トランプ次期大統領、グリーンランドとパナマ運河への威嚇発言で何を狙うのか
グリーンランドの「所有」やパナマ運河の「取り戻し」にまで言及したドナルド・トランプ次期米大統領の発言が波紋を広げています。異例の威嚇発言の背景には、どのような狙いがあるのでしょうか。
大使指名と領土「購入」を結びつけた異例の発信
トランプ氏は、デンマーク駐在大使の候補者を発表する際、自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」に、グリーンランドの所有と管理は米国の国益と世界の自由のために「絶対に必要だ」とするメッセージを投稿しました。デンマークからグリーンランドを買収すべきだという主張です。
それに先立ち、パナマ運河についても「米国にとって極めて重要な国家資産」と位置づけ、運河を「取り戻す」とまで発言していました。さらにその前には、カナダを「米国51番目の州」にするという構想にも言及し、クリスマスメッセージでもこれらの主張を重ねています。
軍事力・経済制裁も排除せず
米連邦議会が選挙結果を正式に認定した後に開かれた初の記者会見で、トランプ氏はグリーンランドやパナマ運河をめぐり軍事力や経済的な圧力を用いる可能性を否定するのかと問われました。これに対し、同氏はそのような選択肢を「排除しない」と述べ、実力行使も視野に入れうる姿勢を示しました。
通常、各国への大使指名は関係強化や対話促進を目的とした外交的な手続きです。大使人事と、他国の領土や戦略拠点の「買収」や「奪還」を公然と結びつけるのは、きわめて異例だといえます。
トランプ氏は何を狙っているのか
これらの発言の真意について、トランプ氏自身が詳細に説明しているわけではありません。ただ、発言のタイミングや言葉の選び方から、いくつかの狙いが浮かび上がってきます。
1. 国内支持層への「強さ」のアピール
第一に考えられるのは、国内向けの政治メッセージです。グリーンランドやパナマ運河、カナダといったキーワードは、米国の領土拡大や影響力の強化を想起させます。これらを「取り戻す」「所有する」といった表現で語ることは、国家主権と力の行使を重視する支持層に対し、「強いリーダー」としてのイメージを強く印象づける狙いがあるとみられます。
また、「国家安全保障」や「世界の自由」といった抽象的な言葉で正当化することで、具体的な政策の中身よりも、感情的な安心感や高揚感に訴える効果も期待していると考えられます。
2. 交渉を有利に進めるための「最大要求」
第二に、交渉術としての可能性です。ビジネスや外交の現場では、あえて実現が難しいほど高い要求を突きつけ、その後の交渉で「落としどころ」を探る手法がしばしば用いられます。今回のように、買収や奪還といった最大限の要求を口にすることも、その一種とみることができます。
この見方に立てば、トランプ氏の発言は、将来の交渉に向けて相手側に強いプレッシャーをかける「出発点」として機能します。最終的により穏当な合意に達したとしても、当初の発言とのギャップを「譲歩」としてアピールしやすくなるからです。
3. 「戦略的資産」をめぐる発想転換のアピール
第三に、外交・安全保障の優先順位を大きく変えるというメッセージです。グリーンランドは北極圏に位置し、パナマ運河は大西洋と太平洋を結ぶ要衝です。トランプ氏がこれらを「絶対に必要な資産」として強調するのは、地政学上の拠点や重要インフラの「所有・支配」により重きを置く外交方針を示唆しているとも読めます。
こうした発想は、単に同盟や国際機関を通じて協力するという従来型のアプローチよりも、米国が直接的なコントロールを握ることを重視する方向性を連想させます。
国際社会と同盟国へのメッセージ
他国の領土や運河について、軍事力や経済的圧力を含む実力行使の可能性にまで言及したことは、国際社会に少なくない不安を与えます。デンマークやパナマ、カナダといった関係国にとっては、自国の主権や外交方針に対する圧力として受け止められかねません。
一方で、トランプ氏の発言がそのまま具体的な政策に直結するとは限りません。就任前後の発言には、交渉のための「ブラフ」(はったり)や、国内向けパフォーマンスの要素が織り込まれることも少なくないからです。実際にどのような政策が打ち出されるのかは、就任後の人事や具体的な外交文書、各国との協議の中身を見ていく必要があります。
「強さ」の演出と現実の外交のあいだ
グリーンランドやパナマ運河をめぐる一連の威嚇的な発言は、トランプ次期大統領が「強さ」や「取引」を前面に押し出すスタイルを象徴するものだといえます。ただし、強い言葉で期待を高めた後に、現実の外交がそれに追いつかなければ、国内外の失望や不信を招くリスクもあります。
私たちがニュースを読むときに重要なのは、発言そのもののインパクトだけでなく、
- 誰に向けて発信された言葉なのか
- どのタイミングで、どの場面で語られたのか
- どこまでが交渉術やパフォーマンスで、どこからが具体的な政策なのか
といった点を落ち着いて見極めることです。トランプ氏のグリーンランド・パナマ運河発言は、今後の米国外交を読み解く試金石であると同時に、「強いメッセージ」と「現実の外交」の距離について考える材料にもなっています。
Reference(s):
What does Trump want from threats at Greenland, Panama Canal?
cgtn.com








