韓国・尹錫悦大統領、起訴や予備拘束令状には応じる意向 逮捕令状は「無効」と主張
弾劾で職務停止中の韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が、起訴や「予備拘束令状」には従う一方で、現在出されている逮捕令状については「無効だ」として応じない姿勢を示しています。韓国政治を大きく揺るがしている一連の動きと、その背景を整理します。
「起訴・予備拘束には応じる」弁護団が説明
尹氏の弁護団は、水曜日に地元メディアに対し、次のような方針を明らかにしました。
- 尹氏は、検察に起訴された場合には裁判に出廷する意思がある
- 検察が予備拘束令状を請求し、裁判所が発付した場合には、これにも従う意向がある
一方で、弁護団は現在の逮捕令状について「無効だ」と主張し、この令状に基づく捜査には協力しない考えを示しました。拘束令状はソウル中央地裁が出すべきであり、ソウル西部地裁が発付した現行の令状は適切でないと指摘しています。
予備拘束令状とは何か
記事によると、「予備拘束令状」は、すぐに被疑者の身柄を拘束できない場合に検察が請求する特別な令状です。要点は次の通りです。
- 逃走中などで、その場で逮捕することが難しい被疑者を対象とする
- 検察が裁判所に請求し、裁判官が発付する
- 有効期間は最大20日間で、期間は裁判官がランダムに決めるが、多くは10日前後とされる
尹氏側は、この予備拘束令状であれば従うと表明しており、自らの姿勢が「法的手続きには従う」ものであると強調しようとしているように見えます。
逮捕令状延長と「逃亡説」への反論
ソウル西部地裁は火曜日、尹氏の身柄を最長48時間拘束できる2件目の逮捕令状を発付しました。これは、前日月曜日に期限が切れた最初の逮捕令状の効力を事実上延長する形となっています。
こうした動きの中で、一部の国会議員からは「尹氏が公邸から逃亡したのではないか」との疑念も出ました。しかし、弁護人の一人である尹甲根(ユン・カブグン)氏は、火曜日に大統領公邸で尹氏と面会したと説明し、逃亡説を強く否定しています。これらの主張を「尹氏を中傷する悪意あるうわさだ」と批判し、世論の混乱に釘を刺しました。
1月3日の逮捕未遂と合同捜査チーム
捜査当局は2025年1月3日、大統領公邸で尹氏の逮捕を試みました。しかし、この試みは大統領警護室が令状の執行を阻止したため、身柄の確保には至っていません。
この逮捕を試みた合同捜査チームは、次の3機関で構成されていました。
- 高位公職者犯罪捜査処
- 国家捜査本部
- 国防部の捜査本部
汚職捜査機関、警察組織、防衛関連の捜査機関が一体となる体制からも、この案件が政治・治安・軍事の側面を併せ持つ重要事案として扱われていることがうかがえます。
弾劾と戒厳令宣言:発端は2024年12月
今回の事態の発端は、2024年12月にさかのぼります。捜査機関は尹氏を「内乱罪の首謀者の疑いがある」と位置づけており、尹氏は2024年12月3日夜に戒厳令を宣言しました。しかし、この戒厳令は数時間後に国会によって撤回されました。
その後の2024年12月14日、韓国国会は尹氏に対する弾劾訴追案を可決しました。弾劾案は憲法裁判所に送られ、最大180日間の審理に付されることになり、その間、尹氏の大統領としての権限は停止される仕組みです。
逮捕令状の期限が近づくなか、尹氏の逮捕に賛成する人々と反対する人々がそれぞれ集会を開いたことも報じられており、社会の分断が浮き彫りになっています。
なぜ尹氏は「一部には従い、一部には従わない」のか
弁護団の説明を踏まえると、尹氏のスタンスは次のように整理できます。
- 起訴されれば、公判には出廷する意思がある
- 予備拘束令状が発付されれば、これにも従う姿勢を示している
- 現在の逮捕令状については「手続き上の問題があり無効」として、捜査への協力を拒む
- 拘束令状はソウル中央地裁が発付すべきであり、ソウル西部地裁が出した令状は適切でないと主張している
つまり尹氏側は、司法手続きそのものを否定するのではなく、「どの裁判所が、どのような手続きで令状を出したのか」という点を争点に据え、法の手続きの正当性を巡る攻防に持ち込んでいると見ることができます。
韓国民主主義への問いかけ
弾劾中の現職大統領を巡り、戒厳令宣言とその撤回、内乱罪の疑い、逮捕令状と予備拘束令状、公邸での逮捕未遂、そして「逃亡説」を巡る応酬までが重なっている今回のケースは、韓国の民主主義と権力分立のあり方に改めて注目を集めています。
今回のプロセスでは、
- 国会が戒厳令を撤回し、弾劾訴追案を可決する立法府の動き
- 憲法裁判所が最大180日かけて弾劾の是非を審理する司法府の役割
- 複数の捜査機関と裁判所が、刑事責任をめぐって令状を発付・執行する捜査・司法のプロセス
といった、複層的な手続きが同時並行で進められています。政治的な立場や評価は大きく分かれうるものの、どこまで透明で説明責任のあるプロセスが貫かれるかは、韓国社会にとって大きな試金石になっていきそうです。
読者のみなさんは、国家のトップに対する弾劾や刑事捜査と、政治的対立や世論との関係をどう見ますか。SNSで議論を交わす前に、事実関係と手続きをいったん整理しておくことが、感情に流されすぎない視点につながるかもしれません。
Reference(s):
Yoon Suk-yeol to comply with indictment, preliminary detention warrant
cgtn.com








