ベイルート空爆への報復でヒズボラがテルアビブ近郊にロケット攻撃
イスラエルによるベイルート空爆で少なくとも29人が死亡した翌日、レバノンのヒズボラがテルアビブ近郊に大量のロケット攻撃を行い、中東情勢は停戦協議が進むなかで緊張が一段と高まっています。
- イスラエル軍のベイルート空爆で死者29人、住宅2棟が倒壊
- ヒズボラがイスラエル側に約250発のロケット、テルアビブ近郊の住宅地にも着弾
- 米国主導の停戦案をめぐり、イスラエル側の対応は依然不透明
- EUはレバノン軍支援として2億ユーロ拠出の用意
テルアビブ近郊にロケット着弾、住宅が炎上
レバノンのヒズボラ運動は、イスラエルによる前日のベイルート空爆への報復として、日曜日にイスラエル各地へ重ロケット弾による一斉攻撃を行いました。ヒズボラ側は、テルアビブとその周辺にある2か所の軍事施設に対して精密ミサイルを発射したと主張しています。
イスラエル軍によると、ヒズボラは約250発のロケットを発射し、多くは防空システムによって迎撃されたものの、一部が住宅地に着弾しました。テルアビブ東側の都市ペタフ・ティクワ周辺では複数の着弾が確認され、警察によれば数人が軽傷を負いました。
イスラエル軍は、ある住宅街で家々が炎と瓦礫に包まれたと説明していて、テレビ映像には、ロケット攻撃で損傷したマンションの様子が映し出されました。北部のナハリヤでは、建物の屋根に飛来した弾頭が爆発する映像も確認されています。
イスラエル軍の発表では、今回の一連の攻撃で少なくとも4人が破片などで負傷したとされています。
ベイルート中心部と南部を相次いで空爆
こうしたロケット攻撃に先立つ土曜日、イスラエル軍はレバノンの首都ベイルート中心部に対し、これまでで最も規模が大きく、破壊力の高い空爆の一つを実施しました。レバノン保健省は当初20人としていた死者数を29人に修正し、負傷者も含めると土曜日だけで84人が死亡したと発表しました。
保健省によると、2023年10月から続く一連の衝突でのレバノン側の死者は、今回を含めて3,754人に達しています。イスラエル軍はこの空爆の具体的な標的についてコメントしていません。
イスラエル軍はまた、ベイルート南部のヒズボラ支配地域ダヒエ周辺にも集中的な空爆を行いました。軍は事前に、南ベイルートのヒズボラ関連施設を標的にする方針をSNSで予告したうえで、民間の建物の間に意図的に埋め込まれたとする指揮所を攻撃したと説明しています。日曜日にもダヒエ地区のヒズボラ指揮センター12か所を攻撃したと発表しました。
イスラエルは2023年10月に始まったガザでの戦闘に端を発し、約1年にわたる緊張が続いたのち、9月にイランの支援を受けるヒズボラへの攻勢を本格化させました。南部やベッカー高原、ベイルート南部郊外などに対する空爆で、レバノン国内では100万人以上が避難を余儀なくされているとされています。
米国主導の停戦案、イスラエルの最終判断待ち
軍事的な緊張が続く一方で、ガザとレバノン情勢の沈静化に向けた外交努力も進められています。米国の仲介役アモス・ホックスタイン氏は、先週ベイルートを訪問して協議を行った後、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相やイスラエル・カッツ国防相と会談し、ワシントンに戻りました。ホックスタイン氏は、停戦交渉には進展が見られるとの認識を示しています。
欧州連合(EU)の外交安全保障上級代表を務めるジョセップ・ボレル氏は日曜日、ベイルートでレバノン側当局者と会談した後、米国が提示した停戦案について「イスラエルからの最終的な回答を待っている」と述べました。そのうえで、「イスラエル政府に圧力をかけ続けるとともに、ヒズボラにも米国の停戦案を受け入れるよう圧力を維持する必要がある」と強調しました。
イスラエル側の姿勢をめぐっては情報が錯綜しています。米メディアの記者は、匿名のイスラエル当局者の話として、レバノンでの停戦合意に向けてイスラエルは前進しているとする見方を伝えました。一方で、イスラエルの公共放送カンは、レバノンでの合意についてゴーサインは出ておらず、なお解決すべき課題が残っていると報じています。
国連決議1701と南部レバノンの行方
現在の外交努力は、2006年のヒズボラとイスラエルの戦闘を終結させた国連安全保障理事会決議1701の枠組みに基づく停戦の再構築に焦点を当てています。この決議は、ヒズボラに対し戦闘員をイスラエル国境からおよそ30キロ内側へ後退させることを求め、空白地帯にはレバノン軍を展開するよう定めています。
しかし現地では、レバノン軍も新たな攻撃の犠牲となっています。レバノン軍は日曜日、南部の都市ティル(タイア)近郊アル・アミリヤにある軍施設がイスラエル軍の攻撃を受け、兵士1人が死亡、18人が負傷したと発表しました。施設は大きな損傷を受けたとされています。
イスラエル軍はこの攻撃について遺憾の意を表明し、現在調査を進めているとしています。そのうえで、戦っているのはヒズボラであり、レバノン軍を標的としているわけではないと強調しました。
レバノンのナジーブ・ミカティ暫定首相は、この攻撃について「停戦の実現、南部でのレバノン軍の存在強化、そして決議1701の履行に向けたあらゆる努力を拒絶する、血なまぐさい明白なメッセージだ」と非難しました。
ボレル氏はまた、EUとしてレバノン軍を支援するため2億ユーロ(約2億800万ドル)を拠出する準備があると明らかにしました。決議1701の実行主体であるレバノン軍の能力を高めることで、南部レバノンの安定化につなげたい考えです。
エスカレーションと停戦のはざまで
イスラエル北部の住民は、ヒズボラのロケット攻撃が続くなかで避難生活を余儀なくされており、イスラエル政府は北部から退避した数万人の住民を安全に帰還させることが軍事行動の目的だと説明しています。一方、レバノン側では100万人以上が国内避難民となっており、双方の国境地帯は長期化する緊張のもとで疲弊しています。
今回のベイルート中心部への大規模空爆とテルアビブ近郊へのロケット攻撃は、軍事的には報復の連鎖でありながら、政治的には停戦交渉の行方を左右する重大な試金石になりつつあります。国連決議1701に基づく停戦枠組みを実効性のある形で再構築できるのか、それともエスカレーションが続き、ガザ情勢とともに地域全体の不安定化が進むのか。
交戦当事者だけでなく、米国やEUなど国際社会の働きかけが、今後の中東情勢を大きく左右することになりそうです。読者一人ひとりにとっても、安全保障と民間人の保護をどのように両立させるべきかを考えるきっかけとなる局面と言えるでしょう。
Reference(s):
Hezbollah rockets land near Tel Aviv after Israeli strike on Beirut
cgtn.com







