スロバキア医療が崩壊危機 約3000人の医師が大みそか一斉辞職を通告 video poster
スロバキアの医療システムが、2025年末に向けて深刻な危機に直面しています。約3000人の医師が2025年12月31日の大みそかに一斉辞職する意向を示しており、賃金や労働環境、政府の対応への不満が噴き出しています。
- 約3000人の医師が大みそかの集団辞職を準備
- 背景には賃金水準、過酷な勤務、医療予算の配分への不満
- 2022年の13項目合意が「守られていない」との批判が高まる
スロバキアで何が起きているのか
2025年12月8日現在、スロバキアの公的医療は「崩壊寸前」とも言える状況に追い込まれつつあります。医師たちは、政府への抗議として今年の大みそかに一斉に辞表を提出する構えで、現場には緊張が走っています。
医師たちの不満は長年積み重なってきたもので、特に問題視されているのが賃金、過酷な勤務環境、そして医療財源の配分のあり方です。医師労働組合(Doctors' Trade Union)の代表を務めるMartin Zakucia医師は、医療予算そのものよりも「お金の分け方」に焦点を当てています。
医師たちの主張:お金の配分と現場の疲弊
Zakucia氏によると、医師たちは医療システムに投入される資金が「間違った形で」配分されていると感じています。
「基本的な問題は、医療システムにお金があるのは分かっているが、そのお金の分配が間違っているか、私たちの望む形ではないということです」とZakucia氏は語ります。「国家が病院にもっと資金を配分し、病院がより良い医療を提供できるようにしてほしいのです」。
医師側の要求は大きく整理すると次のようなものです。
- 公立病院への安定的かつ十分な資金投入
- 医師・看護師を含む医療スタッフの勤務環境の改善
- 若手医師の研修やキャリア形成の充実
こうした要求は、単なる賃上げ交渉にとどまりません。医師たちは、医療現場の質そのものを引き上げることで、患者に提供される医療のレベルを守ることを重視していると訴えています。
2022年の13項目合意はどこへ行ったのか
緊張を一段と高めているのが、2022年に政府と医師側の間で結ばれた13項目の覚書です。この覚書には、賃金引き上げ、研修の改善、病院環境の整備などが盛り込まれていました。
しかし、医療経済学者のMartin Smetana氏によると、その多くは約束通りには履行されていません。これが、今回の集団辞職の大きな引き金になっています。
「この事態が現実になってほしくない。最初の『死なずに済んだはずの患者』が亡くなったときに、すべてが終わってしまう」とSmetana氏は警告します。「政府も省庁も労組も、妥協点を見いだし、新しい覚書を書き直す必要があります」。
医師たちは、2022年の合意がいったんは「安定した良い法律」として高く評価され、署名時には大統領や医療関係者が揃って記者会見を開いたことを強調しています。それだけに、「約束が守られていない」という失望は大きく、政府への不信感を深める結果となっています。
賃上げをめぐる数字のギャップ
政府側も完全に動いていないわけではありません。最近では看護師の賃金引き上げが決定されるなど、一部の職種に対する対応も進んでいます。
しかし、医師に対して提示された賃上げ率は6.4パーセントにとどまり、2022年の覚書で約束されていた9.7パーセントには届いていません。医師側はこの差を「合意違反」と受け止めています。
Zakucia氏は「彼らは約束を破りました。私たちは元の合意を取り戻したいのです」と厳しい口調で述べています。
医師たちにとって、この数字のギャップは単なる数パーセントの問題ではなく、「一度交わした約束がどこまで信頼できるのか」という政治的・制度的な信頼の問題でもあります。
人材流出と公立病院の慢性的な人手不足
スロバキアの公立病院は、すでに人手不足に苦しんでいます。新たに医師資格を取得した人材のおよそ2割が、より高い給与や良好な勤務条件を求めて国外へと流出しているとされており、若手医師の確保は容易ではありません。
こうしたなかで約3000人もの医師が一斉に辞職すれば、救急医療や集中治療、予定されている手術など、多くの医療サービスに深刻な影響が出ることは避けられないとみられます。Smetana氏が懸念するように、「防げたはずの死亡」をどう防ぐかが、最大の焦点になりつつあります。
崩壊を防ぐカギは「新たな合意」と対話
事態の悪化を防ぐためには、政府、医師労組、関係省庁が歩み寄り、新たな覚書や合意を早急にまとめられるかどうかが問われています。Smetana氏が指摘するように、「すべての関係者が妥協点を見いだし、新しい覚書を作る」ことが、医療崩壊を回避する唯一の現実的な道筋と言えます。
また、約束された改革をどこまで着実に実行できるのか、透明性をもって説明できるのかも重要です。一度失われた信頼を取り戻すには、数字だけでなく、「合意を守る姿勢」が示される必要があります。
医師不足や人材流出は、多くの国や地域で共通して議論されるテーマです。スロバキアでの危機的状況は、医療従事者の声をどう受け止め、持続可能な医療体制をどう設計するのかという、より広い問いを私たちに投げかけています。
Reference(s):
Crisis in Slovakian healthcare system as doctors plan mass resignation
cgtn.com







