韓国で戒厳令巡り波紋 国防長官代行が新たな命令を否定
韓国のユン・ソンニョル大統領による今週の戒厳令宣言をめぐり、国防長官代行が「新たな戒厳令の命令は出ていない」と公に否定し、政治と軍の関係に緊張が高まっています。検察と軍検察による合同捜査も決まり、政権内外で波紋が広がっています。
韓国で何が起きているのか
韓国のキム・ソンホ国防長官代行は、先週金曜日に記者会見を開き、今週初めにユン・ソンニョル大統領が発表した戒厳令について「国民に心配をかけた」と謝罪しました。
そのうえでキム氏は、現地メディアなどで報じられた「別の戒厳令宣言が準備されている」といった観測について、「そのような命令は事実ではない」として明確に否定しました。
さらにキム氏は、仮に新たな戒厳令の発令を命じられた場合でも、それには従わない考えを示しました。現職の国防長官代行が、大統領からの命令を想定して「従わない」とまで言及するのは異例であり、韓国国内で大きな注目を集めています。
国防長官代行の異例の発言と文民統制
軍のトップに立つ立場のキム氏が、あらかじめ「命令には従わない」と宣言したことは、文民統制(シビリアン・コントロール)のあり方をめぐる議論にもつながりかねない発言です。
通常、民主主義国家では、軍は選挙で選ばれた文民の指揮命令系統の下に置かれます。その一方で、軍幹部が法や憲法に反すると判断した命令に対し、どこまで異議を唱えうるのかという問題は、各国で微妙なバランスの上に成り立っています。今回の発言は、その緊張関係が韓国で顕在化していることを示しているともいえます。
戒厳令を巡り検察と軍検察が共同捜査へ
韓国の放送局YTNによると、韓国の検察当局は、今週初めにユン大統領が宣言した非常戒厳令について、民間の検察と軍の検察が合同で捜査にあたる方針を決めました。
合同捜査では、戒厳令の発令手続きが憲法や関連法令に沿っていたのか、誰がどのようなプロセスで決定に関与したのかなどが、今後の焦点になるとみられます。捜査の進展次第では、ユン大統領を含む関係者の責任問題に発展する可能性もあり、政局への影響は避けられません。
与党トップは「職務停止」を要求 大統領との会談は不透明
ユン大統領を支える与党のトップ、ハン・ドンフン氏はこれに先立ち、ユン大統領について「できるだけ早く職務を停止すべきだ」と述べ、厳しい姿勢を示しました。与党を率いる立場から、現職大統領の職務停止を公然と求めた発言は、韓国政界に大きなインパクトを与えています。
地元メディアは、ユン大統領の要請により、先週金曜日の午後にユン氏とハン氏が会談する予定だと報じました。一方で、大統領府はこの会談について「確認できない」としており、実際に会談が行われたのか、またそこで何が話し合われるのかは明らかになっていません。
戒厳令とは何か 民主主義とのせめぎ合い
戒厳令とは、戦争や大規模な暴動など、国家的な非常事態に際して発動される制度で、軍に治安維持の権限を大きく与えるものです。通常は警察が担う治安維持や一部の行政機能を、軍が一時的に肩代わりすることが想定されています。
しかし戒厳令のもとでは、集会やデモの制限、報道や表現の自由への制約など、市民の権利が一定程度制限される場合があります。そのため、民主主義と市民の自由とのバランスをどう保つかが常に問われ、発令には厳格な手続きと高い透明性が求められます。
日本の読者が押さえておきたいポイント
今回の韓国での動きを、日本から見るうえでのポイントを整理します。
- 民主主義国家における戒厳令の宣言は極めて重い意味を持ち、その妥当性が国内外から厳しく問われます。
- 国防長官代行が「命令には従わない」と発言したことは、軍と大統領の間に緊張が生じているサインと受け止められています。
- 民間と軍の検察による合同捜査は、非常事態宣言の法的正当性を検証するプロセスとして注目されます。
- 与党トップが大統領の職務停止に言及するなど、政権内部にも溝が深まりつつあり、今後の政局の行方が注視されています。
これからの注目点
今後は、検察と軍検察の合同捜査がどのように進むのか、またユン大統領とハン・ドンフン氏の関係がどのように調整されていくのかが、大きな焦点になります。キム国防長官代行の発言が軍内部や世論にどう受け止められるのかも重要です。
韓国の政治と安全保障をめぐる動きは、日本を含む周辺地域の外交や安全保障政策にも影響し得るため、今後もしばらくは、この非常事態宣言とその検証プロセスに注目が集まりそうです。
Reference(s):
South Korean defense official denies reports of new martial law order
cgtn.com








