バイデン米大統領、退任演説で「危険な寡頭制」に警鐘
今年初め、当時のバイデン米大統領は任期終了を目前に控えた退任演説で、トランプ氏の再登場に伴いアメリカで「危険な寡頭制」が形作られつつあると警告し、国民に対して「民主主義の番人でいてほしい」と呼びかけました。国際ニュースとしても、民主主義とテクノロジー、富の集中をめぐる問題を象徴する演説となりました。
オーバルオフィスからの「別れの挨拶」
バイデン氏はホワイトハウスの執務室であるオーバルオフィスから、ゴールデンタイムのテレビ演説を行いました。単独任期の終わりを前にしたこの演説は、今年1月20日に予定されていたトランプ氏の2期目就任を控えた「別れの言葉」と位置づけられました。
82歳のバイデン氏は、アメリカで極端な富と権力、影響力を持つごく少数の人々による「寡頭制」が形を取りつつあり、それが民主主義そのものを脅かしていると強調しました。
- 「極端な富、権力、影響力を持つ寡頭制がアメリカで形作られている」
- 「それは民主主義全体を脅かす危険な権力集中だ」と指摘
- 国民に対し「今度は皆さんが見張り役になる番だ」と訴え
「テック産業複合体」と富の集中への懸念
バイデン氏がとりわけ問題視したのは、超富裕層と巨大テック企業が結びついた「テック産業複合体」です。選挙や世論形成に大きな影響力を持つこうした企業グループが、十分なチェックを受けないまま権力を握ることへの警戒感を示しました。
演説では、民主主義は多様な声と権力分立の上に成り立つ一方で、富と影響力の過度な集中は、その前提を揺るがしかねないというメッセージが繰り返されました。富裕層やテック企業を名指しで断罪するのではなく、制度としてのバランスの重要性を訴えた形です。
SNSと「誤情報の雪崩」への批判
今回の退任演説で、バイデン氏はソーシャルメディア企業への懸念も前面に出しました。X(旧ツイッター)のオーナーで世界有数の富豪であるイーロン・マスク氏がトランプ次期政権で重要な役割を担うとされることや、メタのマーク・ザッカーバーグ氏が共和党と接近しているという動きに触れつつ、SNS空間での情報のあり方を問題提起しました。
バイデン氏は、アメリカの人々が「誤情報と偽情報の雪崩」に埋もれており、それが権力乱用を可能にしていると指摘しました。SNSが政治や選挙に与える影響が大きくなるなかで、どこまで企業の自律に委ねるべきか、どこから公共性としてのルールが必要なのかという問いが改めて浮かび上がります。
トランプ再登場と民主主義への「最後のメッセージ」
バイデン氏は、2020年の大統領選で破ったトランプ氏に、自らの任期終了後にホワイトハウスを引き渡すことになります。トランプ氏はいまも2020年選挙の結果に異議を唱え続けており、そうした文脈の中での政権交代は、アメリカ民主主義の行方をめぐる世界的な関心事となりました。
退任演説の中で、バイデン氏は自らを「国民のために50年以上仕えてきた政治家」と位置づけ、「この国に心と魂をささげてきた」と振り返りました。そのうえで、これからは市民一人ひとりが民主主義を守る役割を担うのだと強調しました。
外交と実績アピール:イスラエル・ハマス停戦合意にも言及
演説当日、イスラエルとハマスが停戦と人質解放の合意に至ったことも、バイデン政権にとって重要なニュースでした。バイデン氏は、自身の政権がこの合意に向けて調整を行ったと説明するとともに、トランプ次期政権とも協力して合意を進めるよう指示したと述べました。
ホワイトハウスは同じ日に、経済、医療、気候変動対策など、バイデン政権の成果をまとめた100ページ超の資料も公表しました。これは、自らのレガシー(政治的遺産)を記録に残すと同時に、政権交代後も政策の継続性を意識させる狙いがあったとみられます。
今につながる問い:富、テック、民主主義
今年1月の退任演説は、現在から振り返っても、アメリカ政治や国際ニュースを考えるうえでいくつかの重要な問いを投げかけています。
- 極端な富と権力の集中は、どの時点で「寡頭制」と呼ぶべきなのか
- SNS企業は、言論空間に対してどこまで責任を負うべきなのか
- 激しい対立の後に政権を引き継ぐリーダーは、どのように有権者に語りかけるべきなのか
アメリカの退任演説は一国の出来事でありながら、富の偏在やテクノロジーの力が増すなかで、世界中の民主主義が直面する課題を映し出しています。日本を含む他の国々にとっても、バイデン氏のメッセージをどう受け止めるかは、これからの政治や社会を考えるうえで参考になる視点と言えるでしょう。
Reference(s):
cgtn.com








