カナダ財務相フリーランド辞任 トランプ関税と歳出巡りトルドー首相と対立
カナダのクリスティア・フリーランド財務相兼副首相が2025年12月8日、トルドー首相との対立を理由に辞任しました。トランプ次期米大統領が予告する25%の関税と、拡大する財政赤字への対応をめぐり、カナダ政局は一気に緊迫しています。
何が起きたのか:財務相が「経済アップデート」直前に辞任
フリーランド氏は8日(月)、秋の経済見通しと財政の状況を説明する「秋の経済アップデート」を議会で発表する数時間前に辞表を提出しました。56歳の同氏は、副首相も兼ねる政権中枢の一人でした。
辞任のきっかけとなったのは、歳出拡大をめぐるトルドー首相との対立です。フリーランド氏は辞任書簡の中で、首相が求める追加支出を「政治的な見せかけ」にすぎず、トランプ次期米大統領が表明している25%の輸入関税への対応能力を損ないかねないと批判しました。
トルドー首相は空席となった財務相ポストに、側近のドミニク・ルブラン公安相を起用しました。ルブラン氏は今後、財政運営と対米交渉の両面で重い役割を担うことになります。
背景:トランプ関税と619億カナダドルの赤字
今回の辞任劇の背景には、トランプ次期米大統領が示している25%の輸入関税方針があります。最大の貿易相手国である米国が関税を引き上げれば、カナダ経済への打撃は避けられません。
同日に公表予定だった秋の経済アップデートによると、少数与党の自由党政権が2023/24年度に計上した財政赤字は619億カナダドル(約434億米ドル)と、当初見通しを大きく上回りました。赤字が膨らむ中でさらに歳出を拡大すれば、トランプ氏の関税に備えた財政余力が失われるとの懸念が、フリーランド氏にはあったとみられます。
トルドー政権への打撃:与党内外から「辞任」要求
フリーランド氏の離脱は、2015年11月の就任以来トルドー首相が直面した最大級の政治危機の一つとなりました。首相は次の総選挙で、公式野党である保守党に敗北する軌道に乗っているとも指摘されており、今回の辞任は政権の求心力低下に拍車をかけます。
自由党の全国議員総会が8日中に開かれる予定で、詳細は明らかになっていませんが、自由党所属の議員2人があらためて首相に辞任を求めました。
野党からの圧力も強まっています。これまで一部法案で政権を支えてきた新民主党(NDP)は、今年初めに「無条件の支持」を撤回していましたが、引き続き個別法案では協力してきました。しかしジャグミート・シン党首は8日、記者団に対し「ジャスティン・トルドーに辞任を求める。彼は退陣すべきだ」と述べ、初めて明確に首相退陣を要求しました。
一方でシン氏は、今後も政権を支えるかどうかについては「すべての選択肢がテーブルの上にある」とし、態度を保留しました。野党が結束して内閣不信任案を可決すればトルドー政権は倒れますが、その手続きが可能になるのは来年以降とされています。
保守党のピエール・ポワリエーヴル党首は、現在の政権運営を「制御不能な状態だ」と批判し、「最大の貿易相手国から25%関税という銃口を向けられている時に、このような混乱や分断、弱さを容認することはできない」と述べました。
これからの焦点:関税リスクと政局の行方
カナダ連邦議会は9日(火)からクリスマス休会に入り、来年1月27日に再開される予定です。短くはない休会期間中に、トルドー首相は新たな財務相とともに、内政と対米関係の立て直しを図ることになります。
今後数週間〜数カ月の注目ポイント
- ルブラン新財務相が、トランプ次期米大統領の関税方針にどう備えるのか。追加歳出を抑制し財政再建を優先するのか、それとも景気対策を優先するのか。
- 自由党内でトルドー首相の指導力に対する不満がどこまで広がるのか。全国議員総会でどのような議論が交わされるのか。
- 新民主党が今後も一部法案で政権を支えるのか、それとも他の野党と連携して不信任案提出に踏み切るのか。
- 来年以降に予想される不信任投票のタイミングと、その結果が次期総選挙の構図にどう影響するのか。
対米関係と財政運営という二重のプレッシャーの中で、カナダはどのような選択をするのか。25%の関税という外的ショックと政権内部の対立が交差する今回の危機は、「経済と政治のリスクが同時に高まったとき、民主主義国はどのように意思決定を行うのか」を考える一つのケーススタディと言えます。
日本から国際ニュースをフォローする私たちにとっても、貿易に大きく依存する中堅国家が国際環境の変化に直面したとき、財政規律と政治的安定性のどちらを優先すべきかという問いは、決して他人事ではありません。
Reference(s):
Canadian finance minister quits after clash with PM over Trump tariffs
cgtn.com








