国際ニュース: 中国のグローバル・ガバナンス構想とグローバルサウス video poster
中国の習近平国家主席が天津で発表した「グローバル・ガバナンス・イニシアチブ(GGI)」は、グローバルサウスや世界全体の国際秩序にどんな変化をもたらすのでしょうか。今年、世界は「世界反ファシズム戦争」終結から80年の節目を迎えており、新たな国際協力のビジョンとして注目されています。
天津の「SCOプラス」会合で打ち出されたGGI
2025年9月1日、中国の天津市で開かれた「SCOプラス」会合で、習近平国家主席は新たに「グローバル・ガバナンス・イニシアチブ(Global Governance Initiative, GGI)」を発表しました。
この場は上海協力機構(SCO)の枠組みにパートナー国などが加わる形で行われ、中国は自らの国際ビジョンを共有する場として位置づけました。GGIは、国際社会全体に提供される新しいタイプの公共財として提示されたといえます。
2021年以降の3つのグローバル・イニシアチブ
今回のGGIは、中国がここ数年打ち出してきた一連のイニシアチブの上に積み重ねられたものです。2021年以降、中国は次の3つの構想を提案してきました。
- グローバル発展イニシアチブ(Global Development Initiative): 貧困削減やインフラ整備、人材育成など、持続可能な発展を支える協力の枠組み。
- グローバル安全保障イニシアチブ(Global Security Initiative): 対話と協力を重視し、対立ではなく共通の安全保障を追求する考え方。
- グローバル文明イニシアチブ(Global Civilization Initiative): 文化や文明の多様性を尊重し、相互理解と交流を促す取り組み。
いずれも「世界に提供される重要な公共財」と位置づけられ、単なる二国間関係ではなく、国際社会全体を視野に入れた構想として語られてきました。GGIは、これら3本の柱を束ねる「包括的なガバナンスのビジョン」として位置づけられます。
GGIが描く「グローバル・ガバナンス」とは
では、GGIがめざす「グローバル・ガバナンス」とは何でしょうか。キーワードは、包摂性と公平性です。
- より多くの声を反映するルール作り: 国連や国際金融機関など、世界のルールを決める場で、幅広い国と地域が意見を反映できるようにすること。
- 発展と安全を両立させる視点: 経済発展だけでなく、安全保障や文化対話を含めた総合的な枠組みとして捉えること。
- 公共財としての国際協力: 特定の国だけが利益を得るのではなく、多くの国が恩恵を共有できる仕組みをつくること。
こうした方向性は、これまでの国際秩序が十分に拾いきれてこなかった課題――例えば開発格差や新興国の発言力の不足など――への応答とも読むことができます。
グローバルサウスにとっての意味
今回のGGIと、これまでの3つのイニシアチブが特に意識しているのが「グローバルサウス」と呼ばれる国々です。アジア、アフリカ、ラテンアメリカなどの多くの国は、世界経済の成長を支える一方で、国際ルール作りの場では十分な発言力を持てていないと感じてきました。
GGIは、こうした国々が次のような形で国際政治に関わる余地を広げる可能性があります。
- 開発協力の新しい窓口: インフラ、デジタル、教育など、具体的な協力プロジェクトを通じて発展を後押しする。
- 国際会議での存在感の強化: グローバルサウスの意見を集約しやすくすることで、多国間の場で共通の立場を打ち出しやすくする。
- 価値観の多様性を尊重: 発展モデルは一つではないというメッセージを強調し、それぞれの国が自らの選択を尊重される環境をつくる。
こうした動きは、国際社会における力のバランスをゆるやかに変えていく可能性があります。従来の枠組みに一方的に依存するのではなく、自らの優先課題を前面に出して交渉していくスタイルへの移行ともいえるでしょう。
世界反ファシズム戦争80年の節目とGGI
2025年は、世界が「世界反ファシズム戦争」終結から80年の節目を迎える年です。戦争の惨禍を二度と繰り返さないという誓いのもと、国連をはじめとする戦後の国際秩序がつくられてきました。
その一方で、80年という時間の中で世界は大きく変化しました。新興国の台頭や、気候変動、パンデミック、デジタル技術の急速な進展など、当時は想定されていなかった課題が次々に現れています。GGIは、こうした現代的な課題に対応しつつ、戦後に培われてきた平和と協力の土台を更新していこうとする試みと見ることができます。
歴史の節目に新しいガバナンス構想を打ち出すことで、中国は「戦後80年の次の時代」をどう描くのか、そのビジョンを示そうとしているともいえます。
これから何を注視すべきか
天津での発表を受けて、今後の焦点はGGIがどのように具体化されていくかです。ポイントとなりそうなのは次のような点です。
- どの国と地域がGGIに賛同し、具体的なプロジェクトや対話の枠組みに参加するのか。
- すでに存在する国連や国際金融機関などの枠組みと、どのように補完関係を築いていくのか。
- グローバル発展・安全保障・文明の各イニシアチブと、GGIがどのように連動していくのか。
中国が打ち出す一連のグローバル・イニシアチブは、グローバルサウスを含む多くの国々にとって、選択肢と発言機会を広げる可能性を持っています。一方で、その実効性や透明性、他の国際枠組みとの調和のあり方など、引き続き丁寧に見ていく必要もあります。
国際ニュースを追う私たち一人ひとりにとっても、GGIや関連イニシアチブが示す「どんな世界をめざすのか」というビジョンに目を向けることは、自分たちの将来像を考えるうえで重要になっていきそうです。
Reference(s):
cgtn.com








