ロサンゼルス山火事、給水不足と誤警報で住民の怒り 責任は誰に?
米カリフォルニア州ロサンゼルス周辺で続く大規模な山火事で、少なくとも11人が死亡し、数千戸の住宅が焼失しました。被害が拡大するなか、住民の間では給水不足や誤った避難警報など、誰に責任があるのかをめぐる怒りと疑問が高まっています。
ロサンゼルスで何が起きたのか
今回の山火事は、住宅地を猛スピードでのみ込み、多くの人が避難を余儀なくされています。米大統領ジョー・バイデン氏は現場の様子を戦場のようだと表現し、被害の深刻さを強調しました。
ロサンゼルス市と郡の当局は、この山火事を「完全な嵐」とも言うべき異例の事態だと説明しています。時速100マイル(約160キロ)に達する強風により、上空からの消火活動に必要な航空機の投入が初動段階ではほとんどできなかったとされています。
責任追及の焦点:給水不足と誤警報
現地では、消火栓から水が出ず消防隊が十分な消火活動を行えなかったとの証言が相次ぎ、インフラの不備への不満が噴き出しています。こうした状況を受けて、カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事は、市の水道事業などを対象にした独立調査の実施を命じ、初動段階での水不足は極めて憂慮すべきだと述べました。
一方で、専門家は米CNNに対し、今回のような規模の火災では、たとえすべての消火栓が正常に機能していたとしても消火には追いつかなかった可能性が高いと指摘しています。極端な強風、異常な乾燥、そして複数の火災が同時多発的に発生したことが、被害を避けようのないものにしたという見方です。
スマホに届いた誤った避難警報
住民の混乱に拍車をかけたのが、誤送信された避難警報です。金曜日には、数百万人規模の携帯電話に避難を促す警報が誤って送られ、一部の地域では必要のない避難が起きるなど、混乱と不安が広がりました。
ロサンゼルス郡緊急対策局のケビン・マクガウン局長は記者会見で「どれほどおわびを申し上げても足りない」と深く謝罪し、原因の検証と再発防止に取り組むと説明しています。
慢性的な人員・予算不足も
ロサンゼルス消防局のクリスティン・クラウリー局長は、地元テレビ局のインタビューで、最近の予算削減の影響もあり、消防局は慢性的な人員不足と装備の不足に悩まされていると述べました。十分な人員と装備があれば、初動対応や避難誘導がよりスムーズだったのではないかという議論も出ています。
政治的な応酬:トランプ氏とニューサム知事
山火事対応をめぐっては、政治的な対立も表面化しています。次期米大統領のドナルド・トランプ氏は、ソーシャルメディアへの投稿で、消火栓の水不足はニューサム知事の責任だと主張しました。トランプ氏は、知事が署名を拒んだために大量の水を確保できなかったとし、特定の水供給復旧に関する宣言に言及しました。
しかし、ニューサム知事の報道担当や複数の米メディアによると、そのような宣言は実際には存在しないとされています。知事は過去に、北カリフォルニアから州南部の農業地帯への大規模な送水を拡大する試みに反対してきましたが、これは絶滅危惧種の魚類デルタ・スメルトなどへの影響を懸念したものだと説明されています。
また、英BBCによると、南カリフォルニアでは干ばつが続いているものの、地域の主要な貯水池の多くは現在も例年の平均を上回る水位を維持しており、緊急に水が底をついているわけではないといいます。
トランプ氏の批判に対し、ニューサム知事はトランプ氏にロサンゼルスを共に視察するよう招待したうえで、この国の精神に照らしても、悲劇を政治利用したり、傍観者として誤った情報を広めたりするべきではないと述べ、冷静な対応を呼びかけました。
気候変動と「完全な嵐」
当局は、出火の具体的な原因を特定するにはまだ早すぎるとしており、詳細な調査が続いています。
山火事そのものは自然現象としても起こり得ますが、科学者たちは、人為的な気候変動が気象パターンを変え、火災の振る舞いを変化させていると指摘しています。南カリフォルニアでは、この数年は雨の多い年が続いた後に今年は非常に乾燥した年となり、その間に生い茂った草木が一気に燃えやすい燃料となっていました。
こうした背景の上に、異常な強風と複数の火災の同時発生が重なり、当局が言うところの「完全な嵐」が生まれた形です。
これから問われること:備えと情報発信
今回のロサンゼルス山火事は、誰か一人のミスだけで説明できるものではなく、気候、インフラ、財政、政治、情報発信といった複数の要因が重なり合った危機だといえます。
今後の焦点となりそうなのは、次のような点です。
- 強風や乾燥が重なる中でも機能する、水道・電力などライフラインの強靱化
- 誤送信を防ぎつつ、必要なときには確実に届く避難警報システムの見直し
- 消防や緊急対応部門への安定した予算・人員の確保
- SNS時代における、政治的対立をあおらない危機コミュニケーションのあり方
ロサンゼルスの住民がいま求めているのは、単なる責任のなすりつけではなく、次の災害で同じ悲劇を繰り返さないための具体的な改善策です。今回の山火事は、日本を含む世界各地で進む気候変動の時代に、私たちがどのようにリスクと向き合うべきかを考えさせる事例となっています。
Reference(s):
Who's to blame? Californians seek answers amid Los Angeles wildfires
cgtn.com







