フランス政権が不信任案で崩壊 深まる政治危機とEUへの波紋
フランスのマクロン政権を支えてきたミシェル・バルニエ首相の内閣が、不信任案可決によって崩壊しました。EU第2の経済大国で政治的空白が広がり、巨額の財政赤字をどう立て直すのかが一段と不透明になっています。
不信任案でバルニエ内閣が崩壊
フランス国民議会は水曜日、ミシェル・バルニエ首相率いる内閣に対する不信任案を、331票の賛成多数で可決しました。極右勢力と左派勢力が歩調を合わせたことで、不信任案は成立しました。
バルニエ氏はエマニュエル・マクロン大統領のもとで少数与党内閣を率してきましたが、発足からわずか3カ月で退陣を迫られる形となり、1958年に始まった第五共和政で最も短命な政権の一つとなりました。
憲法上、首相は大統領に対し内閣総辞職を申し出る義務があり、フランスメディアによれば、近くマクロン大統領に辞表を提出すると見込まれています。
なぜ不信任案が可決されたのか
今回の不信任案の引き金となったのは、政府が議会採決を経ずに予算案の一部を成立させるため、特別な憲法上の権限を行使したことでした。内閣は議会内で多数派を持たないため、最終採決にかければ否決されるリスクが高い状況でした。
問題となったのは、約600億ユーロ(約630億ドル)規模の歳出削減を盛り込んだ予算案です。政府は、膨らみ続ける財政赤字を抑えるために不可避の措置だと主張してきましたが、国民の間では不人気で、議会でも支持は広がっていませんでした。
採決に先立ち、バルニエ首相は議会で「この赤字という現実は、不信任案の採択によって魔法のように消えるわけではない」と述べ、今後どの政権になっても財政再建は避けて通れない課題だと訴えました。
63年ぶりの異例事態
フランスで内閣が不信任案に敗れるのは、ジョルジュ・ポンピドゥー内閣が倒れた1962年以来とされています。それだけに、今回の事態は第五共和政の歴史の中でも極めて異例です。
マクロン大統領は6月に解散総選挙を決断しましたが、その結果生まれたのは与野党が鋭く対立する「ねじれ議会」でした。大統領の政治的な求心力は弱まり、今回の政権崩壊でその立場はさらに揺らいでいます。
揺らぐフランス、揺れるEU
大統領の求心力が低下するなか、フランスでは安定した政権も2025年予算もないまま年を越すリスクが高まっています。とはいえ、フランス憲法には、米国のような「政府閉鎖」を回避するための特別な手当ても用意されています。
EU第2の経済大国であるフランスの政治的混乱は、すでにドイツの連立政権崩壊で揺れる欧州連合にとって、さらなる不安要因となります。報道によれば、こうした事態は、数週間後にホワイトハウスに復帰するドナルド・トランプ次期米大統領を迎えるタイミングと重なっています。
フランスの国防相を務めてきたセバスチャン・ルコルニュ氏は、国内の政治的混乱がウクライナ支援に影響しかねないと警告しました。対ロシア制裁やウクライナ支援をめぐり、EUと米国の連携が問われる局面での政権不在は、国際社会にも波紋を広げます。
国内政治地図の変化:左派と極右の思惑
今回の不信任案では、急進左派の「フランス・アンボウド(LFI)」と極右政党「国民連合(RN)」が足並みをそろえました。LFIはマクロン大統領の辞任を公然と求めており、政権批判を一段と強めています。
一方、国民連合を率いるマリーヌ・ルペン氏は、長年「政権を担う準備のある政党」であることをアピールしてきました。バルニエ政権の崩壊は、同氏にとって自らの主張を裏付ける好機とも言えます。
ただ、ルペン氏は「マクロン氏の辞任を積極的に求めるつもりはない」としつつ、「大統領への圧力はこれからますます高まるだろう。その決断を下すのはあくまで本人だ」と述べ、あくまで次の一手はマクロン大統領に委ねる姿勢を示しました。
日本から見るフランス危機のポイント
今回のフランス政治の危機は、日本にいる私たちにとっても無関係ではありません。注目したいポイントを簡単に整理します。
- EU第2の経済大国であるフランスの不安定化は、欧州経済や金融市場の不透明感を高める可能性があります。
- 財政赤字と歳出削減をめぐる攻防は、日本を含む多くの先進国が抱える課題とも重なります。
- ウクライナ支援や対ロシア政策をめぐり、フランスの政治空白は欧米の結束に影響を与える可能性があります。
- 急進左派と極右が共同歩調を取る構図は、政治の分断が深まる時代の象徴的な現象とも言えます。
フランス政治の行方は、EUの将来、ウクライナ情勢、そしてグローバルな政治経済の安定といった複数のテーマと直結しています。今後、マクロン大統領がどのような新政権の形を模索するのか、引き続き注視する必要があります。
Reference(s):
French government felled in no-confidence vote, deepening crisis
cgtn.com








