シリア政権崩壊後の行方は?ダマスカス制圧と中東への影響を読み解く video poster
ダマスカスが反政府勢力の手に落ち、バッシャール・アル・アサド氏が辞任して国外に去ったことで、シリアと中東の勢力図が一気に揺れ動いています。夜間外出禁止令が敷かれた首都の緊張とともに、次に何が起きるのかが世界の注目を集めています。
ダマスカス制圧と政権崩壊、いま何が起きているか
反政府勢力は、首都ダマスカスを制圧した数時間後の現地日曜、午後4時から翌午前5時までの夜間外出禁止令を発表しました。政権崩壊後の混乱や略奪を防ぎ、支配地域の秩序を素早く固める狙いがあるとみられます。
一方、ロシア外務省の声明によれば、アサド氏は大統領を辞任して国外に出たうえで、平和的な権力移行を呼びかけています。10年以上にわたり続いた内戦の中心人物が退いたことで、2025年12月現在、シリアは新たな局面に入りました。
シリアに生じた権力の空白
中国メディア・中国メディアグループの評論家である宋暁軍氏は、反政府勢力の進軍速度が「驚くべき速さ」であるとし、その結果としてシリアに大きな権力の空白が生まれていると指摘します。中央政府の統治機能が弱まり、地方や武装勢力ごとに実効支配が分かれるリスクが高まっているためです。
こうした空白を、どの勢力が、どのようなルールで埋めるのかによって、シリアの将来像はまったく異なるものになります。
台頭が注目されるHTS
なかでも注目されているのが、反政府勢力の中核となりつつあるハヤート・タハリール・アル・シャーム(HTS)です。HTSは過去にアルカイダと関係があった組織で、現在も複数の主要国と国連からテロ組織に指定されています。
宋氏は、今後HTSが権力の空白を埋める主役となるかどうか、そして自らの組織のあり方や「アイデンティティ」をどう位置付け直すのかが、国際社会から厳しく見られると分析します。もし同団体が首都統治を担うのであれば、
- 武装闘争主体から行政主体へと移れるのか
- 少数派や他宗派をどのように扱うのか
- テロ指定の解除を目指すのか、それとも対立を続けるのか
といった点が、シリア国内だけでなく、中東全体の安定性にも直結してきます。
移行政権はつくれるのか
アサド氏が平和的な権力移行を呼びかけている以上、短期的には反政府勢力内部の合意形成が焦点になります。軍事力の強い勢力だけでなく、地方の武装組織や市民団体をどこまで巻き込めるかが、移行政権の正統性を左右します。
現実的なシナリオとしては、
- 主要な反政府勢力と一部旧体制側官僚からなる暫定評議会の設置
- 一定期間の停戦と治安維持のための共同指揮体制
- 国連や地域諸国が関与する形での選挙ロードマップ作成
などが考えられます。ただし、HTSを含む勢力をどのような立場で枠組みに組み込むのかは、国際社会の懸念とも直結する難題です。
中東地域全体への波及
治安と越境リスク
シリアは中東の要衝に位置しており、その政治空白は周辺の治安にも直結します。国境地帯では武装勢力や武器の越境、難民の新たな流出などが起きる可能性があり、周辺国は国境管理をさらに強化するとみられます。
また、HTSのようにテロ指定を受けている組織が実効支配を広げる場合、域外の武装ネットワークとの連携や、他地域への過激思想の拡散を警戒する声も高まるでしょう。
エネルギーと外交の再編
シリア情勢の変化は、中東全体の外交バランスにも影響します。これまでアサド政権と関係を持ってきた国々は、反政府勢力との新たな関係構築を迫られますし、ロシアや中東諸国の動きも再調整が必要になります。
不安定化が長引けば、原油市場やガス供給の不確実性が増し、日本を含むエネルギー輸入国にとっても無視できない要因となります。
日本とアジアにとっての意味
遠く離れた中東のニュースに見えても、シリア情勢は日本やアジアとも無関係ではありません。エネルギー価格、難民・人道支援への国際的な責任、テロ対策、国連を通じた平和構築など、多くのテーマで日本の外交と安全保障に影響し得ます。
とくに、今後のシリア再建プロセスにおいて、インフラ整備や医療・教育支援、人材育成などでアジア各国がどのように貢献できるのかも、長期的な課題となるでしょう。
これから数週間の注目ポイント
情勢が急速に変化するなかで、今後数週間ほどで注視したいポイントを整理すると、次のようになります。
- ダマスカスの治安状況と夜間外出禁止令の行方
- 反政府勢力内部での権力配分と暫定統治の枠組み
- HTSの動きと、組織のあり方に関する対外メッセージの変化
- ロシアを含む関係国や国連など国際社会の関与の仕方
- 市民生活の回復度合いと人道支援へのアクセス
シリアと中東の未来は、まだ定まっていません。しかし、首都制圧と政権崩壊という大きな転換点を迎えた今こそ、短期的な動きだけでなく、中長期的な地域秩序の変化を見据えていく必要があります。
Reference(s):
cgtn.com








