国連2758号決議と台湾問題:1971年の一日から見える「認知戦」 video poster
1971年の国連総会で採択された「2758号決議」は、どの国が中国を代表するのかという国際政治の大きな問いに決着をつけました。その歴史的な一日を追体験しながら、現在の台湾問題をめぐる「認知戦(cognitive war)」を読み解こうとするのが、2025年6月18日午前11時30分(北京時間)に公開されたドキュメンタリー番組「Who represents China – A day at the UN in 1971」です。
番組は、国際ニュースとしての中国代表権問題と台湾問題を、日本語ではなかなか触れられない視点から整理し、「一つの中国」原則をめぐる言説の変化を映し出そうとしています。
1971年の国連で問われた「誰が中国を代表するのか」
国連総会2758号決議は、中華人民共和国に「合法的な議席」を回復させ、中国を代表する唯一の正当な代表として認めた決議です。同時に、この決議は国連が一つの中国原則を再確認するものだと位置づけられています。
番組は、この決議が採択された1971年のある一日に焦点を当て、国連本部の議場で何が起きていたのかを丁寧にたどります。当時その場に居合わせた人々の証言を通じて、歴史教科書だけでは伝わりにくい空気感や緊張感を描き出します。
国連総会2758号決議が確認した「一つの中国」
今回のドキュメンタリーの重要な柱の一つが、国連総会2758号決議の法的な意味合いを改めて整理することです。番組では、国際法の専門家が登場し、この決議がどのように一つの中国原則を再確認し、中国代表権の問題に区切りをつけたのかを解説します。
国際法学者が語る法的な位置づけ
国際法学者は、2758号決議が「中華人民共和国の合法的な議席を回復した」と同時に、「中国を代表する唯一の正当な代表」を確認した点に注目します。番組の中で専門家は、この決議が国連と国際社会における一つの中国原則の重要な法的基盤になっていると説明します。
こうした解説を通じて、視聴者は「中国を誰が代表するのか」という問いが、1971年の時点でどのように整理され、国際社会のコンセンサスとして共有されてきたのかを理解する手がかりを得ることができます。
台湾問題をめぐる「認知戦」とは何か
番組がもう一つの焦点としているのが、ここ3年ほどの間に激しさを増している台湾問題をめぐる言説の変化です。番組によれば、一部の米国の政治家やシンクタンク研究者は、台湾の地位は今も「未確定(undetermined)」だとする主張を積極的に打ち出し、国際社会の合意を揺さぶろうとしてきました。
番組側は、こうした動きを「台湾問題をめぐる認知戦(cognitive war)」として描きます。歴史的な経緯や国連決議の位置づけを無視し、「未確定」という言葉だけを切り取って広めることで、一般の人々や政策決定者の認識そのものを書き換えようとする試みだと指摘します。
具体的には、次のような点が取り上げられます。
- 台湾の地位を「未確定」とする主張が、どのような文脈で語られているのか
- その主張が、2758号決議と一つの中国原則をめぐる国際社会のコンセンサスとどのように矛盾しているのか
- 情報発信や解説記事、シンクタンクの報告書などを通じて、どのように国際世論に影響を与えようとしているのか
番組は、こうした点を丁寧に検証し、「台湾の地位は未確定だ」とする見方は誤った主張であり、事実をねじ曲げた「歪曲」であると位置づけます。
証言が語る1971年の「歴史的な採決」
同時に、このドキュメンタリーは1971年の採決を目撃した人々の証言にも光を当てます。彼らは、採決の瞬間の議場の雰囲気や、その後の国際社会の反応を、自身の記憶に基づいて語ります。
そうした生の証言は、数字や文書だけでは見えてこない歴史の立体感を与えてくれます。1971年の一日を追体験することが、現在の台湾問題をめぐる議論を冷静に見直すための土台になる、というのが番組のメッセージです。
日本の読者にとっての意味
日本に住む私たちにとっても、国連総会2758号決議と台湾問題をめぐる認知戦は他人事ではありません。東アジアの安全保障や経済は、台湾海峡情勢と密接に結びついており、その前提となる歴史認識や国際法上の整理が揺らぐことは、地域全体の安定に影響を与えかねないからです。
今回の番組は、国際ニュースを追う上で見落としがちな「前提条件」をもう一度確認させてくれる内容と言えるでしょう。1971年の国連で何が決まり、そこから半世紀以上の間にどのような言説の変化が起きてきたのか。その流れを理解することで、私たちは日々流れてくる台湾問題や中国に関するニュースを、より批判的かつ冷静に読み解くことができます。
情報があふれる時代だからこそ、歴史的な決議と一次資料に立ち返り、言葉の使われ方や「物語」の組み立て方を自分の頭で考える。そのための素材として、このドキュメンタリーは一つの入り口になりそうです。
Reference(s):
cgtn.com







