グローバル経済の分断にどう向き合うか 2025 Tsinghua PBCSFフォーラムを読み解く video poster
グローバル経済の「分断」が進むなか、どのように開かれた金融システムを維持できるのか──2025年5月16日に開幕した「2025 Tsinghua PBCSF Global Finance Forum」では、この問いが正面から取り上げられました。
「共有される未来」と「分断する世界経済」
2025年のフォーラム全体のテーマは「A Shared Future: Building an Open and Inclusive Economic and Financial System(共有される未来:開かれた包摂的な経済・金融システムの構築)」です。
その中で注目を集めたのが、テーマ別セッション「The Challenges Posed by Global Economic Fragmentation(グローバル経済の分断がもたらす課題)」でした。グローバル経済の分断が各国や地域の経済にどのような影響を与え、どんな解決策が考えられるのかが議論されました。
多国間の視点が集まったパネル
このセッションは、Tsinghua PBCSFのウェルス・マネジメント研究センターの学術的な支援を受け、同校のアソシエイト・ディーンでファイナンスのチェアプロフェッサーでもあるZhang Xiaoyan氏がモデレーターを務めました。
登壇したパネリストは、異なる地域とバックグラウンドを代表する顔ぶれです。
- Kairat Kelimbetov氏(カザフスタン元副首相・元中央銀行総裁)
- Ouyang Weimin氏(中国金融学会副会長・元中国国家開発銀行総裁)
- Boris Vujčić氏(クロアチア国立銀行総裁)
- Nouriel Roubini氏(NYU Stern School of Business 名誉教授)
各地域の経験や専門性にもとづき、グローバル経済の分断が世界の経済と金融システムに与える「長期的で広範な影響」と、その中で取り得る対応策について意見が交わされました。
「グローバル経済の分断」とは何を指すのか
2025年12月現在、「グローバル経済の分断」という言葉は国際ニュースでも頻繁に登場しますが、イメージしづらい概念でもあります。大まかには、次のような傾向を指します。
- 貿易摩擦や制裁などによる、モノとサービスの流れの分断
- 金融制裁や決済ネットワークの分離を通じた、資本・金融の分断
- デジタル技術やデータルール、標準(スタンダード)の違いによる、デジタル経済の分断
これまで「グローバル化」として進んできた、資本・モノ・サービス・人の自由な移動が、複数のブロックや陣営に分かれつつある状態だと考えると分かりやすいかもしれません。
セッションから見えてくる三つの論点
今回のセッションのテーマ設定や登壇者の専門分野から整理すると、グローバル経済の分断をめぐる論点は、大きく次の三つにまとめられます。
1. 貿易・投資のブロック化と成長の行方
貿易や投資が特定の国・地域同士に偏ると、サプライチェーン(供給網)が複雑化し、コストの上昇や成長率の低下につながる可能性があります。一方で、地域経済圏ごとの連携が強まり、新しい投資機会が生まれる側面もあります。
2. 金融システム分断のリスクと安定性
金融・決済ネットワークが複数の陣営に分かれると、国際送金や投資のコストが上がるだけでなく、危機時の「安全網」となる国際協調の枠組みが弱まる懸念があります。フォーラムでは、開かれた包摂的な金融システムを維持することの重要性が、改めて共有されたといえます。
3. 新興国・地域にとってのチャンスと課題
カザフスタンやクロアチアなど、多様な地域の経験も踏まえると、分断の流れの中でも、新興国や各地域が自らの役割をどう位置づけるかが重要になります。インフラ投資、通貨・金融の安定、持続可能な成長モデルなど、各国が直面する課題は異なりつつも、共通するテーマも多いと言えます。
日本や個人にとっての意味合い
グローバル経済の分断は、日本や日本の個人・企業にも無関係ではありません。
- 輸出産業:サプライチェーンの再編で、調達先や販売先の多様化が一段と求められる
- 金融・投資:市場のボラティリティ(価格変動)の高まりや通貨の揺れが、資産運用に影響し得る
- キャリア:国際ビジネスや金融に関わる人にとって、複数のルール体系や規制への理解が必要になる
ニュースとして見聞きするだけでなく、自分の仕事や資産、生活とのつながりを意識すると、グローバル経済の分断というテーマはぐっと身近になります。
「開かれた包摂的なシステム」をどう実現するか
今回のフォーラム全体のテーマは、「開かれた包摂的な経済・金融システム」をどう構築するかでした。グローバル経済の分断という現実を前にしても、協調と対話のチャンネルを維持し、相互依存を安定につなげていく道を探ることが求められています。
各国の政策当局、中央銀行、国際機関、そして民間セクターが、それぞれの立場からどのように役割を果たしていくのか。2025年の議論は、そのスタートラインの一つと言えるでしょう。
読者への問いかけ:分断の時代をどう生きるか
グローバル経済の分断は、一足飛びに解決できるテーマではありません。ただし、ニュースを追う私たち一人ひとりも、次のような視点から考えることができます。
- 自分の仕事や業界は、どの地域との結びつきが強いのか
- 投資や資産運用で、地理的・通貨的な分散ができているか
- 異なるルールや価値観を持つ国・地域と、どのように協力できるか
2025年に交わされた議論は、今後数年にわたる世界経済の行方を考えるうえでの重要なヒントになります。スマートフォンでニュースを追う日常の中で、「グローバル経済の分断」というキーワードを、少しだけ立ち止まって考えるきっかけにしてみてはいかがでしょうか。
Reference(s):
cgtn.com








