サマーダボス2025特別セッションで語られたAI時代のキャリアパス video poster
エージェンティックAI(agentic AI)と呼ばれる新しいタイプの人工知能が、新卒や若手の「最初の仕事」を揺さぶっています。2025年夏に開かれたサマーダボス会議の特別セッション「Career Pathways: Rewired」では、このAI時代に若者のキャリア機会をどうつくるかが集中的に議論されました。
サマーダボス2025特別セッション「Career Pathways: Rewired」とは
今回の国際ニュースの舞台となったのは、世界の経済・社会課題が話し合われるサマーダボス会議の一幕です。中国の国際メディアであるCGTNの関欣(Guan Xin)氏がモデレーターを務め、次の3人が登壇しました。
- 張丹丹氏:北京大学・国家発展研究院の教授兼副院長
- ラフル・アトゥルリ氏:NxtWave共同創業者兼CEO
- ジョルジナ・モンディーノ氏:Global Shapers Community・ロサリオ・ハブ代表
セッションのタイトルは「Career Pathways: Rewired」。直訳すれば「キャリアの配線をつなぎ直す」といった意味で、従来の終身雇用や年功序列といったモデルでは説明しきれない、新しいキャリアの形がテーマとなりました。
エージェンティックAIとは何か:単なる自動化以上の存在
議論の出発点になったのが、エージェンティックAIです。これは、指示に反応するだけでなく、自律的にタスクを分解し、判断し、継続的に実行していくタイプのAIを指します。
こうしたエージェンティックAIは、これまで新人や若手が担当してきた次のような業務に入り込んでいます。
- 資料作成やリサーチ、簡単なデータ分析
- 定型的なメール対応やカスタマーサポート
- 基本的なコード作成やテスト作業
結果として、従来は「まずはここから」とされてきたエントリーレベルの仕事が変質し、若い人がキャリアの第一歩をどこから踏み出せばいいのかが見えにくくなっています。
若者のキャリアはどう変わるのか:リスクとチャンス
サマーダボス2025の特別セッションでは、エージェンティックAIが若者の雇用に与える影響が、リスクとチャンスの両面から語られました。
リスクとして意識されているのは、次のような点です。
- 「経験を積むための仕事」がAIに置き換わり、実務経験の機会が減る
- AIがこなせる定型業務だけで評価されると、人材の差が見えにくくなる
- AIスキル格差が、そのままキャリア格差につながる可能性
一方で、新しい機会も生まれつつあります。
- AIを使いこなすことで、少人数でも大きなプロジェクトを動かせる
- 年齢に関係なく、アイデアや企画力で勝負しやすくなる
- 世界どこからでもオンラインで学び、働く選択肢が広がる
ポイントは、AIに「仕事を奪われる側」ではなく、「AIと一緒に仕事を設計する側」に回れるかどうかだと言えます。
大学・スタートアップ・若者コミュニティ、それぞれの視点
今回のパネルの特徴は、バックグラウンドの異なる3人が同じテーマを語ったことです。大学、スタートアップ、若者コミュニティという3つの立場から、次のような視点が提示されました。
- 教育・研究の視点:AI時代に必要なのは、単なるスキルではなく「学び続ける力」や、社会課題を見つける力だという問題提起。
- スタートアップの視点:AIを前提にビジネスを設計すれば、若い人でも短期間で価値を生み出せること、ただし実践的なトレーニングの場が重要であること。
- 若者コミュニティの視点:AIへの期待と不安が入り混じるなかで、安心して試行錯誤できるコミュニティやメンタリングの重要性。
国や地域によって労働市場の環境は異なりますが、「AIが前提の世界で、若い世代がどう主体性を持てるか」という問いは共通していることが浮き彫りになりました。
日本の若い世代にとっての3つのヒント
サマーダボス2025の議論は、日本でキャリアを考える私たちにとっても示唆に富んでいます。newstomo.comの読者向けに、考えるヒントを3つに整理します。
- 1. 「AIに置き換えられやすい仕事」を見極める
単純な反復作業や、明確なルールに従うだけの業務は、エージェンティックAIが得意とする領域です。就職活動や転職を考える際には、「その仕事のどの部分がAI化されそうか」を一度分解して考えることが有効です。 - 2. AIと組む前提でスキルを磨く
プログラミングでなくても、文章作成、マーケティング、デザインなど、多くの領域でAIツールが使われています。「AIに任せる部分」と「自分が担う部分」を意識しながら、ツールを使いこなす練習をしておくことが、実務に入ったときの差につながります。 - 3. キャリアを「一本のレール」ではなく「ポートフォリオ」として捉える
セッションのタイトルが示すように、キャリアの配線は一度決めたら終わりではなく、何度でもつなぎ直す時代になりつつあります。本業に加え、副業、プロジェクト、コミュニティ活動など、複数の経験を組み合わせていく発想がより重要になりそうです。
AI時代のキャリアを自分ごととして考える
2025年のサマーダボス会議でのこの特別セッションは、エージェンティックAIが進むこれからの10年を考えるうえで、象徴的なテーマを提示しました。それは、テクノロジーの進化を恐れるかどうかではなく、「どのように付き合い、自分のキャリアに組み込むか」を問うものです。
日本語で国際ニュースを追う読者にとっても、この議論は決して遠い世界の話ではありません。通勤時間の数分でニュースをチェックする習慣の中に、「自分ならAIとどう働くか」という問いをひとつだけでも加えてみる。そんな小さな一歩から、AI時代のキャリアパスは静かに「リワイヤード」されていくのかもしれません。
Reference(s):
Watch: Summer Davos special session – 'Career Pathways: Rewired'
cgtn.com








