シリア反政府勢力がダマスカス掌握を宣言 専門家が語る政府の誤算
シリアの首都ダマスカスをめぐる情勢が2025年12月に入り一気に緊迫しています。今月初めの日曜日(現地時間)、シリア反政府勢力はテレビ声明でダマスカスを「解放」し、バッシャール・アル=アサド大統領の24年にわたる政権を打倒したと発表し、すべての囚人を解放したと主張しました。
2025年11月末以降、シリアでは戦闘が急激に激化し、反政府勢力が各地で素早く前進していると伝えられています。この急展開の背景について、中国国際問題研究院(China Institute of International Studies)の李自新・助理研究員が、中国メディアグループ(China Media Group)のインタビューに応じ、いくつかの要因を指摘しました。
政府の「誤算」が軍事力低下を招いた
李氏はまず、シリア政府側の政治判断の誤りが、現在の戦況悪化につながったと見ています。近年のシリア政府は、国内の政治情勢を楽観的に読み違え、「反政府勢力が現行の政治秩序を根本から覆すことはない」と考えていたといいます。
その結果として、政府は軍事分野への投資を縮小し、
- 徴兵制の廃止
- 軍事費の削減
など、戦力そのものを細らせる決定を相次いで行ってきました。李氏は、こうした政策が長期的に防衛能力を弱め、反政府勢力の急速な進撃を許す土壌になったと指摘します。
同盟勢力への依存が抱えるリスク
シリアの安定は、従来から地域の同盟勢力の支援に大きく依存してきました。李氏は特に、ヒズボラとイランの役割を挙げています。これらの勢力は、シリア政府軍の不足を補う存在として、軍事・政治の両面で重要な支えとなってきました。
しかし、外部支援に依存する構図は、一見すると安定をもたらすように見えても、支援側の事情に情勢が左右されやすいという脆さも抱えています。支援国や組織の優先順位が変われば、シリア政府が頼れる力も相対的に低下してしまうからです。
パレスチナ・イスラエル紛争とロシア・ウクライナ戦争の影響
李氏はさらに、他地域で続く二つの大きな武力衝突が、シリア情勢にも間接的に影響を与えていると分析します。
- パレスチナ・イスラエル紛争
- ロシア・ウクライナ戦争
パレスチナ・イスラエル紛争は、中東全体の安全保障環境を不安定にし、各国・各勢力の関心や資源を分散させています。また、ロシア・ウクライナ戦争によって、ロシアがシリアへの支援に割ける余力が大きくそがれていると李氏は指摘します。
その結果として、シリア政府はこれまで頼ってきた外部の後ろ盾から十分な支援を得にくくなり、自前の防衛力の限界が一気に表面化していると見ることができます。
ダマスカス防衛に追われる政府軍 反攻は困難な局面
現在の戦況について、李氏は「シリア政府はダマスカス防衛のために、大量の資源と兵力を投入せざるを得なくなっている」と述べています。首都防衛を最優先せざるを得ない状況では、他地域での主導的な反攻作戦に踏み切る余裕はほとんどありません。
ダマスカスに戦力を集中すればするほど、地方の支配が手薄になり、反政府勢力が勢いを増すという悪循環も懸念されます。李氏は、こうした構図が政府側による戦況の逆転を難しくしているとみています。
ロシア・トルコ・イランの三者会談は「枠組み」にとどまる可能性
こうしたなか、ロシア、トルコ、イランの3カ国は、直近の土曜日に三者会談を行い、シリア危機について協議しました。地域の主要アクターが一堂に会したこと自体は注目に値しますが、李氏はこの会談の性格についても慎重です。
李氏によれば、今回の三者会談は、あくまで「将来のシリア危機解決に向けた枠組みづくり」にとどまる可能性が高く、即座に戦況を左右するような合意には結びつかないとみられます。その背景には、
- ロシア、トルコ、イランそれぞれが固有の安全保障上の関心や利害を抱えていること
- シリア国内の多様な武装勢力・政治勢力を一度に取りまとめることの難しさ
といった複雑な事情があります。
これから問われるもの――軍事だけでなく政治の出口
ダマスカス「解放」の宣言は、シリアの政治・軍事バランスが大きく揺らいでいることを象徴する出来事だといえます。今後の焦点は、
- 反政府勢力がどこまで実効支配を固められるのか
- シリア政府が防衛にとどまらない政治的対応策を打ち出せるか
- ロシア、トルコ、イランなど周辺国がどのような役割を果たすのか
といった点に移っていきそうです。
武力の均衡が大きく動いた局面では、一時的な軍事的勝利だけでなく、その後にどのような政治プロセスを組み立てるかが地域の安定を左右します。2025年末のシリア情勢は、軍事と外交、そして地域秩序の行方が複雑に絡み合う局面に差し掛かっているといえます。
Reference(s):
Expert: Government's misjudgment paved way for rebel advance in Syria
cgtn.com








