中国の氷雪スポーツブーム:極寒が「経済の金鉱」に変わるまで
中国で、スキーやスケートなどの氷雪スポーツが「ニッチな冬の遊び」から全国的なブームへと変わりつつあります。ここ数年で参加人口が大きく増え、「極寒」が地域経済を支える「経済の金鉱」になり始めているといわれます。
こうした動きをテーマにした番組「Groundbreakers」では、業界関係者が集まり、なぜ今これほど多くの人が氷雪スポーツに惹かれているのか、なぜ北部だけでなく全国に広がっているのか、そしてこの成長産業の課題と可能性について議論しています。本稿では、その論点を手がかりに、中国の氷雪スポーツブームを整理します。
なぜ今、中国で氷雪スポーツが人気なのか
中国ではこの数年、氷雪スポーツに挑戦する人が急速に増えています。その背景には、いくつかの社会的・経済的な変化があります。
主なポイントは次の通りです。
- 生活水準の向上と余暇の多様化:中間所得層の拡大により、旅行やスポーツなど「体験」にお金をかける人が増えています。冬のレジャーとしてスキーやスケートを楽しむことが、都市部の若い世代にとって身近な選択肢になりつつあります。
- 健康志向とアウトドア人気:長時間のデスクワークから離れ、自然の中で体を動かしたいという声が強まっています。雪山での運動は、「非日常」と「健康」を同時にかなえてくれる存在として注目されています。
- SNSが後押しする「体験の共有」:雪景色やスキー場での写真・動画は、SNSで共有しやすく、「行ってみたい」という気持ちを呼び起こします。インフルエンサーや有名人が氷雪スポーツを楽しむ様子を発信することで、ブームに一層の勢いがついています。
- 大型イベントによる関心の高まり:冬季スポーツに関する大規模な大会やイベントが注目され、中国国内で「冬のスポーツ」に対する認知度が一気に高まりました。これをきっかけに、多くの人が実際に競技に挑戦し始めたとみられます。
北部から全国へ広がる「氷の経済圏」
もともと氷雪スポーツといえば、寒さの厳しい中国北部のイメージが強くありました。しかし最近では、比較的温暖な地域や大都市圏にも、氷雪スポーツの波が確実に広がっています。
- 屋内施設の増加:ショッピングモールや都市型レジャー施設に屋内スケートリンクや人工スキー場が併設されるケースが増えています。これにより、雪があまり降らない地域の住民も、気軽に氷上スポーツを体験できるようになりました。
- 「目的地としての雪国」への注目:北部の雪や氷の豊富な地域は、冬の観光地として存在感を強めています。地元の食文化や温泉、伝統行事と組み合わせた「冬の旅行商品」が開発され、都市部からの旅行客を呼び込んでいます。
- 家族ぐるみのレジャーへ:子ども向けのスキー教室や親子向けの体験ツアーなど、ファミリー層をターゲットにした商品も増えています。一度体験した子どもが「また行きたい」と親にねだることで、リピーターが生まれやすくなっています。
こうして、中国の氷雪スポーツは「北部の一部の人の趣味」から、「全国の人が楽しむレジャー」へと姿を変えつつあります。
極寒が生み出す「経済の金鉱」
番組タイトル「From icy cold to economic gold」が示すように、氷雪スポーツは今、「寒さ」を経済の追い風に変えつつあります。具体的には、次のような分野でビジネス機会が生まれています。
- スキー・スケート用品の販売やレンタル
- リゾート地のホテル、飲食店、交通など観光関連産業
- 初心者向けスクールや競技者向けトレーニング施設
- 大会やイベント運営、スポーツメディア・配信サービス
- 氷雪テーマパークやイルミネーションなど冬季エンターテインメント
これらが地域経済にもたらす効果は小さくありません。特に、冬季の観光客増加によって「オフシーズン」の収益源が生まれ、地方経済の安定につながると期待されています。
また、デジタル技術との組み合わせも進んでいます。オンライン予約プラットフォームや、滑り方を解析するアプリなど、新しいサービスが登場することで、利用者の利便性が高まり、ビジネスの裾野がさらに広がっています。
急成長ゆえの課題とリスク
一方で、急速なブームには課題も伴います。番組で議論された論点として、次のような点が挙げられます。
- 初期投資と運営コストの重さ:スキー場や屋内リンクの建設には大きな投資が必要です。設備の維持費や人件費もかかるため、利用者が減った場合に採算がとれるのかという懸念があります。
- 安全対策と人材育成:氷雪スポーツは転倒や衝突などのリスクを伴います。初心者が増えるほど、インストラクターや救護体制の充実が欠かせません。経験豊かな指導者をどのように育成・確保するかが課題です。
- 環境への配慮:人工雪の製造や屋内施設の冷却にはエネルギーが必要です。環境負荷を抑えつつ産業を成長させるために、効率的な設備や再生可能エネルギーの活用など、持続可能性への配慮が求められています。
こうした課題にどう応えていくかが、中国の氷雪スポーツ産業が「一時的なブーム」で終わるのか、「長期的な成長エンジン」になれるのかを左右するといえます。
日本から見る中国の氷雪ブーム
日本にとっても、中国の氷雪スポーツブームは無関係ではありません。アジアにおける冬のレジャー市場の拡大は、日本のスキー場や観光地にとっても、新たな連携や競争の可能性を意味します。
- 氷雪スポーツを軸にした観光交流
- 用具・サービス分野での協力やノウハウ共有
- アジア全体での冬季スポーツ文化の発展
中国で進む氷雪スポーツの普及は、「冬をどう楽しむか」「寒さをどう経済価値に変えるか」という問いを、アジア全体に投げかけています。
おわりに
中国で進む氷雪スポーツの広がりは、単なる流行ではなく、生活スタイルや地域経済を変える大きな動きになりつつあります。番組「Groundbreakers」が取り上げるように、その裏側には、人々の価値観の変化、都市と地方をつなぐ新しい観光、デジタル技術を生かしたサービスの登場など、多くの要素が絡み合っています。
この冬、私たちは「寒さ」をどう捉え、どんな楽しみ方やビジネスの形を描いていくのか。中国の事例は、そのヒントを与えてくれるかもしれません。
Reference(s):
cgtn.com








