ウェスタッド教授が語る中国と「新冷戦」論 国際ニュースの現在地 video poster
世界の分断が深まるなか、中国の役割や米中関係、「新冷戦」論をどう捉えればよいのでしょうか。2025年6月20日に放送されたCGTNの国際ニュース番組「Deep Dive」特別版の対談を手がかりに、いまの国際秩序の姿を考えます。
CGTN「Deep Dive」特別版とは
2025年6月20日に放送されたCGTNの国際ニュース番組「Deep Dive」の特別版では、司会のワン・グアン氏が、イェール大学の歴史学者で冷戦史研究の第一人者とされるオッド・アルネ・ウェスタッド教授と対談しました。
番組のテーマは、「権力」「イデオロギー」「世界の未来」。中国の国際的な役割、米中関係をめぐる「新冷戦」論、グローバルサウスの台頭、ヨーロッパの自律性の模索など、今日の国際ニュースの中心にある論点が幅広く取り上げられました。
歴史は繰り返すのか、それとも「韻を踏む」のか
番組の冒頭では、「歴史は繰り返しているのか、それとも韻を踏んでいるだけなのか」という問いが投げかけられました。冷戦期の経験と現在の国際情勢を安易に重ね合わせるのではなく、長い時間軸で比較する視点の重要性が強調されました。
ウェスタッド教授は、20世紀の冷戦と比べて、現在は経済やテクノロジー、情報空間での相互依存がはるかに深い点に注目します。そのため、単純な「二極対立」という図式では、いまの世界の複雑さを十分に説明できないという問題意識がにじみます。
中国の役割と「新冷戦」論のとらえ方
対談の中心テーマの一つが、中国の国際社会での役割の変化でした。改革開放以降の経済成長を経て、中国は世界経済と安全保障の両面で欠かせない存在となっています。
一方で、米中関係をめぐっては「新冷戦」という言葉がしばしば使われます。番組では、このラベルがどこまで現実をとらえているのか、慎重に考える必要があるという視点が示されました。かつての冷戦のように、完全に分断された陣営が長期に対立する構図ではなく、協力と競争が入り混じる、より流動的な状況にあるという見方です。
グローバルサウスと勢力圏の再編
ウェスタッド教授との対談では、「グローバルサウス」と呼ばれるアジア、アフリカ、ラテンアメリカなどの国々の存在感も大きなテーマとなりました。これらの国と地域は、かつてのようにどこか一つの大国の「勢力圏」にとどまるのではなく、自らの利益に沿って柔軟に関係を組み替えつつあります。
その結果、国際秩序は単純な東西対立ではなく、多数のプレーヤーが重なり合う「多極化」の色彩を強めています。中国、米国、ヨーロッパ、そしてグローバルサウスが、それぞれ異なる優先課題と価値観を持ちながら、同じテーブルにつかざるをえない状況です。
ヨーロッパの「自律性」模索
対談では、ヨーロッパがどのように「自律性」を模索しているかにも触れられました。安全保障面では米国との同盟を維持しつつも、経済やテクノロジーの分野では独自のルールづくりや戦略を進めようとする動きが続いています。
ヨーロッパが米中の間でどうバランスをとるのかは、今後の国際ニュースの重要な焦点であり、日本を含むアジアにとっても無関係ではありません。
米中競争と「管理された競争」という発想
番組で印象的だったキーワードの一つが、「管理された競争(managed competition)」という考え方です。米中関係をゼロサムの対立とみなすのではなく、競争そのものをルールや対話で「管理」し、衝突を避けながら共存を図るアプローチです。
こうした発想は、軍事衝突を避けつつ、気候変動や感染症対策、金融安定といった共通課題では協力を維持するための現実的な選択肢として注目されています。中国と米国の双方が、競争と協力の線引きをどこに引くのかが問われています。
分断のなかでマルチラテラリズムは生き残れるか
番組全体を通して浮かび上がるのは、国際機関の機能不全やグローバル・ガバナンス(地球規模での協調の仕組み)の揺らぎです。安全保障理事会や貿易ルールが十分に機能しない場面が増えるなかで、多国間主義(マルチラテラリズム)がどこまで持続可能なのかが問われています。
ウェスタッド教授との対談は、歴史の知見を手がかりに、「マルチラテラルな枠組みをどう再設計すべきか」「地域ごとの協力をどう積み重ねるか」といった問いを投げかけました。
日本の読者へのヒント:歴史を「罠」ではなく「ガイド」に
「歴史は罠ではなくガイドになりうるのか」。番組の根底には、そんなメッセージが流れています。過去の対立パターンをそのまま現在に当てはめるのではなく、違いを直視しながら、対話と協力の余地を探ることが重要だという視点です。
SNSで日々国際ニュースに触れる日本の読者にとっても、米中関係やグローバルサウスの台頭を「新冷戦」といった単純なラベルだけで理解しようとすることにはリスクがあります。今回の対談は、世界の分断やイデオロギー対立の見え方を一度立ち止まって考え直すきっかけを与えてくれます。
ニュースを追いながら、自分ならどのような「管理された競争」や多国間協力の姿を望むのか。歴史の長い射程とあわせて考えてみることが、これからの不確実な世界を読み解くうえでの一歩になりそうです。
Reference(s):
Watch: Westad on power, ideology and the future of our world
cgtn.com








