ソウル中心部で尹錫悦大統領の弾劾巡り賛否デモ 若者と保守層が対峙
韓国のソウル中心部で、弾劾訴追中の尹錫悦大統領を支持する集会と、退陣を求めるデモが数百メートルを隔てて同時に開かれました。2025年12月3日に短時間だけ宣言された戒厳令を理由に弾劾されてから約1週間、韓国社会の分断が改めて浮き彫りになっています。
この記事のポイント
- ソウル中心部の光化門で、尹錫悦大統領の弾劾をめぐる賛否両派が同時に抗議集会
- 短時間の戒厳令宣言を巡り弾劾訴追、大統領権限は停止中だが在任は継続
- 反尹デモは20〜30代、賛成派は高齢の保守層が中心で、社会の分断が鮮明に
- 最終判断は憲法裁判所に委ねられ、韓国政治の先行きは不透明
光化門で賛否両派が同時デモ
現地時間の土曜日、ソウル中心部の光化門一帯で、尹錫悦大統領の弾劾をめぐり、退陣を求める市民と、弾劾に反対して大統領権限の回復を求める支持者が、それぞれ別の集会を開きました。会場同士の距離は数百メートルほどでした。
尹氏に批判的な側のデモには、数万人規模の人々が集まりました。参加者の多くは20代と30代で、午後3時ごろから集まり始め、K-POPの楽曲に合わせてライトスティックを振りながら、「逮捕せよ」「収監せよ」「反乱の首謀者・尹錫悦」といった文言が書かれたプラカードを掲げました。
27歳の参加者 Cho Sung-hyo さんは、「21世紀の民主主義の国で、どうしてこんなことができるのか尹氏に問いたかった。本当に良心があるなら、辞任すべきだと思う」と語り、戒厳令宣言への強い不信感を示しました。
一方、尹氏の弾劾に反対し、大統領権限の回復を求める集会には、主に高齢でより保守的な人々が、正午ごろから数千人規模で集まりました。
62歳の実業家 Lee Young-su さんは、「不正な国会議員選挙がこの国を蝕んでいる。その中心には社会主義・共産主義勢力がいる。だから私たち10人ほどで話し合い、弾劾には絶対反対だと声を上げることにした」と話し、選挙への不信感と弾劾への強い反発を訴えました。
現地時間午後4時(グリニッジ標準時午前7時)の時点で、両派の間で大きな衝突は報告されていませんでした。
短時間の戒厳令宣言と弾劾 何が問題視されているのか
尹大統領をめぐる最大の焦点は、2025年12月3日深夜に宣言され、数時間後に撤回された戒厳令です。この短命な戒厳令をきっかけに、尹氏は弾劾訴追を受けました。
尹氏は戒厳令の理由として、国会議員選挙でのハッキング疑惑や、反国家的だとする朝鮮民主主義人民共和国(DPRK)寄りの同調勢力の存在を挙げています。しかし、選挙の公正性を管理する中央選挙管理委員会は、こうした不正の主張を否定しています。
この短時間の戒厳令宣言が「反乱」に当たるかどうかについて、捜査当局が調べを進めています。尹氏は、当局からの複数回の出頭要請に、デモが行われた時点では応じていませんでした。
弾劾訴追により、尹氏の大統領としての権限は一時的に停止されていますが、形式上は依然として大統領の地位にとどまっています。
憲法裁判所が最終判断へ 尹氏は連絡に応じず
尹氏が職を解かれるのか、それとも大統領権限が回復するのか。最終的な判断を下すのは韓国の憲法裁判所です。憲法裁判所は、尹氏を職から解任するか、あるいは弾劾を退けて職務復帰を認めるかを決める役割を担っています。
しかし、憲法裁判所が尹氏に連絡を取ろうとしているものの、デモが行われた時点で尹氏はこれらの連絡にも応じていないとされています。政治的な空白状態が続く中で、司法による判断が、韓国の今後の政治の方向性を左右することになります。
若い世代と保守層 二つの危機感が街頭でぶつかる
今回の光化門での同時デモは、韓国社会の深い分断を象徴する場面となりました。
反尹デモの中心にいるのは、20〜30代の若い世代です。K-POPの文化に親しんだ表現方法で抗議する一方、彼らが訴えるのは、戒厳令宣言が民主主義を揺るがす行為だという強い危機感です。戒厳令という非常措置を、選挙や政治の対立に持ち込んだこと自体を問題視する声が目立ちます。
他方で、尹氏を支持する集会の参加者の多くは高齢で、政治的に保守的な傾向が強いとされています。彼らは、選挙が不正によって歪められていると感じ、弾劾を「不当な攻撃」とみなしています。同じ出来事をめぐって、世代や立場によって「何に怒っているのか」が大きく異なっていることがうかがえます。
韓国政治の不透明感と、私たちが考えたいこと
尹大統領の去就は、憲法裁判所の判断次第です。その結論がいつ出るのか、またどちらの方向に振れるのかは、現時点でははっきりしていません。いずれの結論になったとしても、今回のデモが示したような社会の分断がすぐに癒えるとは考えにくい状況です。
日本にとって韓国は、経済面でも文化面でもつながりの深い隣国です。ソウルの政局の揺らぎは、東アジアの安全保障や経済協力の枠組みにも影響しうるテーマです。
今回の事態は、選挙の信頼性、非常時の権限行使、そして民主主義のルールをどう守るかという問いを投げかけています。SNSを通じて瞬時に情報が広がる今だからこそ、感情的な対立に飲み込まれず、複数の視点からニュースを読み解くことが、私たち一人ひとりにも求められていると言えます。
Reference(s):
Rival protests over S. Korea's impeached President Yoon held in Seoul
cgtn.com








