UNESCO、レバノン古代遺産への「強化保護」検討 イスラエル攻撃のニアミス受け
国連の文化機関であるUNESCO(国連教育科学文化機関)が、レバノンの古代遺産に対する「強化保護」の付与を検討すると表明しました。イスラエルによる攻撃が歴史的遺跡のごく近くに着弾する「ニアミス」が相次ぎ、レバノンの議員らが国際社会に緊急の保護を訴えたことを受けた動きです。
レバノンの遺跡が「かろうじて無事」の状況に
UNESCOによると、レバノン各地の古代遺跡の近くで、イスラエルの攻撃が相次いで着弾し、直接の被害は避けられたものの、危険な状況が続いています。世界的に知られた歴史遺産が「たまたま無事だった」に過ぎないケースもあり、現場では危機感が高まっています。
こうした中、レバノンの国会議員らはUNESCOに対し、文化遺産を守るための「強化保護」を求める正式な要請を行いました。彼らは、今後もし攻撃がわずかにそれるだけでも、取り返しのつかない損失が生じかねないと警告しています。
UNESCOの「強化保護」とは何か
UNESCOが検討している「強化保護」とは、武力衝突などの危険にさらされている文化遺産について、国際社会として特に高いレベルの注意と支援を集中させる枠組みです。実際の中身は状況に応じて異なりますが、一般的には次のような措置が含まれます。
- 文化遺産の状況を継続的にモニタリングし、被害の兆候を早期に把握する
- 緊急時の修復や記録保存のための専門家派遣や技術支援を行う
- 関係する当事者に対して、文化遺産を攻撃目標から外すよう強く呼びかける
- 文化遺産周辺での軍事行動を慎重に行うよう国際的な注目を集める
重要なのは、「強化保護」が軍事的な防御ではなく、国際社会による強い監視と政治的・道義的圧力を通じて、文化遺産を守ろうとする枠組みだという点です。UNESCOがこの制度の適用を検討すると表明したことは、レバノンの遺跡が直面するリスクが、国際的に見ても深刻だと受け止められているサインだといえます。
なぜ文化遺産は武力衝突のたびに危機に陥るのか
レバノンには、古代文明の遺跡や歴史的な宗教施設など、人類共通の財産ともいえる文化遺産が数多く存在します。しかし、武力衝突や緊張の高まりのたびに、こうした建造物や遺跡は、直接の標的でない場合でも「巻き添え」で壊されるリスクにさらされます。
文化遺産が失われることは、単に観光資源が失われるという問題にとどまりません。その土地の人々の記憶やアイデンティティ、歴史へのつながりが断ち切られてしまうことを意味します。また、人類全体の歴史を理解するための手がかりも失われてしまいます。
こうした考え方から、文化財保護は国際人道法(戦時国際法)の一部としても位置づけられており、戦闘当事者には文化財を保護する義務があります。UNESCOの「強化保護」は、その原則を具体的な行動につなげるための仕組みだといえます。
国際社会に問われる「壊される前に守る」姿勢
今回、レバノンの議員たちは、実際に遺跡が破壊されてからでは遅いとして、被害が出る前の段階でUNESCOに対策を求めました。これは「復元」よりも「予防」を重視する姿勢であり、文化遺産保護の議論でも近年、重要性が増している視点です。
日本を含む国際社会にとっても、この動きは他人事ではありません。地震や洪水などの自然災害に加え、サイバー攻撃やテロなど、文化施設を脅かすリスクは多様化しています。遠い中東のニュースであっても、「壊される前に守る」という考え方は、私たち自身の文化や記憶をどう守るかという問いにそのまま返ってきます。
これから何が注目ポイントになるのか
今後の焦点は、UNESCOがレバノンの要請をどのように具体化し、どの遺跡にどの程度の「強化保護」を適用していくのかという点です。また、関係する当事者がUNESCOの呼びかけにどこまで応じ、文化遺産周辺での軍事行動の自制をどの程度実行に移すのかも重要なポイントになります。
レバノンの古代遺産は、レバノンの人々だけでなく、人類全体の歴史を物語る「共有財産」です。今回のUNESCOの動きが、文化を守るために武力衝突のルールを見直すきっかけとなるのか、今後の展開が注目されます。
Reference(s):
UN to consider 'enhanced protection' as Lebanon warns heritage at risk
cgtn.com








