LA山火事と民間消防 富裕層優先で噴き出した「防災格差」 video poster
ロサンゼルスの大規模な山火事をめぐり、「民間消防チーム」が富裕層の住宅地を優先的に守る一方、その近くの地域が燃え広がるままになっていたとして、強い批判と議論が起きています。災害対応にまで広がる社会格差の問題として、国際ニュースとしても注目されています。
ロサンゼルスで何が起きたのか
報道によると、ロサンゼルス周辺で発生した山火事で、裕福な住民が暮らすエリアには、契約に基づき「民間の消防チーム」が出動し、家屋の保護や延焼防止にあたりました。一方で、その近くにある別の地域では、十分な消火や防御活動が行き届かず、家や建物が次々に焼け落ちたとされています。
この「守られた街」と「燃えたままの街」の対比が明らかになるにつれ、住民や社会から怒りと疑問の声が上がっています。
なぜ民間消防が批判されているのか
「お金があれば家は守られるのか」という不信感
今回のロサンゼルスの山火事で、多くの人が問題視しているのは、「お金を払える人の家だけが優先的に守られたのではないか」という点です。公的な消防が手一杯になる中で、民間チームが富裕層エリアに集中していたと受け止められたことで、「命や暮らしの安全までもが、支払能力で分かれてしまうのか」という強い不信感が広がりました。
SNSで広がる「防災格差」への怒り
現地では、「同じ煙を吸い、同じ炎におびえているのに、なぜ一部の地区だけが手厚く守られるのか」といった声がSNS上で拡散しているとされます。特に、
・高級住宅地には民間チームが常駐して防御ラインを築いていた
・すぐ近くの、比較的所得の低い地域では十分な支援が届かなかった
といった対照的な状況は、「防災の二極化」を象徴する出来事として受け止められています。
民間消防サービスとはどんな仕組みか
今回、批判の的となっている民間消防サービスとは、自治体の消防とは別に、民間企業が提供する有料の「消防・防災サービス」です。一般的には次のような形で運用されます。
- 住民や保険会社が民間消防会社と契約し、山火事などの際に優先的な防御や消火支援を受ける
- 専用の消防車や防火設備を備え、契約エリアに重点的に出動する
- 現場では、公的消防とは別系統の指揮系統で動く場合がある
もともと山火事の多い地域では、「自宅を守るための追加オプション」として利用されてきた側面があります。しかし今回のように、近隣エリアで明暗が分かれる形になると、その存在自体が社会的な論争の火種になります。
浮き彫りになった3つの論点
1. 安全も「お金次第」になってよいのか
第一の論点は、命と暮らしの安全に関わるサービスを、どこまで市場に委ねてよいのかという問題です。
・公的な消防・救急は、税金によって「だれでも利用できる」ことを前提としています。
・一方で民間消防は、契約者にサービスが集中する性質を持ちます。
今回のように、同じ地域で防御の手厚さが大きく異なってしまうと、「安全は公共財なのか、それとも個人が買う商品なのか」という根本的な問いが突きつけられます。
2. 公的消防との役割分担と公平性
第二の論点は、公的な消防と民間消防との役割分担です。
・公的消防は、火の勢いや風向きなどを踏まえ、地域全体の被害を最小化する観点から出動を判断します。
・民間消防は、契約者の資産を守ることに重点を置く傾向があります。
この二つが十分に連携せずに動くと、
・一部エリアにリソースが集中し、他が手薄になる
・全体としての被害を抑える最適な配置にならない
といったリスクが生まれます。今回、富裕層エリアとその周辺地域の「温度差」が可視化されたことで、「公的サービスをどこまで強化すべきか」「民間との線引きをどうするか」という議論が改めて高まっています。
3. 保険・テクノロジーとの連動が生む新たな格差
民間消防サービスは、多くの場合、火災保険などとセットで提供されます。
・高額な保険・サービスに加入できる人は、最新の防災テクノロジーや民間消防のサポートを受けられる
・加入できない人は、従来の公的サービスのみに頼ることになります
ドローンによる監視やデータ解析など、新しい技術を使った防災対策が進むほど、それにアクセスできるかどうかが新たな格差要因になりかねません。今回のロサンゼルスのケースは、その一端を映し出す事例といえます。
日本にとっても他人事ではない
日本では、消防は基本的に公的機関によって担われており、民間消防の存在は限定的です。しかし、気候変動の影響による豪雨、台風、土砂災害など、防災の課題は年々大きくなっています。
仮に今後、日本でも
・有料の民間防災サービス
・高額な防災設備や専用アプリ
が広がっていったとしたら、ロサンゼルスで起きているような「防災格差」が生まれる可能性もゼロではありません。
災害大国である日本にとって、今回のロサンゼルスの山火事と民間消防をめぐる議論は、
・誰の命と暮らしを、どのように優先して守るのか
・公的サービスと民間サービスのバランスをどう設計するのか
を考えるきっかけになります。
山火事という遠い国のニュースのように見えますが、背景にあるのは「安全と格差」という、私たちの社会にも通じるテーマです。防災まで二極化してしまう社会でよいのか――この問いを、自分の街、自分の暮らしに引き寄せて考えることが求められています。
Reference(s):
LA wildfires: Outrage as private firefighters protect affluent areas
cgtn.com







