トランプ氏「前例なき犯罪的試み」 米特別検察官報告書が示した2020年大統領選の舞台裏
アメリカ司法省の特別検察官ジャック・スミス氏がまとめた報告書が火曜日に公表され、ドナルド・トランプ氏が2020年大統領選の結果を覆そうと「前例のない犯罪的な試み」を行っていたと結論づけたことが明らかになりました。大統領経験者の刑事責任と民主主義のルールをどう守るのかという問題が、改めて世界の注目を集めています。
報告書が示した「前例なき犯罪的試み」
報告書によると、スミス氏はトランプ氏が2020年の大統領選で敗北した後も政権にとどまろうとする過程で、「前例のない犯罪的な試み」に関与したと判断しました。その結果として、トランプ氏に対して4つの罪状による起訴に踏み切った経緯が詳しく説明されています。
起訴状は、議会による選挙結果の集計と認定を妨害する共謀、正確な選挙結果をアメリカから奪う詐取、そして有権者の投票権を侵害する行為などをトランプ氏に問う内容でした。報告書は、集められた証拠は陪審裁判で有罪評決を得るのに十分だったと結論づけています。
しかし同時に、報告書はこの事件を裁判にかけることは実現しなかったと指摘します。理由として、トランプ氏がその後の大統領選で勝利し、1月20日に大統領職へ復帰することが確実になったこと、そして着任後は「現職大統領を起訴しない」という司法省の長年の方針が適用されることが挙げられています。
トランプ陣営は強く反発
スミス氏は報告書を補足する書簡の中で、自身と捜査チームの判断を改めて擁護しました。トランプ氏が、司法省やホワイトハウスによる政治的介入があったと繰り返し主張していることについて、スミス氏は「バイデン政権やほかの政治的アクターから影響や指示を受けたというトランプ氏の主張は、ひと言でいえば『ばかげている』」と強い表現で退けています。
これに対しトランプ氏は、SNSプラットフォーム「トゥルース・ソーシャル」への投稿で、スミス氏を「選挙前に裁判を実現できなかった無能な検察官」と罵り、捜査全体を再び批判しました。
またトランプ氏の弁護団は、メリック・ガーランド司法長官宛ての書簡を通じて、報告書を「政治的な動機に基づく攻撃」だと非難。トランプ氏のホワイトハウス復帰を前に報告書を公表することは、大統領職への移行プロセスに害を及ぼすと主張しました。この書簡は司法省によって公開されています。
1月6日襲撃と「反乱法」検討の新情報
報告書の多くの証拠は、これまでの訴訟や議会調査などを通じて既に公になっていたものですが、新たな詳細も含まれています。その一つが、2021年1月6日の米連邦議会議事堂襲撃をめぐり、検察側がトランプ氏を「反乱法」と呼ばれる法律の下で起訴することを検討していた、という点です。
最終的に検察は、この反乱法による訴追は法的リスクが高いと判断し、またトランプ氏が暴動の「全体像」にまで及ぶ暴力を意図していたと証明する証拠が不十分だとして、この線での起訴は見送られました。報告書は、議会襲撃がトランプ氏の支持者による、2020年選挙結果の議会認定を阻止する試みだったことも改めて記しています。
共謀者と機密文書事件:未解決の部分
スミス氏のチームは、トランプ氏と共に計画を進めたとされる複数の「共謀者」についても検討しました。報告書は、一部の人物には刑事責任を問うことが正当化されうると判断したものの、最終的な結論には至らなかったとしています。これらの共謀者には、トランプ氏の元弁護士らが含まれていることが、以前の起訴状で示唆されていました。
報告書の第2部は、トランプ氏が退任後に機密性の高い国家安全保障関連文書を不正に持ち出し、保管していたとされる別の事件を扱っています。この部分では、トランプ氏の側近2人が訴追されていることも触れられていますが、司法省はその裁判が続いていることから、この第2部を公表しない方針を示しています。
スミス氏は司法省を既に離れており、トランプ氏が昨年の大統領選で勝利した後、現職大統領に対する訴追を避けるという方針を理由に、トランプ氏に対する2件の事件の訴追を取り下げました。いずれの事件も、公判には至っていません。トランプ氏はすべての罪状について無罪を主張し、スミス氏を「常軌を逸している」と批判しながら、自身への訴追は選挙戦や政治運動を妨害するための政治的な攻撃だと訴えてきました。
さらにトランプ氏と機密文書事件の元共被告2人は、大統領への復帰を目前に控えたタイミングで、この報告書の公開を差し止めるよう裁判所に求めましたが、その要求は退けられ、公表が認められました。
何が問われているのか
今回の報告書は、トランプ氏個人の法的評価にとどまらず、いくつかの重要な論点を突きつけています。一つは、選挙結果を受け入れ、平和的な政権移行を行うという民主主義の根本原則を、どこまで法によって守るべきかという問いです。
もう一つは、現職あるいは復任予定の大統領に対して、どこまで刑事責任を問うべきなのかという問題です。司法省が長年維持してきた「現職大統領は起訴しない」という方針は、行政権の安定を守る一方で、説明責任や法の下の平等とのバランスをどう取るのかという議論を呼んでいます。
アメリカ政治や国際ニュースを追う日本の読者にとっても、この報告書は「法の支配」と「政治的中立性」をどう両立させるのかを考える材料になります。報告書の内容とその公表のタイミングをめぐり、アメリカ国内外での議論は今後も続くとみられます。
押さえておきたいポイント
- 特別検察官の報告書は、トランプ氏が2020年大統領選の結果を覆そうとした「前例なき犯罪的試み」に関与したと結論づけた。
- 証拠は有罪に足るとされながらも、大統領選での勝利と司法省の方針により、公判は実現しなかった。
- 1月6日の連邦議会襲撃をめぐる「反乱法」適用の検討や、機密文書事件など、新たな事実や未公開部分も残されている。
- トランプ氏とその陣営は一貫して無罪を主張し、「政治的に動機づけられた攻撃」だと反発している。
- 大統領経験者に対する刑事責任と民主主義のルールをどう守るのかという論点は、今後もアメリカ政治と国際社会の重要な関心事であり続けそうだ。
Reference(s):
Trump engaged in 'criminal effort' to overturn 2020 election: report
cgtn.com








