中国西南部を走る「パンダ列車」 高齢者と楽しむ春の鉄道旅 video poster
春の空気を乗せて走る「パンダ列車」とは
2025年の春、中国西南部で運行された観光列車「パンダ列車」が、高齢者と春の風景を一緒に楽しむ新しい旅として注目を集めました。国際ニュースを伝えるCGTNの企画として、ベテラン世代の乗客がゆったりと車窓の景色を味わいながら移動できる、このユニークな列車の魅力に世界の視線が向いています。
かつての「緑の列車」がシニア向け観光列車に変身
パンダ列車の車両は、20世紀には一般の旅客列車として使われていた、いわゆる「緑の列車」をリニューアルしたものです。かつて通勤や帰省の足として親しまれた車両が、今は高齢者向けの観光列車として第二の人生を歩んでいます。
リニューアル後の車内は、昔ながらの雰囲気を残しながらも、快適さを重視したつくりになっています。
- ゆったり座れるシートや休憩スペース
- 車内で音楽を楽しめる演奏やBGM
- 往年の記憶を呼び起こすノスタルジックな内装
- 長時間の旅でも安心なシャワー設備
「懐かしさ」と「安心・快適さ」を両立させることで、体力に不安を感じやすい高齢者でも無理なく楽しめる旅が設計されています。
安靖から安順へ 春景色をつなぐルート
パンダ列車が走るのは、中国西南部の安靖(四川省成都市の一角)から、景勝地として知られる貴州省の安順までの区間です。春の季節には沿線の山々や田畑が色づき、車窓には緑と花々が広がります。
飛行機のように一気に移動するのではなく、ゆっくりと時間をかけて景色が移ろうのを眺めながら進むことで、旅そのものを楽しむ「スローな移動」が実現されています。特に、高齢の乗客にとっては、急がない旅のリズムが心身の負担を減らし、会話や思い出話を楽しむ余裕を生んでいるようです。
現場を伝えるCGTNの二人 乗客と同じ目線で
このパンダ列車の旅には、中国の国際メディアCGTNのショーン・カレブス氏と万紅佳氏が乗車しました。二人は安靖から安順まで、高齢の乗客と同じ車両で時間を過ごしながら、その様子をライブ形式で伝えました。
車内では、音楽に合わせて手拍子をする人、かつて同じ「緑の列車」で通学や仕事に通っていた頃を思い出す人など、さまざまな表情が見られます。記者たちは、そうした一人ひとりの声に耳を傾け、単なる観光列車の紹介にとどまらない、「世代の記憶」を映し出す番組づくりを試みています。
シニア世代のための旅が示すもの
高齢者向けのパンダ列車は、観光商品という側面だけでなく、社会の高齢化にどう向き合うかという問いも投げかけています。列車を高齢者仕様にするという発想の背景には、次のような視点が見て取れます。
- 年齢を重ねても、安心して遠出できる移動手段へのニーズ
- 「早く着くこと」よりも、「どう旅するか」を重視する価値観の広がり
- かつての生活を支えた公共交通を、今度は思い出の場として再活用する工夫
こうした取り組みは、少子高齢化が進む多くの国や地域にとっても、共通のテーマといえます。鉄道や観光の役割を、移動手段から「世代をつなぐ場」へと拡張していく試みとも読み取れます。
日本の読者へのヒント 「懐かしさ」をデザインする
日本でも、団体旅行から個人旅行まで、高齢者向けツアーは多様化していますが、パンダ列車のように「思い出の乗り物」をベースにした旅には、次のようなヒントが含まれているように見えます。
- スピードよりも、会話や景色を楽しめる時間設計
- 昔を知る世代の記憶を尊重し、懐かしさをあえて前面に出すデザイン
- シャワーや休憩スペースなど、高齢者が自分のペースを保てる設備
高速化・効率化が進むなかで、「あえてゆっくり移動する」ことに価値を見いだす動きは、日本の鉄道や観光のあり方を考える上でも、参考になるかもしれません。
国際ニュースとしての面白さ
国際ニュースというと、政治や経済が中心になりがちですが、今回のパンダ列車のような話題は、各国が直面する共通課題──高齢化社会や移動のあり方──を、やわらかく考えるきっかけを与えてくれます。
列車という身近な公共交通を通じて、高齢者の暮らしや幸福をどう支えるのか。中国西南部を走る一本の列車の試みは、日本を含む他の国や地域にも、静かな問いを投げかけています。
Reference(s):
Live: Ride the 'Panda Train' with seniors and embrace the spring vibes
cgtn.com








