欧州安全保障を「自前」で ブダペストEPCサミットで見えた転換点
ハンガリーの首都ブダペストで開かれた第5回「欧州政治共同体(EPC)」サミットで、欧州の指導者たちが「安全保障を米国だけに頼らず、欧州自身がより大きな責任を担うべきだ」という方向性で一致しました。欧州安全保障のあり方をめぐる議論が、一段と現実味を帯びてきています。
第5回EPCサミットの焦点:欧州が自らの安全を守る時代へ
サミット後の記者会見でハンガリーのオルバン首相は、「欧州は米国にのみ依存するのではなく、自らの安全保障に対してより大きな責任を負う必要がある」と強調しました。これは、欧州が自前の防衛・安全保障体制をどこまで構築できるかという、長年の議題に改めて焦点が当たったことを意味します。
今回の会合には、ほぼ50の欧州諸国と国際機関の代表が参加し、1日の集中討議で次のようなテーマが取り上げられました。
- 不規則な移民(正規ルートによらない移動)の増加
- 欧州全体の安全保障と紛争のリスク
- 大陸内外の「つながり」(交通・エネルギー・デジタルなど)の強化
オルバン首相は、特に安全保障分野で「欧州主権」「欧州の自立」をキーワードとして掲げ、政治的なメッセージを打ち出しました。
ウクライナ、中東、移民…同時多発する「危機」への問題提起
オルバン首相は、現在の欧州を取り巻く環境について、複数の「同時進行の危機」が重なっていると指摘しました。具体的には、次のような要因です。
- 続いているウクライナでの紛争
- 中東情勢の緊張の高まり
- 違法な移民問題の長期化
- 冷戦後で前例がないほどの世界経済の分断
同首相は、「戦争か平和か」「移民か安全か」「分断か『つながり』か」「従属か欧州の主権か」といった対立軸を挙げ、欧州がいま大きな選択を迫られていると語りました。ここには、欧州が単にリスクに反応するだけでなく、自ら戦略を描くべきだという問題意識がにじみます。
「米国頼み」からの転換は実現するか
ハンガリーは現在、欧州連合(EU)の議長国を務めています。その立場からオルバン首相は、サミットで一定のコンセンサスが得られたポイントとして、次の3点を挙げました。
- 直近の米国大統領選の結果への対応が欧州にとって重要であること
- 欧州での紛争に対して迅速な和平努力が必要であること
- 安全保障を米国だけに依存せず、欧州自身がより責任を負う必要があること
これらは、欧州の政界で以前から議論されてきたテーマですが、「欧州だけでは安全を守れない」という諦めではなく、「どうすれば自らの役割を広げられるか」を真剣に検討する段階に入ったことを示しています。
同時に、欧州の安全保障は依然として米国との協力関係に大きく支えられているのも事実です。「自立」と「同盟」のバランスをどう取るのかは、今後も欧州政治の重要な争点であり続けるでしょう。
EPCという「緩やかな場」が持つ意味
今回の議論の舞台となった欧州政治共同体(EPC)は、2022年に設立された比較的新しい枠組みです。EU加盟国だけでなく、非加盟国も含む欧州諸国が一堂に会し、政治対話と協力を進めることを目的としています。
アルバニアのラマ首相は、共同記者会見でEPCの特徴について、「エネルギーと自由度の高いフォーマット」だと評価しました。形式的な交渉よりも、敏感なテーマも含めて率直に話し合える場であることが強みだと強調しています。
またラマ首相は、現在のEUと非EU欧州諸国の関与の深さについて、「数年前には想像できなかったレベルだ」と述べ、欧州全体の対話が質・量ともに変化しているとの認識を示しました。
EPCサミットは年2回、EU加盟国と非加盟国で持ち回り開催されており、「欧州をどう守り、どうつなぐか」を幅広い国々が共に議論する場として定着しつつあります。
西バルカンとEU拡大:アルバニアの期待
今回のサミットでは、欧州安全保障と並行して、EU拡大、とりわけ西バルカン諸国の将来も重要なテーマとなりました。ラマ首相は、自国アルバニアの欧州での位置づけについて、前向きな見通しを示しています。
同首相は、ハンガリーが議長国として果たしている役割に謝意を示しつつ、「直接的なEU加盟交渉を開始するうえで、ハンガリーの支援は不可欠だ」と述べました。そのうえで、アルバニアを含む西バルカン諸国が「今後10年のうちにEUに加盟できることを望んでいる」と語り、長期的な目標としての加盟への期待を明らかにしました。
欧州の安全保障をめぐる議論は、単なる軍事・防衛の問題にとどまらず、「どの国が欧州の意思決定に参加するのか」という政治的な枠組みの問題とも密接に結びついています。西バルカンの行方は、その象徴的なテーマと言えるでしょう。
これからの欧州:日本からどう見るか
欧州各国が「自前の安全保障」を模索する動きは、日本にとっても他人事ではありません。米国との同盟に依存しつつ、どこまで自国や地域で安全保障を担えるのかという問いは、アジアにも共通する論点です。
ブダペストでのEPCサミットは、欧州がその問いに対して一歩踏み込んだ議論を始めたことを示しています。今後、欧州がどこまで責任と役割を引き受けるのか、そして米国や周辺地域との関係をどう再構築していくのかは、2025年以降の国際情勢を読み解くうえで重要なポイントとなりそうです。
Reference(s):
European leaders commit to taking more responsibility for own security
cgtn.com








