米国がキューバの「テロ支援国家」指定を解除 バイデン政権の狙いは?
米国のバイデン政権が、キューバ政策で大きな方針転換に踏み切りました。ホワイトハウスによると、キューバを「テロ支援国家」の指定から外し、政治犯の解放と引き換えに制裁の一部を見直す方針を議会に通知しました。
バイデン政権、キューバのテロ支援国家指定を解除へ
ホワイトハウスは、バイデン大統領がキューバの「テロ支援国家」指定を解除すると議会に正式通知したと明らかにしました。これは、キューバ国内の政治犯や、米政府が「不当に拘束されている」と判断する人々の釈放と結びついた合意の一環とされています。
大統領の決定を事前説明した政権高官は、キューバの現状について「国際テロを支援しているという信頼に足る証拠はない」と結論づけたと説明しました。これにより、キューバをテロ支援国家リストに再指定したトランプ前政権の措置は撤回されることになります。
トランプ氏による再指定は、2021年1月、大統領としての最初の任期の終盤に行われました。当時の動きは、オバマ政権第2期に進んだキューバとの関係改善を巻き戻す狙いがあったとされています。オバマ政権期には、いったんキューバのテロ支援国家指定が解除されていました。
政治犯と拘束者の解放が合意のカギに
今回の指定解除は、政治犯とされる人々の解放を条件とした「取引」の色彩が強い点でも注目されています。政権高官によると、合意が完全に履行されれば、キューバ側からは「数十人規模」に上る囚人が釈放される見込みだといいます。
とくに、バイデン政権は、キューバ国内の政治犯に加え、ワシントンが「不当に拘束されている」と認定した人々の解放を重視しています。高官らは、これらの釈放が、来年1月20日に予定されているトランプ氏の大統領再就任までに進むことを期待しているとしています。
バイデン政権にとって今回の合意は、次の政権にバトンを渡す前に、人権問題をめぐる一定の成果を形にする意味合いも持つと受け止められます。
トランプ時代の対キューバ制裁を相次いで見直し
テロ支援国家指定の解除と並行して、バイデン大統領はトランプ前政権が2017年に打ち出した対キューバ制裁方針も見直しました。
2017年方針「NSPM-5」を撤回
大統領は、「National Security Presidential Memorandum 5(NSPM-5)」と呼ばれる2017年の対キューバ制裁政策を取り消す国家安全保障メモランダムに署名しました。この方針は、特定のキューバ人やキューバの団体が、米国の個人・企業と金融取引を行うことを制限するものでした。
今回の署名により、こうした対象となっていたキューバの個人・団体について、米国の個人・企業との金融取引に関する制限は、事実上終了することになります。
ヘルムズ・バートン法第3条の適用を6か月停止
さらにバイデン政権は、ヘルムズ・バートン法の第3条について、今後6か月間の適用免除(ウェーバー)を発動しました。ホワイトハウスのジャン=ピエール報道官による声明によれば、これはキューバ政府に囚人解放を一段と促すための措置と位置づけられています。
この免除により、1959年のキューバ革命後にキューバ当局によって没収された財産をめぐり、米国籍を持つ人やその他の個人が、米国内の裁判所で損害賠償を求める訴えを起こすことは、少なくとも今後6か月間はできなくなります。
制裁や訴訟の圧力を一部和らげる代わりに、キューバ側からの囚人解放を引き出そうとする「インセンティブ」として設計された措置だといえます。
カトリック教会とフランシスコ教皇の仲介
政権高官やジャン=ピエール報道官は、今回の囚人解放合意の成立には、ローマ教皇フランシスコが率いるカトリック教会の関与があったことにも言及しました。具体的なやり取りは明らかにされていませんが、教会が仲介や信頼構築の役割を担ったと示唆しています。
バイデン大統領は最近、フランシスコ教皇に米国の大統領自由勲章を授与しました。宗教界、とくにバチカンとの関係強化が、囚人解放と制裁見直しという今回の外交パッケージの背景の一つとなっている可能性があります。
米キューバ関係はどこへ向かうのか
今回の一連の動きは、
- キューバのテロ支援国家指定の解除
- 2017年の対キューバ制裁方針の撤回
- ヘルムズ・バートン法第3条の適用免除
- 政治犯・拘束者の解放を条件とした合意
という複数の要素が絡み合った、大きな政策変更となっています。
一方で、課題も見えています。今後の注目ポイントとしては、次のような点が挙げられます。
- キューバによる政治犯や拘束者の解放が、どの程度の規模とスピードで進むのか
- 来年1月20日のトランプ氏再就任後も、今回の合意と緩和措置が維持されるのか、それとも見直されるのか
- 米議会や世論が、「制裁緩和」と「人権問題への対応」を組み合わせた今回のアプローチをどう評価するのか
オバマ政権の関係改善、トランプ政権の巻き戻し、そしてバイデン政権の再調整と、米国の対キューバ政策は振り子のように揺れてきました。来年の政権移行を前に、今回の決定が一時的な緩和にとどまるのか、それとも新たな関係構築のスタートとなるのかが問われています。
国際ニュースとしてのインパクトだけでなく、「制裁」と「対話」をどう組み合わせるのか、人権と外交のバランスをどう取るのか――今回の動きは、私たちが世界を見る視点を静かに問いかけています。
Reference(s):
Biden administration delists Cuba as state sponsor of terrorism
cgtn.com








