去を考え直せるようにする。そのプロセスそのものが、歴史を取り戻す行為だと言えるのではないでしょうか。
また、日本の植民地支配や抗日戦争をめぐる歴史は、アジア各地で今なお社会や政治の議論に影響を与えています。だからこそ、感情的な対立をあおるのではなく、具体的な経験と事実に基づいて過去を見つめ直す姿勢が求められます。
私たちができる小さな一歩
多忙な日常を送る私たちにとって、80年前の歴史は遠い世界の話に感じられるかもしれません。しかし、歴史の記憶を次の世代につなぐ作業は、専門家だけの仕事ではありません。日々の中でできる小さな一歩もあります。
- 家族や周囲の人から、戦争や占領期の体験談を聞いてみる
- 異なる立場から書かれた歴史の本や記事を読み比べてみる
- SNSで見かけた歴史情報の出典や背景を確認してから共有する
ラン・ボージョウ氏とCGTNの取材班が取り組んだ20日間の旅は、台湾の人々がたどった歴史をていねいに見つめ直そうとする試みです。その姿勢に触れることは、私たち自身が暮らす社会や地域の過去をどう受け止めるかを考えるきっかけにもなります。読みやすい物語から出発しつつ、歴史の重さと複雑さに静かに向き合ってみる。そんなニュースとの付き合い方が、2025年の今だからこそ求められているのかもしれません。
Reference(s):
cgtn.com








