バイデン大統領がファウチ氏らに恩赦 アメリカ政治の分断に一石
米国のジョー・バイデン大統領は2025年12月8日(月)、元ホワイトハウス首席医療顧問のアンソニー・ファウチ氏、元将軍のマーク・ミリー氏、「1月6日」議会委員会のメンバーや証人らに対する恩赦を発表しました。アメリカ政治の分断を象徴してきた顔ぶれが一度に対象となったことで、今回の恩赦は国内外で大きな議論を呼びそうです。
何が起きたのか
バイデン大統領は8日の発表で、複数の元政府関係者や議会関係者に大統領恩赦を与える決定を明らかにしました。対象には、政権の医療政策を担ったファウチ氏、軍の要職を務めたとされるミリー氏に加え、「1月6日」議会委員会の委員や証人も含まれます。
「1月6日」議会委員会は、その名称からも分かるように、近年のアメリカ政治における重大な出来事をめぐって設置された特別委員会とされます。この委員会のメンバーや証人も恩赦の対象に含めたことで、単一の事件や人物ではなく、広く政治的対立に関わった人々を包み込む決定になったことがうかがえます。
恩赦とは何か 大統領が持つ強い権限
恩赦とは、国家元首が刑事責任を免除したり、刑罰を軽減したりする決定を指します。アメリカの大統領恩赦は、連邦法に関わる罪を対象とし、有罪判決後だけでなく、広く「起こり得る罪」にまで及ぶ場合があります。
一度恩赦が与えられると、その人物は対象となった行為について連邦レベルでの刑事責任を問われなくなります。そのため、大統領恩赦は「最も強い政治権限の一つ」とも言われ、行使のたびに「どこまで使うべきか」をめぐる議論が起こります。
なぜファウチ氏とミリー氏が注目されるのか
アンソニー・ファウチ氏は、ホワイトハウスの首席医療顧問として、政権の医療・公衆衛生政策の前面に立ってきた人物です。その発言や判断は、専門家としての見解であると同時に、政治的な意味合いも帯びるようになり、強い支持と批判の双方を集めてきました。
マーク・ミリー氏は、米軍の将軍として安全保障分野で重要な役割を担ってきた元軍高官です。軍の専門性と文民統制(シビリアン・コントロール)のあり方をめぐる議論の中で、その発言や行動が注目されてきた人物でもあります。
こうした人物に対する恩赦は、単なる個別の法的判断にとどまらず、「専門家や軍人が政治対立の渦中に置かれたとき、どこまで法的責任を問うべきか」という、より大きな問いを突きつけています。
「1月6日」委員会と証人への恩赦が意味するもの
今回の恩赦には、「1月6日」議会委員会のメンバーや、その場で証言した人々も含まれるとされています。委員会の活動や証言は、アメリカ国内で強い政治的対立を生んできました。
恩赦によって、委員会に関わった人々は、将来の連邦レベルでの刑事訴追に対して一定の保護を得ることになります。一方で、「政治的な判断を下した公職者を、どこまで法的に検証できるのか」という点については、議論が続く可能性があります。
広範な恩赦が投げかける三つの問い
今回の決定は、アメリカ政治と民主主義のあり方について、少なくとも次のような問いを投げかけています。
- 政治対立が激化する中で、公職者や専門家をどこまで刑事責任の対象とすべきか
- 恩赦は「和解と融和」のメッセージなのか、それとも「説明責任の回避」と受け止められるのか
- 将来の政権交代時に、同様の「報復」や「防御」の手段として恩赦が繰り返される懸念はないのか
恩赦は、個人にとっては救済である一方、制度全体にとっては「どこまで責任をさかのぼるのか」という線引きを事実上示す行為でもあります。その線引きが納得できるものかどうかは、今後の議会論戦や世論の反応によって試されていくでしょう。
日本の読者にとっての意味
このニュースは、遠い国の政治スキャンダルとして片付けるには惜しいテーマを含んでいます。専門家や官僚、軍、高官が危機対応を迫られたとき、その判断を後からどのように検証し、どこまで責任を問うのかという問題は、日本を含む多くの国に共通する課題だからです。
また、強い恩赦権を持つ大統領制と、日本のような議院内閣制では、権力の集中の仕方やチェックの仕組みが異なります。今回のアメリカの事例を通じて、「自分たちの国では同じような状況が起きたときに、どんなルールや慣行で対応するのか」を考えてみるきっかけにもなりそうです。
これから何に注目すべきか
2025年も終盤に差し掛かる中で発表された今回の恩赦は、アメリカ政治の「次の章」をどのように描こうとしているのかを占う材料にもなります。今後しばらくは、次のような点に注目が集まりそうです。
- 政権を支持する層と、批判する層の反応の違い
- 法律家や憲法学者による、恩赦権の行使をめぐる評価
- 次の選挙や議会で、恩赦をテーマにした新たな法案や制度論議が起きるかどうか
恩赦そのものは一度きりの決定ですが、その意味はこれからの議論によって形作られていきます。ニュースを追いながら、「強い権限を持つリーダーをどう監視し、どう信頼するか」という、自分自身の問いも一緒にアップデートしていきたいところです。
この動きをどう評価するかは、私たち一人ひとりの価値観や経験によって変わります。国際ニュースをきっかけに、自国の政治や制度について静かに考え直してみる余白を持ちたいところです。
Reference(s):
cgtn.com







