シリア内戦:ホムスで政府軍攻勢、南部ダラーア・スウェイダで反政府勢力が台頭
ロシアの空爆支援を受けたシリア政府軍が、ホムス県北部で大規模な軍事作戦を開始しました。一方で、反政府勢力は北部から南部にかけて支配地域を広げ、シリア内戦の戦況が大きく動きつつあります。
今回のシリア情勢は、ホムスでの政府軍攻勢、ダラーア・スウェイダでの反政府勢力の台頭、そしてレバノンやイスラエルなど周辺国やイラクを含む外交の動きが同時進行している点で注目されています。
この記事のポイント
- ホムス県北部でシリア政府軍が「特別作戦」を実施し、ロシア空軍が空爆で支援
- 反政府勢力が南部ダラーア市の掌握を主張し、県の約8割を支配しているとする報告
- 南部スウェイダでは武装勢力が警察本部などを掌握し、市内の約7割を支配との情報
- レバノンとイスラエルが国境地帯に部隊を展開する一方、イラクは外交的な調整役を模索
ホムス北部で政府軍が「特別作戦」
シリア国防省によると、政府軍は今週金曜日、ホムス県北部の農村地帯で「特別作戦」を実施しました。作戦はアル・ダル・アル・カビラ、テルビセ、アル・ラスタン周辺の反政府勢力支配地域を対象に行われ、ロシア軍の空爆支援を受けたとされています。
国防省の発表では、政府側が「テロリスト」と呼ぶ武装勢力の戦闘員数十人を殺害し、多数の車両や武器を破壊したとされています。作戦により反政府側に「パニックと混乱、そして集団的な撤退」が生じたと強調しました。
ホムス県では、軍事作戦と並行して、市民生活を支える動きも伝えられています。ホムス県知事ニムル・マフルーフ氏は、市警察トップとともに夜間に市中心部のパン工場やパン屋を視察し、操業を止めず安定的にパンを供給するよう求めました。国営テレビによれば、県としては24時間体制で生活インフラの維持に努めているとしています。
反政府勢力、南部ダラーアで支配拡大
同じ金曜日、シリア南部のダラーア県各地では、地元武装勢力と政府軍との間で激しい衝突が起きました。武装勢力は複数の政府側拠点を制圧したとされ、日中を通じて緊張が高まりました。
その後、金曜夜には、シリア反政府勢力がダラーア県都ダラーア市を掌握したと主張しました。ロンドンを拠点とする戦況監視団体「シリア人権監視団」は、武装勢力が現在ダラーア県のおよそ80パーセントを支配していると伝えています。
監視団によれば、ダラーアでは地元の武装集団やさまざまな組織が、政府側の脆弱さが生じた隙を突く形で支配地域を広げているとされます。前線が急速に動く中で、市民の安全確保が大きな課題となっています。
スウェイダ:警察本部を武装勢力が掌握、市内は緊張
南部のスウェイダ市でも、金曜夜に事態が大きく動きました。地元の武装勢力は、市の警察本部や複数の治安関連施設を、直接の銃撃戦を伴わずに掌握したと伝えられています。
これらの武装グループは、自分たちの目的は政府や治安施設を守ることにあると主張し、市中心部や主要な国立病院の周辺に重武装の部隊を展開しました。現地記者によると、オンラインに投稿された動画では、警察官らが比較的穏やかな様子で署を離れる場面も確認できます。
市内で大規模な交戦は起きていないものの、散発的な銃声が響き、外出制限や商店の閉店が相次いだと報じられています。武装勢力の一員は、匿名を条件に、地域の治安状況は依然として不安定だと語りました。
スウェイダで最大規模の武装勢力の一つとされる「Men of Dignity」運動の構成員2人が、軍施設付近での銃撃戦で死亡し、4人が負傷したとも伝えられています。サウジ資本の衛星テレビ局アルアラビーヤは情報筋の話として、武装勢力が現在スウェイダ市の約70パーセントを支配していると報道しました。
市民生活とパンの確保
ホムスで知事がパン工場やパン屋を夜間に視察したことは、紛争下でも市民生活を維持しようとする試みの一つといえます。パンは多くの家庭にとって主食であり、その供給が滞れば、生活不安が一気に高まるからです。
一方、スウェイダでは治安の悪化に伴う外出制限や店舗の閉鎖で、人びとの移動や日々の買い物にも制約が出ているとみられます。ダラーアでも前線の変化に合わせて、行政サービスや医療へのアクセスが不安定になる懸念があります。
周辺国と外交:レバノン・イスラエル・イラクの動き
シリア南部を中心に戦闘や武装勢力の動きが目立つ中、周辺国も警戒を強めています。レバノンとイスラエルは、シリアとの国境沿いに部隊を展開し、暴力の波及を懸念して情勢を注視しています。
外交面では、シリアのバッサム・サッバーハ外相がイラクの首都バグダッドを訪問し、イラクのムハンマド・シア・アッル・スーダーニ首相、フアード・フセイン外相、さらにイランのセイエド・アッバース・アラグチ外相と会談しました。
スーダーニ首相は、シリアの安全保障は地域諸国の安全にとって重要な要素だと強調し、イラクとして政治・外交面での支援を続ける考えを示しました。また、周辺のアラブ諸国に対し、特にシリア情勢をめぐる現在の局面に対応するため、連携を強めるよう呼びかけました。
これから何が問われるのか
ホムスでの政府軍攻勢と、ダラーア・スウェイダでの反政府勢力の台頭は、シリア内戦の地図を再び塗り替えかねない動きです。北部と南部で同時に緊張が高まれば、前線が増え、一般市民が巻き込まれるリスクも高まります。
- ホムス北部での軍事作戦がどの程度まで拡大し、周辺地域に波及するのか
- ダラーアとスウェイダでの武装勢力の支配が一時的なものか、長期化するのか
- レバノンやイスラエルを含む周辺国の警戒態勢が、予期せぬ衝突を招かないか
- イラクなどが主導する外交努力が、軍事的緊張を和らげる接点を生み出せるか
シリア情勢は依然として流動的で、今回の一連の動きもその一局面に過ぎません。ホムス、ダラーア、スウェイダの各地域で市民の安全と生活をどう守るのか、そして地域全体の安定に向けた外交努力がどこまで機能するのかが、今後の大きな焦点となります。
Reference(s):
Syrian forces launch offensive in Homs, as rebels seize more land
cgtn.com








