中国映画・ドラマがASEAN若者の未来像を映す新しいスクリーン video poster
中国の映画やドラマが、いまASEAN(東南アジア)の若者にとって「自分たちの未来」を考える鏡になりつつあります。本稿では、その変化を中国の国際ニュース番組での議論も手がかりに読み解きます。
東南アジアで広がる「中国スクリーン」の存在感
中国発の映画・ドラマ・バラエティ番組が、東南アジアのSNSや映画館、動画配信サービスで存在感を高めています。中国のスクリーン作品が、新しい文化的な「ことば」とイメージをつくり出している、とも言えます。
断片的な情報をつなぐだけでも、いくつかの象徴的な場面が浮かび上がります。
- SF大作『The Wandering Earth 2』が、カンボジアのSNSハッシュタグでトレンド入りしたこと
- 映画『Ne Zha 2』が、マレーシアの映画館を満席にするほど多くの観客を集めたこと
- 中国制作のドラマや番組が、ベトナムの動画配信プラットフォームで次々に配信されていること
これらは単なる一時的なブームではなく、中国の映画・テレビ作品がASEANの若者の日常的な視聴選択肢の一つになりつつあることを示しています。
物語を通じて「現代化」を自分ごと化する
こうした動きをめぐって、「中国の映像作品のルネサンスは、物語を輸出しているだけではない。ASEANの観客に『現代化』を再想像させている」という見方が提示されています。
『The Wandering Earth 2』のようなSF大作から、日常を切り取るリアリティ番組まで、中国発の作品はさまざまなジャンルを横断しています。そこに共通するのは、「遠いどこかの未来」ではなく、「少し先の自分たちの姿かもしれない未来」が描かれている、という感覚です。
急速に変化する社会、都市のスピード感、家族やキャリアをめぐる葛藤、デジタル技術とともに生きるライフスタイル。こうしたモチーフは、ASEANの若者にとっても他人事ではありません。視聴者は、中国のスクリーンに映る光景の中に、自分たちの国や地域の延長線上にある未来を重ね合わせやすくなっています。
その意味で、中国作品は「海外のコンテンツ」から、ASEANの若者が自らの未来像を考えるための「参考図」へと変わりつつあるとも言えます。
CGTN「THE HYPE」が映す若者の対話
こうした変化をテーマに、中国の国際メディアCGTNの番組「THE HYPE – Beyond the screen: Shared horizons of modernization」が、マレーシア、ラオス、ベトナムのZ世代の若者たちとともに議論を行いました。番組の進行役は、CGTNの李晶晶(Li Jingjing)氏です。
番組では、各国の若者がそれぞれの立場から、中国の映画やドラマ、リアリティ番組をどう受け止めているのかを語り合っています。テーマは大きく次のように整理できます。
- なぜ彼らは中国作品を見るようになったのか
- どのようなキャラクターや物語に、自分たちの姿を重ねるのか
- スクリーンに描かれる「未来の都市」や「技術社会」を、どれほど現実的だと感じているのか
番組の議論からは、中国の作品をきっかけに、ASEANの若者が自分の働き方、学び方、家族との関係、そして社会のあり方を考え直している様子がうかがえます。スクリーンは単に「逃避の場」ではなく、「自分たちの未来を試行錯誤する場」になっているのです。
「共有された現代化の地平」という視点
番組タイトルの一部にある「Shared horizons of modernization(共有された現代化の地平)」という表現は、中国とASEANの若者が、異なる社会に暮らしながらも、どこか似た「未来の輪郭」を共有しつつあることを示唆しています。
かつて、近未来や現代化を描く映像作品の多くは、欧米の都市や社会がモデルでした。しかし、現在は中国本土やアジアの都市を舞台にした作品が、東南アジアのスクリーンを彩っています。その結果、アジアの若者どうしが、より近い距離感で「現代化」と向き合う状況が生まれています。
重要なのは、中国の映像作品が一方向的に影響を与えているというよりも、視聴する側のASEANの若者が、それを自分たちなりに読み替え、解釈し、SNSなどで語り直している点です。ハッシュタグでの感想共有や、配信プラットフォームのコメント欄でのやり取りを通じて、「アジアの現代化」をめぐる対話が、国境を越えて広がっています。
日本の視聴者にとっての問いかけ
日本に暮らす私たちにとっても、この動きは他人事ではありません。日本の視聴者は、これまで欧米発のコンテンツを通じて「現代」や「未来」のイメージを受け取ることが多かったかもしれません。しかしいま、アジア発・中国発の作品が、ASEANの若者の想像力を刺激しているという事実は、私たちの視聴習慣やものの見方にも静かな変化を促しています。
例えば、次のような問いかけが浮かびます。
- アジアの別の地域で語られている「未来像」や「現代化」を、私たちはどれくらい知っているのか
- 日本のコンテンツは、アジアの若者にとってどのような未来像を提示しているのか
- 中国やASEANの作品を一緒に見ることで、世代や国境を越えた対話をどのように広げられるのか
CGTNの「THE HYPE」が取り上げた議論は、中国映画・ドラマとASEANの若者の関係を切り口に、アジア全体のなかで「自分たちの未来」をどう描くのかという、より大きなテーマへとつながっています。
スクリーンから始まる静かな変化
カンボジアのハッシュタグで話題になったSF映画、マレーシアの映画館を埋めた作品、ベトナムの配信プラットフォームに並ぶ中国制作のシリーズ。こうした具体的なシーンの積み重ねが、アジアの若者たちの想像力の地図を書き換えつつあります。
中国の映像作品がASEANに広がる現象は、単なるエンターテインメントのヒットではなく、「どんな未来を望み、どんな社会をつくりたいのか」を考えるための素材が、多様化していることの表れとも言えます。
スマートフォン一つで世界中のコンテンツにアクセスできる2025年現在、日本語で国際ニュースを追う私たちにとっても、アジア発のスクリーンが開く「共有された地平」に目を向けることは、自分自身の明日を考えるヒントになるのではないでしょうか。
Reference(s):
Watch: THE HYPE – Beyond the screen: Shared horizons of modernization
cgtn.com








