韓国で45年ぶり戒厳令 ユン大統領に弾劾論、国会が宣言を否決 video poster
韓国で45年ぶりの戒厳令、その後に広がる「弾劾」論
2025年12月、韓国政界が揺れています。ユン・ソクヨル(Yoon Suk-yeol)大統領が突然「非常」戒厳令を宣言し、その後、国会の採決で否決され解除に追い込まれたことで、最大野党は大統領の即時退陣と弾劾手続きを掲げました。本記事では、この一連の動きを日本語で分かりやすく整理します。
何が起きたのか:突然の「非常」戒厳令
韓国の通信社Yonhap Newsなどによると、ユン大統領は今週火曜日の夜、テレビ演説で「非常」戒厳令を宣言しました。戒厳令は、軍が治安維持や行政の一部を担う非常時の措置とされます。
宣言の直後、新たな戒厳司令官となった陸軍参謀総長のパク・アンス(Park An-su)将軍が、六つの措置からなる布告を出しました。そこには、次のような内容が含まれていたと伝えられています。
- 政党を含む政治活動や集会の禁止
- 「虚偽の宣伝」とされる情報の取り締まり
- ストライキの禁止
- 社会的不安をあおると判断される集会の禁止
- すべてのメディアを戒厳令当局の管理下に置くこと
- 医師を含む医療従事者に対し、48時間以内の職場復帰を命じること
とりわけ、メディアを一括して軍の管理下に置くことや、ストライキの全面禁止、医療従事者への一斉復帰命令は、言論の自由や労働の権利を大きく制限するものとして受け止められました。
国会と市民の抵抗、戒厳令は数時間で撤回
戒厳令発令後、治安部隊は国会議事堂を封鎖し、ヘリコプターが屋上に着陸、部隊が建物内に一時的に進入するなど、国会への物理的な圧力がかかったとされています。これは、議員が議場に入るのを妨げる狙いがあったとみられます。
それでも最終的に190人の国会議員が議事堂に入ることに成功し、全会一致でユン大統領の戒厳令宣言を拒否し、解除を求める決議を可決しました。
街頭では、戒厳令に反対する数千人規模の抗議デモも発生しました。国会と市民の強い反発を受けて、ユン大統領は数時間後に戒厳令を撤回しました。韓国紙Korea JoongAng Dailyによれば、韓国で戒厳令が宣言されたのは約45年ぶりとされています。
与野党と政権内で広がる波紋
戒厳令の宣言と撤回は、政治にも大きな余波をもたらしています。今週水曜日、最大野党の民主党(Democratic Party、DP)は、ユン大統領に対し直ちに職を辞するよう要求しました。大統領が自ら退陣しない場合、すぐに弾劾手続きに着手する方針も示しています。
一方で、与党であるPeople Power Partyの代表、ハン・ドンフン(Han Dong-hoon)氏も、国防相のキム・ヨンヒョン(Kim Yong-hyun)氏を解任し、内閣全体が総辞職すべきだと主張しました。戒厳令をめぐる判断の責任をどこまで問うのかが、与党内でも争点となりつつあります。
大統領府からも、政権の動揺をうかがわせる情報が出ています。大統領府を引用した韓国メディアの報道によれば、大統領秘書室長を含む上級の大統領補佐官や秘書官が、一斉に辞意を表明しました。突然の戒厳令宣言と、短時間での撤回が、政権内部の信頼にも揺らぎを生んでいることがうかがえます。
なぜ今回の戒厳令が重い意味を持つのか
今回の出来事は、数字だけ見ても「45年ぶりの戒厳令」という重みがありますが、内容面でも韓国の民主主義にとって重要な問いを突きつけています。
とくに注目される論点は、次のような点です。
- 危機対応を名目とした非常措置の線引きをどこに置くのか
- 軍や治安当局が政治プロセスにどこまで関与しうるのか
- 言論の自由、集会やストライキの権利をどこまで制限できるのか
- 国会と市民は、強い権限を持つ行政府にどう対抗しうるのか
今回、国会議員190人が物理的な制約を乗り越えて採決に参加し、全会一致で戒厳令を拒否したこと、そして市民が街頭で抗議の意思を示したことは、韓国社会が「どこまでなら許容できるのか」を自ら試した局面だったとも言えます。
これからの焦点と、日本から見た意味
今後の焦点は、大きく三つに整理できます。
- 民主党が掲げる弾劾手続きが、実際にどのようなスケジュールと内容で進むのか
- 戒厳令の決定プロセスをめぐって、大統領府や国防当局がどこまで説明責任を果たすのか
- 与党People Power Partyの内部で、ユン大統領への支持と距離の取り方がどう変化するのか
戒厳令という強いカードを切り、それが短時間で撤回され、さらに弾劾論まで浮上している状況は、韓国の政治的安定や制度への信頼を国内外がどう評価するかにも影響を与えうる事態です。
日本にとっても、経済や安全保障の重要なパートナーである隣国の政治の揺らぎは無関係ではありません。今回のケースは、非常時における権力のあり方と、市民の権利をどう守るかというテーマを、あらためて考えるきっかけになりそうです。
Reference(s):
Yoon faces possible impeachment after martial law order revocation
cgtn.com








